異世界ってやっぱり異国よりも言葉が通じないよね!?

ピコっぴ

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優しい大きな人達に、子供扱いされる私は中年女

公爵邸 一日目の深夜~二日目の朝

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 公爵様に手を握って貰って眠りについてから、どれほど経ったのか、メイドさん達もそれぞれのお部屋に戻って、私にあてがわれたお部屋は静かである。
 ベッドサイドの灯りも落とされて、現代日本と違って、窓の外も暗くて、本当に真っ暗だ。
 しんしんと冷えと寂しさが漂い、お空は満天の星だ。昨日よりお月様はちょっとだけ遠くなってるみたい……

 だけど、それが色々と、楽しいことよりも悪い事をぐるぐる考える環境をも産み出す。


「明莉、じきに好うなるから……大事にしたる、可愛がったるからな」

 灯りのない山中の、木々から覗く黄色い月。

 困ったように笑いながら、遠回しに干したままの下着を回収するよう促してくれるジュードさん。

 手作りのチーズを焼いて、保存用堅パンに乗せて振る舞ってくれたジュードさん。

「最初は優しぃに、ゆっくりじっくりしたるからな」
 まったく識らない人のように豹変して、ヤヤを破裂させたり、私が未経験者だと知ると急に優しく?なって嬉しそうに、しかし強引に躰を押し開こうとしたジュードさん。

「そっか。俺が、勇者かぁ……」
 照れ笑いで、表情を緩めながら眠りについたジュードさん。

 山の管理小屋の扉を開けて、警戒しながら、私を頭のてっぺんから爪先までじろじろと観察するジュードさん。

「信頼はしてるのに、気ぃと体は赦さへんてか?」
 見た事ない怖い表情で、私の上に乗り上がったまま睨みつけるように見下ろしてくるジュードさん。

 私の歯を磨きながら、なぜか頰を赤くして視線を反らすジュードさん。

「やっぱ、そうか! アンタ日本人やんな? しかも、関西か」
 すっごく嬉しそうに、抱きつきそうな勢いで前のめりに叫んだジュードさん。

 たったひとりで、言葉も習慣もまったく違う異世界で、どれだけ心細かっただろう。
 久し振りに出会った日本人が、育った地域まで近いと知って、嬉しそうに話し込む姿は、実年齢の31よりもずっと若くて、楽しそうに見えた。


 私はどうすれば良かったのだろう。
 私の何が、彼を傷つけ、歪めてしまったのだろう。

 私は男では無いし、ジュードさん本人でも無い。
 考えても、本人に訊いてみない限り、正しい答えは出ないのかもしれない。

 ジワジワと彼を誤解させたのかもしれない。

「イケると思ったのに……」

 そう思わせる態度だったと言う事だよね?

 こんな関係になってしまって、もう元通りに話は出来ないと諦めてたのに、最後連行される時、お前のせいだとも責めず、元気でなと励ましてくれて。
 自分は犯罪者だと認定されてしまった事を、どうして諦めてしまったのだろう。
 なんだか、連行される事をホッとしてるようでもあった。

 やっぱり、あの夜は何か変だった!

 勿論、私がきっかけを作ったのだろう。

 たぶん、甘えてきた事、任せっきりにしてた事、頭や歯を磨かせたり会って3日の人とは思えないほど距離感を詰めてた事などが影響してるのだろう。
 それらが積もりに積もって、寒さに負けてくっついて眠った事で、堰が切れちゃったんだ……

 それに、ヤヤとネネが、妖魔みたいなものだって言ってた。
 あんなにたくさん居たし、他にも、魔力ではなくて、精神や夢を食べる、貘みたいなものだって居たかもしれない。
 あの時のジュードさん、ちょっと変だったもの。

 言葉を覚えて、皆さんに恩返し出来るようになったら、ジュードさんの事、調べて貰えるよう頼んでみよう。
 公爵様──ルーシェさんは、優しそうな人だったし、なんなら、子供だと思われてるのを利用しちゃうよ!
 色仕掛けしろって言われたら無理だけど。精神的にも、体のポテンシャル的にも、お顔の偏差値的にもね。

 子供好きの優しい領主様に、可哀想な子供だと思われてる内に、ジュードさんの事、頼もう。

 そこまで考えて、少しスッキリしたら、再び眠気に誘われて、柔らかくふかふかなベッドの中で、小さく丸まって眠りについた。


 ───── ◆ ◆ ◆ ───────


 ジーザス・プリースト!(ジーザス=なんてこったい と、ジューダス・プ○ーストが混ざってると思われる)

 アッチのカソリックやプロテスタントが聴いたら不快になるかもしれないけど、ここには一人も居ないから良いよね、ジーザース!! オーマイガッ

 何をそんなに打ちひしがれてるかって?

