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Ⅲ.女神の祝福を持つ少女たち

122.平成の日本とこちらの世界

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 街中をまわる間に、追いついてきたシーグの言うには、美弥子達は、近々、本格的な浄化の旅に出て、大神殿には戻らなくなるのだとか。

 その前に、シーグに会っておきたかったらしい。

「そのクィシダに似てるから何だってんだ? 訳わかんねぇ」

 たぶん、美弥子は岸田君が好きだったんだろう。
 その岸田君に似てるシーグに会うことで、日本に戻るまでの代用にしてるのかもしれない。

《そうは言っても、いつあちらに戻れるかわからないんダシ、その内、本気になったりして?》
「やめてよ」

 美弥子と三角関係なんて冗談じゃないよ。

 お風呂から上がると、妖精の羽衣と同じ素材で湯着代わりの肌着ワンピースはもう濡れてない。
 そのついでで髪も乾いている。

「サヴィアンヌのこのワンピースとても重宝するわ」
《あらアリガト。そのウチまた作ろうカシラ》
「簡単には作れないのでしょう? 織り姫族でも、一生に数着だって⋯⋯」 
《まあソウネ。でも、ワタシはその限りじゃないヮ。心配しないデ》

 小屋に帰ると、シーグ②が ダッシュ 床に伏せていたのが立ち上がり、鼻先を押し付けてくる。

「この子とシーグは繋がってるのかしら?」
《影魔法の一種みたいネ。魔導的には繋がってるんでしょうケド、意識して操作するのには、そばで見てなきゃだめみたいヨ。残留思念に自我があって自立稼働してるようなものカシラ?》

 残留思念、と言えば⋯⋯

 ドルトスさんの自宅のお庭の果樹に憑いてた、亡くなった奥さんの残留思念。

 たとえ見えなくても、残留思念を残すくらい、想ってらっやしゃいますよとお伝えするべきなのかな。

《その人の性格にもよるとは思うケド、ドルトスは知りたいんじゃないカシラ?
 ただ、知ったら知ったデ奥さんの残留思念に囚われテ、その場から動けなくならなきゃいいケド》

 そんな事言われたら、余計言いにくいじゃないの。


 でも、いつ戻れるかわからないから代用⋯⋯かぁ。美弥子達は、日本へ帰りたいんだろうか。

 そもそも帰れるのかな。

 大神官も大賢者も、あの時、帰る時のことや、いつまで浄化すればお役御免だとかって話はしなかったし、そもそも、巫女や『聖女』が居ないと、この世界では大変な事になるのに、帰す気があるのだろうか?

 今までのあの人達のやり方を見ていれば、美弥子達を元いた世界に返す気などないように思える。

 美弥子達はその辺、どう思っているのだろう⋯⋯

 私は、たぶん、もう帰らなくていいように思える。

 施設に置かれて認知症が進行しつつあるお祖父さんや、介護付き老齢マンションに一人住まいのお祖母さんの事も気にはなるし、借家にしている実家や、両親のお墓の事も、気にならない訳じゃない。

 それでも、あそこで、周りに人はいるのに孤独にしか思えない生活に戻る気になれないし、シーグと添い遂げる約束もある。

 なにより、ここでは、精霊達と街の人を繋ぐという役目が、必要とされていることが、あちらより生きている実感を持てるのだ。

 こちらで光のもとに温かく明るい生活を知ってしまったのに、あちらの灰色で寒々しい、日々のやることをこなしていくだけの生活になんか戻れない。

 それでも、生きていれば、何らかの楽しみや小さな幸せは見いだせるようにはなれたのだろうけれど。 

《そんなに難しく考えなくてもいいんじゃナイ?
 どうせ、帰りたくても自力で帰る方法なんかないんダシ、もしかしたら、ここで暮らすのが、運命だったのかもヨ?》
「⋯⋯そうね」

 ここで必要とされたから、女神アルファさまに喚ばれたのだと思っておこう。

 美弥子は、これから『聖女』として忙しくなるだろうから、もう関わらずに済むかな。

 ベッドに入り、足下にシーグ②が ダッシュ 丸まりお尻尾しっぽにサヴィアンヌが埋まるのを確認したら、アリアンロッドとフィリシアにお休みを言って、明日のデザートを考えながら、目を閉じた。

 いつものことだけれど、私が就寝すると、アリアンロッドは姿を消す。

 今夜も、カインハウザー様に甘えに行っているのだろう。

 さすがは精霊、素直で羨ましい。

 私は何をするのにも、迷惑に思われないか、嫌われないかが気になって、正直に言えないところがある。

 つがいなのだから、せめてシーグには正直に何でも言えるようになりたい。


 * * * * * * *


 翌朝も、目覚めると時計は5時半、現地時間で4時半だ。
 アリアンロッドも、私の胸の上に戻ってきている。

 夜明けと共に起きて、お台所を手伝うのは、習慣になってるな。

 収穫祭も終わり、もう大神殿の人達や美弥子も来ないだろうと、シーグ②を ダッシュ 連れて、館へ向かう。

 そうだ。いつまでも、シーグの影分身を連れてないで、本当は、ィグナリオンはシーグの人型なんだと言わなきゃ。

 でも、今まで変に隠してしまった分、タイミングというか、言いにくくなってしまったな。

 花壇で花蕾を摘む間、アリアンロッドやフィリシアは、光の精霊達と戯れて飛び回る。楽しそうだ。

 昨日の祝福してまわった名残か、花も葉もきらきらしている。

《いつもより美味しい蕾が出来そうね》

 サヴィアンヌって、本当に食いしん坊よね。

 今朝は、昨日の潔斎食の後なのもあって、パンを焼かずに、収穫祭で納品されたお米で野菜と卵の朝粥を作ったら、カインハウザー様やリリティスさんはもちろん、厨房の人達にも好評で、今後も作られることになった。

 アレンジしてバリエーションを増やしたグレイスさんの朝粥は、私が作るよりも断然、栄養価も旨味も高かったことは言うまでもない。


「シオリ、ちょっといいかな?」

 食後、カインハウザー様に、執務室まで来るように言われた。





 * * * * * * *

遊び人の後書きにも触れましたが、恋愛展開が下手な自分を克服しようと、ファンタジー要素を封印して、恋愛小説書いてみました。

とっかかりとして、はやり?の婚約破棄から始まるお話です。

練習なので、1話あたり短めに、全体的に長くしないつもりです。

批判は怖いですが、よくなるために、批評や感想は歓迎ですので、よければコメントお願いします。
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