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優しい大きな人達に、子供扱いされる私は中年女
猫は猫でも、猛獣ですか?
しおりを挟むライオンの咆哮って言えば、某映画会社のタイトルとかで、だいたいイメージ出来るよね?
あれに、魔力がのって凄い威圧感とリアルな風を感じる。大音量だし、地面からセンサラウンドで臨場感と振動とが来て、気の弱い人ならそれだけで腰を抜かしてしまいそうだ。
ルーシェさんは、いつでも攻撃できるようにか、小さく呪文を唱えて、発動準備していた。
「あらあら、おいたちゃんねぇ?」
「お母様、時と場合を……」
フィリシスティアーナお母様もルーティーシアさんも、落ち着いている。実は雷獣ってたいした事ないのか、ルーシェさんを信頼しているのか。
雷獣はルーシェさんへ一瞥くれた後、こちらへ振り向くと山成りに背を高く伸ばし、ブルブルと左右に体を振って、少し毛並みを舐め整える。
これだけ見たら、全くのにゃんこなんですけど。
雷獣は、ゆっくりと私に近寄り、一歩踏み出す毎に小さくなる。
「あ、あれ? また小さくなっていくの?
……か、可愛い♡」
「ヴァニラ! ダメだ、逃げなさい」
「敵意なさそうだけど?」
ルーシェさんは警戒を解かずに、緊迫した表情で逃げろと言うけど、私にはどうしてもこの子に害意があるようには見えなかった。
影の上に座ってたときと同じくらい仔猫サイズになると、私の足に額を塗り塗りし足の指を舐める。……そうかっ!
「ルーシェさん、この子も、森で見た小動物のふりをした妖魔と同じで、ルーシェさんや私の魔力とか精神力とかを舐めるのが好きなのかも?」
「確かに、そういう種族も居る。が、そんな大きなものが精神力や魔力を満腹するまで摂取したら、たいていの人間は昏倒してしまう。
いいから、足なら後で洗ってあげるから、そこから逃げるんだ」
みんな、この子を危ない子だと言う。でも、私には、甘えたいだけの仔猫にしか見えない。
ルーシェさんに威嚇?した時は百獣の王みたいな迫力のあるビリビリ空気が震える声だったのに、今は本当に仔猫みたいな高く甘い声でにーにー鳴いてる。
手を伸ばしたら、ふんふん臭いを嗅いで、指先を舐める。ハッとして、更に熱心に舐め出す。
「ヴァニラ! なんて事をするんだ。今すぐ止めて、母やルーティーシア・マリヴァのそばに下がりなさい!」
ルーシェさんはなるく抑えた声で静止を試みるけど、私は、止めなかった。
ヤヤやネネの時と同じように、指先に魔力を集めてあげると、必死に舐めてる。
見ても判らないけど、傷ついてるのか疲れてるのかな。だからすぐ仔猫サイズになるのかも。
「ヴァニラ、聞き分けてくれ、猫が好きなら神獣王國から取り寄せる! ソレは離すんだ!」
どうして、そんなに必死にこの子を警戒して、離せと言うのだろう、こんなに可愛い仔猫ちゃんなのに。
そりゃ、さっきは大きくなったけど、こっちが本当なんじゃないかな?
それとも、ジュードさんが言うように、私の望む姿になるのかな。だったら、やっぱりずっとこのままなんちゃうの?
仔猫ちゃんは、限りなく黒に近い暗褐色の地に黒の斑点柄で、ベンガルヤマネコや、サバトラ豹紋みたいで、とても可愛い。
「そいつの仲間は、南の砂漠地帯から渡ってきて、町の兵士を何人か食い殺しているんだ!!
もしかしたら、ソレもそうなのかもしれないんだ。頼むから、離れてくれ……」
「クロちゃん、悪さしたの?」
脇に両手をさし、持ち上げて訊ねてみる。
みゃあうぅぅ
不満げに鳴いて、ジタバタする。
ルーシェさんは舌打ちしながら、細く細く丁寧に編んだ雷撃をクロちゃんに叩き込んだ。
クロちゃんの全身の毛が逆立ち、焦げ臭い匂いがするけど、わりと平気で、私の手から離れ、さっきと同じ大きな姿で、ルーシェさんに威嚇の咆哮をあげた。
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