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優しい大きな人達に、子供扱いされる私は中年女
もっとお話したかったのに……
しおりを挟む胸の奥もお腹の奥もどきどきして熱くなるのは、検査魔法がなにか作用してるのかもしれないけど、その上で更に私が変にルーシェさんの魔力を意識しちゃってるからかな?
気功の訓練で『気』を胃に集めてしまって吐きそうになった時の苦しさにも似てるけど、こそばされてくすぐったくて泣きそうな感じにも似てる。
そう考えると、ますますくすぐったくてじっとしてられなくて、
「ん、や、こしょばいよ、ルーシェさん」
思わず洩れた声も震えてる。
「すまぬ、怪我はないようだが、霊気や魔力が読み取りづらくて……少し乱れが生じてるようだが」
……いや、それは、ルーシェさんの魔力を意識しちゃってるからやん?
直接触られてる訳でもないし、裸を見られてる訳でもないのに、もっと違う感覚で、もっと奥の何かを覗かれてるような、恥ずかしくていたたまれない居心地の悪さが、そりゃあ霊気も感情も乱れるってもんでしょう?
ルーシェさんって、紳士かと思ってたけど、実はわりと天然で朴念仁なんか?
もう、なんでもいいから、早くして~
緊張と羞恥心と、慣れない、魔力が全身を舐めるように移動していく感覚に、力は抜けてくるし僅かに小刻みな震えが来た。
「うにゃ……もう、だめれすぅ」
くてっと脱力する。そのまま前のめりにベッドの下のルーシェさんの上に崩れそうになったが、ちゃんと抱き留めてくれた。
「すまない、疲れさせてしまったな。幾らか魔力や霊気の乱れはあったが、緊張感のせいだろう。
雷獣が潜んでる様子は無いし、影響も多分大丈夫だろう……」
「多分? 大丈夫だろう?」
いつもの(!)お父さん抱っこと違い、真正面から抱き合うみたいになって、恥ずかしさは頂点に達しそうなんですけど、気にしたら負けや……(涙目)
震えは勿論、ルーシェさんにも伝わってるのだろう、背中を撫でたり軽くタップして宥めてくれる。
「こんなに緊張させたのにハッキリしなくて申し訳ないが、なぜか、君の霊気や魔力、存在値が読み取りづらくて、完全には感知できなかった」
「存在値?」
おお、なんか、ファンタジーなラノベな単語が出て来たぞ。HPの事かな?
「この世界の中で、存在してるすべての物には存在値がある。魔力、霊力、質量、血筋の起源、あらゆる物が、この世界にどう関わっているのか、どう影響しているのか、その物や人の、存在を表す値で、魔道で詳しく読み取ることで、回復術や補助魔道などの効果も高くより正確になる。
が、君のはかなり頑張って見たが、どうしても読み取れない先の見えない部分がある」
あー、そりゃすみませんですね、元々この世界の人間じゃないから、この世界との係わりを繋ぐ値とか血筋の起源とか、読み取れるはずがないよね。
「だが、雷獣の存在値は君には殆ど感じられないから、大丈夫だろう。
シャドウキャット……だったか? その能力で潜行していたら読み取れないという特殊性があれば別の話だが、それも可能性の話で、現状異常は認められないから、多分『大丈夫』だ。断言できなくてすまないな」
詫びるルーシェさんの弱々しい声に、首を振って否定する。魔道省の長で、魔道王なんて通り名があるのに、その得意なはずの魔道でハッキリした結果が出せなくて、気落ちしてるのだろう。
「だい……丈夫れす。るーふぇひゃんは、ちゃんろ見てくえまひた。イヂョーあないっれ言うろなあ、らいりょーぶれふ」
しがみついたルーシェさんの背中にまわった手に力を入れる。
ルーシェさんが私を気遣って背を撫でてくれたように、私もルーシェさんの背中にまわした手で力づけたのだ。
よりしがみついたみたいになったけど、ルーシェさんも腕に力を入れてきゅっと抱き締めるように応えた。
首筋にルーシェさんの柔らかい髪が触れてくすぐったくて、小さく声がもれると、腕の力を緩めて、私をベッドに横たわらせ、掛布を掛けてくれる。
「本当にすまなかったな、少し休むといい。
雷獣の心配もないようだから、1度私は現場に戻るが、事後処理が済めばすぐに戻る。
その時は、もっと色々聞かせてくれ。
君はどこから来て、どんな生活をしていたのか。
家族は? どんな物を見て育ったのか、どんな物が好きなのか……
君は……」
や、ヤバいです。いよいよ、誤魔化せない状況になってきた? 異世界から来ましたって、言うべきなのかな? 困ったゾ……
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