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保護児童(ただ飯食い)から公爵様の愛妾に昇格?

嵐の過ぎ去った朝

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 チチチ チュチチチ チュルルピチチ

 小鳥さん達が来てる……
 よかった、大丈夫だったんだね……

 天蓋から下がる布の隙間から朝陽が射してる。久しぶりに晴れたのかな。

 小鳥さん達が入ってこれるように、窓を開けようと、起き上が──れなかった。

 なんで? 結構、スッキリしてるし、珍しく夢も見ないで、久方ぶりに爆眠できたような気がしてるのに、体が重くて動かないんやけど……

 ど……

 どぉおぉぉ……!?

 超至近距離に、まばゆいお顔があるんやけど!?

 眼鏡がなくても、こんだけ近かったらよう見える。(ちなみに、ピントが合うのは15㎝前後まで、1m離れると細部は消えて無くなる)

「ん……む? ヴァニラ……ヴッフィアルグ、グッドゥルフィン……」
 なにやら、ルーシェさんに抱えられて眠ってたらしく、背にまわされた腕に少し力が入って更に身を寄せられ、額と目蓋にちゅーが降る。

 額は普通に朝の挨拶、目蓋は、泣き寝入りしたから腫れを取り除いてくれたのだろう、かあっと熱くなったあと、すぅ~っと治まった。

 右眼、左眼。

 いや、ありがたいんですけど、指先や手のひらでも出来るんですよね?
 そして、挨拶が終わったら、もう、起き出してもいいんですよね?

 腕枕の右腕は、そのまま背を押さえ込んでるし、私のぷくぷくほっぺを撫でてた左手は、後頭部を更に数回撫でたあと、肩の辺りに回されて、私は生きた抱き枕状態に……

 意外に、ルーシェさんは朝が弱い?

 睫毛長いなぁ……

 翡翠を思わせる綺麗なみどり色の、絹のような手入れの行き届いてそうなサラサラの長い髪。唯一自由になる視線と、少しだけ動かせる右腕で、私もルーシェさんの髪をさらさらと梳いてみる。
 日本人の黒髪ほどはひんやりしないけど、さらさら具合は気持ちいい。

 さて、この後、どうしたらいいんでしょ?

 とりあえず、ルーシェさんが本格的に目覚めるまで、抱き枕状態を耐えるしかないのか……

 ルーティーシアさんでもお母様でもマーサさんでもいいから、誰か、ルーシェさんを起こしてください~ぃ。

 いやいや、ダメか。ルーシェさんの名誉が傷つけられる。

 私は、一応子供と思われてるからいいようなものの、普通なら、あまりよくない状況ナノデハ……?

 以前、ベッドを共にした時は、壁に凭れて座った状態のルーシェさんの太腿に縋り付くような形で膝枕されてたけど、今回はガッツリ同衾ポジションですよ? 生きた抱き枕ですよ?

 これが、不思議に不快感ゼロ! お父さんや弟だって居心地悪そうだし(子供じゃあるまいし)、従兄弟とかもあり得ない。
 まして、お世話になってはるし、子供と思われてる身元不明の私の保護者的な感じになってるとは言え、まったくの他人の、美青年(!)と一緒に寝てるとか、漫画かよって、ねぇ?

 たっぷり10~20分は色々考えて、耐えたけど、限界が近い。
 ルーシェさんの寝顔の色気と、爽やかなハーヴっぽい髪の香り、ほぼ全身密着した躰に伝わる高めの体温、微かな呼吸音、背に肩にまわされたルーティーシアさんの優しい感じとは違う硬めの腕の感触、ガンガン響く自分の鼓動、そして、一晩寝て起きた朝の……尿意。最後にムードがねぇ!
 だって、耐えられそうにないよ。初めての、大人の男の人と迎える朝、とか、恥ずか死ぬるわ。

 そこで、名案が急に閃いた。私、天才?

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