40 / 72
優しい大きな人達に、子供扱いされる私は中年女
いつまで誤魔化せるかな?
しおりを挟む──もっと君のことを聞かせてくれ……
どうやって誤魔化そうか、或いは本当のことを話すべきか、話すのならどこまで話していいのか、考えていると、おバカの証明か、疲労からか、知恵熱出て来た気がする……
「慣れない魔道に酔ったか? 少し熱が出て来たようだな、今日はゆっくり休め」
私の前髪を払うように頭部を撫でる。昔お父さんがしてくれた感じに似てるかな。
ふふっ……
つい、笑いがもれた。今後の身の振り方や進退に関わる、重大な問題を決めようとしている時だって言うのに、私は、難しい事を考えたりずっと緊張感を持ち続けるのは無理みたいだネ。
でも、もう少し、言葉が通じなくてポヤーンとした不思議ちゃんな子供っぽい謎のオバチャンで居たかったかも……
そりゃ、ルーシェさんにお膝の上でお食事タイムされたり、お父さん抱っこで移動するのはいたたまれないし平常心どっか行くし、反応に困るけど、大切にされてる感じは、向こうではついぞ味わえなかった感覚だ。
多分、物心ついた頃はお父さんに似たようにされてはいたはずだけど覚えてない(写真はいっぱいある)し、日本人だもん、ちゅーはなかっただろう。たぶん。
折に触れぽっペちゅ~やデコちゅーも恥ずかしいけど、向こうの西洋風に似た生活習慣なら、そういうもんだと諦めるしかないのかな……
不思議と、恥ずかしいし居たたまれない感は困るけど、嫌ではない。
貞操の危機に助けに入ってくれた、いわゆる物語のヒーロー的な出逢いが好印象で、お貴族様としての洗練された身のこなしや態度に嫌味がないのもポイント高いのだろう。
これで私が物語のヒロインなら惚れちゃうコースだね。残念ながら、青年貴族と中年、それも初老にさしかかる年増オバチャンではロマンスも生まれないけど。
歳の差、約20歳だよ(笑) 人一人成人する時間が流れるくらいの差。ちょっと早めに結婚した人で考えれば、親子ほど違うんだ……
そんな、あり得ないロマンスを、例え話でも、考える自分が恥ずかしくなる。
高校中退して子供を産んじゃうくらい恋愛に生きた同級生も2人居る。彼女らの息子と同い年か、更に年下かもしれないルーシェさん。
友人の息子と恋愛? あり得ないでしょ。
顔を隠したくて、毛布を口元まで引き上げる。
恥ずかしすぎて、なさけなさ過ぎて、友人達の事を思い出して寂しくて、子供扱いを不満に思いながらも大切にされる心地よさを感じていたい我が儘に呆れて、複雑な感情に涙が滲んでくる。
「私はもう行くが、なるべく早く帰るから……○∇※★*※⭐︎(以下略)」
え? あ、あれ? また、言葉が判らなくなっちゃった?
ルーシェさんはそれこそお父さんみたいに、慈愛の目で見下ろしながら、デコちゅーしてくれて、頰を手の甲でペしぺしすると部屋を出て行った。
ほっぺはカ~ッと熱いが、おでこの知恵熱はなくなっていた。デコちゅーは、子供を宥める手段ではなく、熱を吸い取る回復魔法だったんだ……
知らない出会ったばかりの子供(と思っているけど実は年増)にも優しいルーシェさんに感謝しながら、目を閉じた。
───── ◆ ◆ ◆ ───────
夢を見た。あちらで、お仕事中に高校の友人が買い物に来てて、子供を連れてる。
その友人は、高校中退して結婚し、子育てを関西でしてるはずだ。東京の職場に来るのはおかしいのに、普通に相手する。
子供は、中学生になるかどうかの男の子。
本当なら、もう30歳だよ? でも、夢の中では子供だった。
その子が、あーちゃんをお嫁にしたげるから、早く雪豹の子供を産んでくれって迫ってきて、無理でしょうと答えたら、急に大人になって私をお父さん抱っこで抱き上げる。
「あーちゃんが、子供を産むまで、歩かせないよ」
だから、それは無理。雪豹の子供をって言うのも勿論、私はオバチャンで子供を生むのは無理なの。言って聞かせると、にっこり笑ってほっぺちゅ~をして、
「私が言うのだから大丈夫、子供を産むまで、返さないよ?」
えっ? なんでルーシェさんが東京に居るの?
「トウキョー? 何を言ってるんだ、ここは、エリキシエルアルガッフェイル公爵領の私の屋敷だ」
「…っ! うっわはぁ~!?」
毛布をはねのける勢いで飛び起きた。
ものすっごい寝汗をかいてる。
変な夢見たなぁ……
なんかの暗示か願望が出てる……って事はないよね?
「ヴァニラ、ルッティンモリアン◆*◇**※」
天蓋の幕を開いて、ルーティーシャさんとマーサさんが入ってくる。
私を気遣うようになにかを言ってくれるけど、やはり解らなかった。
1
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました
しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、
「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。
――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。
試験会場を間違え、隣の建物で行われていた
特級厨師試験に合格してしまったのだ。
気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの
“超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。
一方、学院首席で一級魔法使いとなった
ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに――
「なんで料理で一番になってるのよ!?
あの女、魔法より料理の方が強くない!?」
すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、
天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。
そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、
少しずつ距離を縮めていく。
魔法で国を守る最強魔術師。
料理で国を救う特級厨師。
――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、
ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。
すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚!
笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました
okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる