異世界ってやっぱり異国よりも言葉が通じないよね!?

ピコっぴ

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優しい大きな人達に、子供扱いされる私は中年女

守られる安心とぬくもり

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 雨期って、どれくらい続くんだろう。

 雷の頻度は下がったけど、まだ、ジメッとした空気は続き、曇っててもすぐ、雨が降る。

 晴れ間は短くて、日本の梅雨より降るのではないだろうか……

 すっかり不眠症になってしまった。

 最後にルーシェさんに会ってから、五日? 七日?
 時間も日にちもよく解らなくなってきた。

 もう若くないのに、眠らなくて大丈夫なのだろうか……
 体は起きてるけど、脳の一部は寝てるみたいで、ぼんやりしてる時間が長くなっている。

 もう、ルイヴィークに埋まっても、ルーティーシアさんが添い寝してくれても、熟睡は出来なくなっていた。

 うとうとしては風の音に目が覚め、何か嫌な夢を見ていては雷の音に目が覚める。

 現代日本の騒がしさが懐かしい。

 レコードやラジオもないので、音楽を聴くことも出来ない。

 はぁ、クラシック聴きてぇ。
 漫画読みてぇ。
 ラノベでも、世界子供童話全集でもいいから、本が読みてぇ……!!

 お菓子作りたい!
 モモちゃん達愛猫'sに会いてぇ!

 ジワッと滲むのも普通で、本当に哀しいのか反射なのか判らなくなりつつあった。


 ドドーン カカッ ッオォォーン

 また派手に落ちたらしい。

 カタカタ震え、目は爛々と冴える。

 おかしい。雷は、科学的根拠で、安全圏において観るのは好きだったはず。なんで、こんなに怖いんやろう……

 なんで、ここの雷は特に夜落ちるんやろう。
 日本には居ない、魔物とか関係してるんやろか。

「ルーシェさん……」
 雷撃の魔道を操るあの人なら、この雨や雷も抑えられたりするんやろか。
 もし、雷獣や天候を操る妖魔や魔属がいて、そいつらが落としてるんやったら、退治してくれるんやろか。

 昔話の鬼とか妖怪って、こう言う不安から生まれるんやろな…… 語源の1つにおぬ(隠れるもの、姿の見えないものの意)から成ったって言うのもあるらしいし。

 添い寝してくれてたルーティーシアさんが、身を起こし、私の頰をひと撫でして寝室を出て行く。
 おトイレか、自室に帰ったのかな? 毎晩これじゃ、ルーティーシアさんまで寝不足だよね。

 また、落雷したのかと思うような、大きな音がして、震えが強まり、滲んだ涙は盛り上がって溢れた。

 もしかしたら、本が読めない、言葉が通じないから会話・お喋りが出来ない、音楽が聴けない、趣味のお菓子づくりが出来ない、そういったストレスが重なって、どこか精神状態も健康状態も壊れてるんだろうか……

 そう思うと、今度は吐き気までして来た。

 グゥ……ウッ……ウェ

 天蓋の外に待機していたらしい、いつものオレンジの髪のメイドさんが、陶器のボウルを差し出す。

 嘔吐えづいたので、気を利かして差し出してくれたのだろう、おかげで堪える気がしなくなり、本当に吐いてしまった。これ、胃液で喉が灼けるから嫌いなんだよね……

「う~、のろいらひぁ(喉痛い)」

 ガチョリッダーン タタタ

 お上品なお貴族様のお屋敷に見合わない騒音と共に、のっぽな真っ黒い影がリビングと寝室を隔てる扉から現れた。

「られ(誰)?」

「ヴァニラ!」
 え? ルーシェさん、こんな真夜中に帰ってきたの? 大雨で雷も酷いのに…… あ、転移魔法か。

 大股でベッドに駆け寄り、私の頰を両手で挟み上向かせる。
「お、おかぇりあさい」
「ヴァハティアーディレル」
 お得意(?)のちゅーで涙を吸い取り、頰の涙の痕を親指でぐいっと拭うと、ギュバーッと抱き締められた。

 変なの。

 前みたいに、何すんねん、イケメンは何しても赦されるんかい、子供扱いもええ加減にしぃや、とは思わなかった。
 むしろ、これを待ってたかのように、意外に広い背中に手を回し、しがみついた。

 ぬくい……

 ふかふかのルイヴィークに埋まっても、ルーティーシアさんの柔らかなお胸に縋り付いても、温さはそう変わらないと思うのに、なんだろう、安心度が段違いだった。

 ぐずぐず泣きながら、ルーシェさんにしがみついて、頭を撫でられたり、額や目尻にちゅーを貰いながら、溺れる者のように助けを求めた。

 ルーシェさんはそれに応えてくれた。

 朝まで、2度目の共寝をしてもらったのだ。
 ルーシェさんの守られてるという安心感は、不思議と、朝まで、何日ぶりかの熟睡を、風の音にも雷の音にも起こされずに出来た。
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