 自分のアホさ加減に、嘆いているのですよ。



 元々5時間前後の睡眠に慣れてるからか、夜中に目覚めたにもかかわらず、朝陽が差し始める頃、また目が覚めた。

 目がショボショボするのは睡眠不足じゃなくて、泣き腫らしたから。中々開かない。
「ヴァニラ、ヴッフィアルヴ。フィレオヒィドゥアレヴィオルマグル※※※(以下略)」
「う~、ぶっひあるぐ……」
 たぶん、朝の挨拶だと思って返す。

 上半身を斜め右に捻って起こすと、私の両頰を、温かくて大きな手が包み込む。そのまま上を向かされると、瞼に生温かいものがふにっとして、だんだん熱くなってきたと思ったら、ふにっとしたもの──ルーシェさんの綺麗な唇でした──が離れていき、左の瞼の腫れもひいていた。
 そして次は右……ま、待って!

「ルーシェさん、その、どうしてもキスしないと治せないの?」
 私の言ってる言葉は解らないのだろうが、軽く拒否ったのは通じたようだ。

 気づかなかったけど、後ろにるーてーしあさんがいて、ルーシェさんに何かを言ったら、渋々?交代して、るーてーしあさんが掌を私の右眼に当てて腫れを直してくれた。

 後は、いつもの?コースでメイドさん達が髪を梳かして編み込んでくれたり、顔を蒸しタオルで拭って美容液塗り込んだりしてくれる。

 お着替えも諦めた。ただ、昨日、総レースのデコルテ開きまくったドレスやふりふりフリルのワンピースとスケスケふりふりネグリジェを拒みまくったので、好みは理解して貰えたのか、Aラインのシンプルなワンピースを着せられた。

 勿論、着替えが始まった時点で、ルーシェさんはるーてーしあさんに追い出されてる。
 追い出されるまで、身支度を見守ってた とも言う。

 身支度が済んだら、るーてーしあさんが扉を開けて、ルーシェさんが入ってくる。
 たぶん、可愛いとか似合ってるとか、言葉が通じたら恥ずかしさで死ねる感じで、言葉をかけてもらい、もうこれも定番メニューなのか、ルーシェさんに抱き上げられる。

 私、ルーシェさんがご在宅の間は、ほぼ自分の足で歩いてなくね?

 羞恥心がその内麻痺してしまうのではないだろうか。

 ご家族に見守られながら美味しい食事を済ませ、ルーシェさんを見送る。
 ご家族と言っても、お母様とるーてーしあさんだけだ。ルーシェさんが公爵さまって事は、お父様はすでにお亡くなりなんだろう。

 今日は、お伴の人は、二人とも知らない人だったし、ご飯も、お米に似た穀物をリゾット風に炊いたものに、玉子とお野菜がいっぱい入ってた。
 デザートはやはりベリー系が乗ってるババロアだかムースだかみたいなのでした。ぺろり

 そして、事件は密室で起きた!

 なんて事はない、図書室で、昨日とは違う児童書を積み上げ、最初に借りた絵本を返す前に、おさらいしただけである。

 が、なんの呪いだ? なんにも覚えてなかった。

 あり得なくないか?

「う、ウォーター?」※お花

「ミーミーカービィ」※にゃんこ

「リーフ」※葉っぱ

「モックリーガン」※樹木

 るーてーしあさんが、あまりの覚えの悪さに絶句して、困ったように微笑んだ。

 幾らカタカナ、ローマ字は頭に入らないからって、コレはないよね……トホホ。

 どこかからすきま風か吹くような気がした。


 *** *** *** *** ***


 まだ知らない人も居るかと思いまして、お報せします。

 このお話の、こちらの世界の人達から見た物語を別バージョンとして、ジャンルカテゴリーをファンタジーから恋愛に移して昨日、2月14日(木)ヴァレンタイン記念に公開しました。
タイトルはやはり長め(笑)
『空を飛んでも海を渡っても行き着けない、知らない世界から来た娘』です。

 こちらは、全員の台詞、ちゃんと入ってますので、よければご一読を(揉み手すりすり)
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