異世界ってやっぱり異国よりも言葉が通じないよね!?

ピコっぴ

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優しい大きな人達に、子供扱いされる私は中年女

安眠を妨げるものと助けるもの

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 雨が降る。

 雷が落ちる。

 現代日本と違って、アースや避雷針などの設備がないからか、精霊や魔力の作用なのか、どうやらこの世界の雷は落ちやすいらしい。

 もう、普通に降ってる時はともかく、急激に夜のように暗くなり出したら、与えられた部屋のベッドに入り、頭から掛布を被って通り過ぎるのを待つ。

 当然、いつ来るかも判らないから、部屋から出なくなった。

 写本もお絵描きも、刺繍やパッチワーク、レース編みなどのお習い事も、自室のテーブルセットでする。

 雨が強い日は、窓から遠い、寝室に近い場所で、次第にいつも寝室に籠もるようになってしまった。

 ルーシェさんは、雨期に入ってから2度ほど帰ってきたが、お忙しいらしく、ここしばらく帰ってきてない。雨の中、王都から馬を駆けて戻るのも大変だろう。
 どうやら、魔道士らしく、転移魔術で、直接帰ってきているらしい。
 お土産を持って挨拶に来てくれるが、まったく髪も服も湿ってないのだ。
 恐らく、お城か魔道省って部署から直接、お屋敷の中に移動しているらしく、部下のお兄さん達は一緒じゃなかった。

 転移魔術は、某竜退治ゲームでもレベルを上げないと中々覚えられなかったりするし、ラノベにありがちな、条件か必要魔力かの制約があって、騎士の人はついてこられないのかもしれない。
 ゲートとかの設置はないのかな? 魔力のある人や偉い人しか使えない、特別なものなのかな?


 夜もなかなか眠れない。

 夜、雨風が酷く嵐になったり、風の音が不気味だったり、風の音が影響してるのか、目覚めると覚えてないけど怖い夢を見るらしく、不眠症手前になっていた。

 本が読めないストレスも関係しているかもしれない。

 このまま冬になって、雪に覆われたり樹々を間を風が吹き抜けて起こる虎落笛もがりぶえが続くと、ノイローゼになったりしないだろうか……

 お母様の許可を得て、毎日ルイヴィークに傍にいてもらっている。
 庭の番犬のお仕事は大丈夫なのだろうか……


 ッドオォォーン

 また、樹に落ちたらしい。お庭の方が俄に騒がしくなったので、今度も火がついたのかもしれない。
 ルイヴィークが、カウチの背から首を伸ばして、窓の外を覗いた。

 ──また、可愛い子達が黒焦げになったのかもしれない……

 知らずブルッと震え、掛布を被って、外の音を遮断しようとする。

 ただ雷が落ちただけなら、ルイヴィークはいちいち外を確認したりしない。
 園庭の番人の彼だからこそ、侵入者や敷地内の事故、生き物の危険などにのみ反応する。

「ヴァニラジェイヴァン、オッテルヒフ……」
 マーサさんが様子を見に来てくれた。
「大丈夫」
 本当は大丈夫じゃなかったが、どうしようもない事なので、そう答える。

 ルイヴィークが掛布を捲り、頰を舐めてくれる。

「ルイヴィーク…… ありがとう」
 まわりきらないほど太い首に手をかけ、耳の後ろのふかふかした毛に顔を埋めた。
 魔獣なのか、霊獣なのか、犬の形をしているけど精霊なのか、獣臭くない。無臭に近い。だからずっと傍にいられる。
 抜け毛が衣服につくこともない。やはり、精霊とか妖魔とかなのかな? 手入れが行き届いてるだけ?

 マーサさんが呼んだのか、ルーティーシアさんが来て、額の辺りを撫でる。

「熱はないですよ?」
 目に溜まった、零れる寸前の涙を柔らかい夜着の袖で拭ってくれる。

「ヴァニラ、スァィーフィングトルテッティオ」
 なんて言ってるのかさっぱりだけど、気遣ってくれてるのは判る。
 ただ、あの可哀想な小さい子達を、見てしまった事を、なかったことに出来ないだけ。

 自分の歳も恥も忘れて、ルーティーシアさんの柔らかなお胸にすり寄って、怖いこと、嫌なことを祓おうとした。

 そのまま、寝落ちしたらしいが、明け方に嵐が酷くなるまではなんとか眠れたのだった。
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