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優しい大きな人達に、子供扱いされる私は中年女
雨期と落雷と
しおりを挟む庭木に落雷した日から、ほぼ毎日雨が降っている。
大抵はしとしと雨だが、たまに土砂降りになる。
どうやら、日本の秋雨と似た時季らしい。
夏の終わりから雨期に入り、やがて本格的に冬になる。
確か、ジュードさんは、これからどんどん寒くなるって言ってた。
この国は四季……かは解らないけど、季節の移り変わりはあるみたい。
絵本でも、雨降りの中歩く絵や、雪で雪像を作る絵、紅葉した林の中を走り回るリスや野ねずみ、ウサギやイタチの絵があった。
どうせこの国の言葉、シルジェヴァーン語って言ったっけ? ヒルスバーン? ま、いいや ……は話せないので、毎日午前中は黙々と、絵本の写本と、刺繍を続けていた。
私がどんよりとしているので、気を遣ってか、誰も話しかけない。
面倒みてもらってるのに陰気で申し訳ないけど、本語が読めないストレスはかなり貯まっていた。いや、溜まるかな、貯めてどないすんねん。
雨期で湿気が高いせいか、後れ毛などがクセでゆるく縦巻きになる。ストレートの艶髪に憧れるよ。
ルーシェさんは、毎晩お帰りと言うわけでもないらしく、夕飯の時間は陽が沈んで少し経った、たぶん、6時から7時頃かな。
時間の概念は地球とそんなに変わらないことは、最初の山歩きの時に体感とスマホの時計で解っているし、ジュードさんも特に時間に関しては言ってなかった。
1年が何日なのか、も、特には訊いてなかったけど、彼がこの世界に落ちてきて5年、31歳にとか言ってた。から、1年の長さもそうは変わらないんだろう。
このお屋敷の中も、与えられた身に余る豪華で可愛らしいお部屋と、玄関ホール、中央の階段と踊り場、その先反対の棟の図書室、一階の食堂とサンルーム、そこから出られるテラスと花壇の一部くらいのもので、他は探検してないので判らないけど、カレンダーを見た事がない。
まさか、曜日、年月の概念が無いわけではないだろうし、どうやってんのかな?
3時のおやつにベリータルトをミルクティーでいただき、サンルームでルイヴィークとゆったりしてると、急に外が暗くなりしとしと雨が土砂降りになる。
遠雷の音がして、きゅとルイヴィークにしがみつく。
ちゃんと逃げられますように……
最初の雷の日の翌日、少しの晴れ間があったので、ルイヴィークと散歩に、庭におりてみた。
おりなきゃよかった。
見てしまったのだ。黒焦げの木の残骸は片付けられていたけれど、手の届く位置の木の虚の中に、リスっぽい小動物の焦げたもの。
泣きながら、お庭の隅に穴を掘って埋めてると、ルイヴィークが一足飛びで焦げ木に登り、高い位置の虚から大小の小鳥を咥えて戻ってきた。
ルイヴィークは、「この子も埋めてあげて」と、優しい気持ちから取ってきてくれたんだろうとは思う。
けど、私は、もしかしたら、さっきまで私にすり寄ってた小鳥型の小妖魔だったらと思うと、吐きそうになって、庭師さんが気づいて駆け寄ってくれるまで嗚咽を漏らし続けた。
それもあって、みんなそっとしてくれてるんだとは思う。
さっきまで遠くの音だけだったのに、もう、近づいてきている
……さすがは霹靂神様、足が速いこと。
カカッ ッォォーン ヂリヂリヂリ……
やはり、避雷針のないこの屋敷では、木に落ちやすいのだろう、また、林の一番手前、屋敷に近い辺り(たぶん日常生活上での摩擦などでおきる微量の静電気が溜まりやすい位置なんかな)の一番高い木に落雷した。
また、可愛い子達が焼かれてない?
震えながら、ルイヴィークの毛に顔を埋めた。
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