異世界ってやっぱり異国よりも言葉が通じないよね!?

ピコっぴ

文字の大きさ
27 / 72
優しい大きな人達に、子供扱いされる私は中年女

公爵邸 三日目の午後──漫画は異世界でもウケる?

しおりを挟む

 とにかく絵本を、児童書を選び手に取りまくる。

 楽しく本を選んでる私を残し、ルーシェさんはお仕事に向かったらしい。……らしい。気がつかなかったから。本に夢中になると、周りはなくなるのが悪いくせだけど、止められない。

 来るときは私とルーシェさんだけだったような気もしたけど、そんなはずはない。
 身元不詳の中年女を、高貴な方のお屋敷に1人で放置するはずがないのだ。ちゃんと、本棚の陰に、メイドさんが2人居た。

 取り敢えず、色んな絵のある本を中心に借りる。
 勉強机みたいなのに座って読みたいけど、体の大きさが合わないし、昨日勉強した机はお茶するためのテーブルで低すぎる。

 結局、抱えて、サンルームに移動することにした。
 あの部屋のテーブルは、寛いでお茶するようなんだけど、丁度いい高さなのだ。
 明るいし。窓際の席は明るすぎて眼が痛いけど、部屋の中心部なら大丈夫。

 メイドさんに大事な本を持って貰い、ゆっくり一段一段階段を下り、サンルームでミルクティーをいただきながら、メモをとる。

 猫の絵を描き、カタカナでミゥウォービィ
 お花を描いて、ウォロワー
 葉っぱは、イール……だったよね?
 樹木かな、木かな、モブリイーバ
 もしかして、イールがたくさんでモブとイールの複数形とかなんかかな。

 紙をまたたくさん貰って、描き込んでると、横からメイドさんやルーティーシャさんが覗き込んできた。
 一応立場があるからか、メイドさんは遠巻きでしたが、ルーティーシャさんは横にならんで座って、堂々と覗いてます。

「ミゥウォービィ※〇*★※……」
 私の絵を誉めてくれてるのか、なにか訊ねてるのか。言葉の調子が同じなら、猫の絵を誉めてくれてると思うけど。
「ミゥウォービィちゃんと似てる?」

 葉っぱを描きながら「イール」連発してたら、ほっぺを突かれて、
「フィールル」
フランス語みたいに発音されて、そうだった、と思い出す。フは殆ど聞こえない感じでィー、ルルは舌を高速で打ちつけるように!でした。
「うぃーデュルブ」
「フィールル」
「フィーでゅるる」
「フィールル」
「うぃーデュルル」
 ちょっと近くなったのか、にこやかに、木の絵を指す。

「モブリイーバ」
「モヴルィールヴ」
「モブリイーるバ」
「モヴルィールヴ」

 今日も、お勉強は朝だけで、昼からは、お母さまも参加して、私のお絵描きを楽しむ会になってしまった。
 まさか、意思疎通の手段として考えたマンガが、気に入られるとは。

 女の子が猫を二匹抱っこしてる絵を描いて、自分と女の子を交互に指す。
 サバトラを「モモ!」アメショを「ピー助」と紹介して、笑顔で愛想良く「可愛い」と言っておく。

 お花も、薔薇に始まり、向日葵ひまわり、チューリップ、ラベンダー、桜、好きなお花と、特徴あって描きやすいもの、ハイビスカス、秋桜コスモス、朝顔、パンジー、菖蒲アヤメ、アザミ、撫子なでしこ桔梗ききょう、鈴蘭、鷺草さぎそう、調子に乗って特徴はあるが一般人は解らないだろうもの、クマガイソウ、ウラシマソウ、テンナンショウ、銀竜草まで、描きまくる。
 しかも、それらの多くは、日本や中国、朝鮮半島から台湾、などの東洋に分布するものである。

 いかにも西洋風の異世界に同じものが生えてるかは怪しいが、私が何も見ずに描けるお花となると、母が庭で育ててた見慣れたものに限るのだ。仕方ないよね。

 葉っぱに葉脈と陰をつけてると、メイドさんのひとりが、パステルとチョークの間みたいな色んな色の棒を渡してくれた。
 色をつけていくと、より正確さが増していく。
 日本では仕事にしなかったし出来なかった、絵を描くことが、まさかの異世界で役立つとは。

 花の名前も、漢字が判るものは漢字とカタカナで、それ以外はカタカナで書いておく。
 夕食まで、皆に聞かれるままに、何度も名前を言い続けた。


 夕食後も、4コママンガで頑張り、過度にお世話してくれなくても大丈夫だと伝え、お風呂はひとりで入れる事になった。
 けど、私が沈まないか心配なのだろう、ひとりはついててくれる。頭洗ったり、手足洗ったりしてると、目の届かない所、背中や腿やふくらはぎの裏などを、丁寧に洗われてしまった。

 レースやフリルに包まれたほっこほこの蒸しまんじゅうになった頃、歯を磨いてもらって、ベッドに入る。

 その日は、どんなに待っても(いや、待ってないけど)、子供好きから構い過ぎてのちょっぴりセクハラな公爵様は訪れなかった。
しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...