異世界ってやっぱり異国よりも言葉が通じないよね!?

ピコっぴ

文字の大きさ
57 / 72
保護児童(ただ飯食い)から公爵様の愛妾に昇格?

爽やかなお目覚めと、困ったこと

しおりを挟む

 突如閃いた名案、それは……

《ルイヴィーク! 助けて~》

 声を出さずとも呼ぶことの出来る、唯一の存在、麗しの庭園の番人、私の癒しの友、魔犬(たぶん。狼かも? 牛サイズだけども)ルイヴィークを呼び出すことだった。

 ほんの1~2分待つと、器用に寝室の扉を開けて入って来て、天蓋の布の隙間から鼻先が覗く。

「る、ルイヴィーク、我が癒しの友よ、来てくれたのね♡」

 が、その救世主は、寝起きのルーシェさんに眉根を寄せられると、無言で去っていった。

 え? え!? どういう事!? 助けに来てくれたんじゃ無いの?

「ヴァニラ。ルイヴィークヴァンデルッフィ……」
 なんでやねん? 困ったやつだ、みたいな表情で微笑まれ、抱き締められる。

 ルイヴィークの裏切り者~! 助けに来てくれたんじゃなかったのぉーーぉぉ

 お母様の飼ってらっしゃる犬でも、家長のルーシェさんには逆らえませんよね。
 犬って群れで縦社会で暮らす生き物だもんね。

 名案だと思ったのにぃ。

 クスクス笑いながら、ルーシェさんは拘束を解いてくれ、色気たっぷりな目つきで上半身を起こされた。ちゃんと、シャツは着てました。
 でも、泣き寝入りした私を抱えて着替えられなかったのだろう、殆ど昨夜の帰宅時の仕事着のまま、上着を脱いだだけの姿でした。勿論、下もちゃんと穿いたままでしたとも。

 私を定番のお父さん抱っこに抱え上げ、リビングを通らずに、直接鏡の扉から浴室に移動する。なんだろう、少しご機嫌?

 そこには、準備中のマーサさんとメイド2人がいて、作業中の手を止め、びっくり眼で見上げた。
 そうっと私を浴槽の前に降ろし、何かマーサさんに指示を出して、私のこめかみに軽く触れるだけのちゅーをくれると、そのままご機嫌で浴室を出て行った。

「よ、よかった。まさか、お風呂まで一緒になんて言われたらどうしようかと思った……」
「私どもはそれでも宜しかったですけれど」
 クスクス笑いながら、赤毛のメイドさんがからかう。

 あり? また、言葉が通じる?

「と、止めてくれないの?」
「まさか、私どもが旦那様にそんな事は出来ませんわ。それに、あんなにご機嫌な旦那様は久しぶりに見ました。止められませんよねぇ」
「一晩ご一緒だったんでしょう? 今更……」
 空色の髪のメイドさんが、マーサさんにげんこつを喰らう。

 いや、確かに一晩ご一緒だったんですが、一緒に眠っただけで、下世話な妄想を繰り広げるような愉しいコトは何もなかったですよ?

「言葉が通じるのなら、今のうちに。
 躾のなってないメイドが失礼しました。お許しください。ヴァニラお嬢様」
 マーサさんが深々頭を下げる。
「そんな、申し訳ありませんでした! マーサさんに頭を下げさせるつもりはなかったんです。ただ、あんな旦那様見た事なくてつい……」
「つい、で済まされる事ではありませんよ」
 厳しい目をして、メイドを窘めたあと、こちらを振り返り、難しい表情をした。

「旦那様が一晩お過ごしになった事で、この先、不躾な視線を寄越す者があるやもしれません。言葉が通じないからと、口さがないことを申す者も出るやもしれません。
 一応、それなりに教育の成された使用人ばかり揃えたつもりですが、身近にお仕えするこの子達ですらこれです。下男下女にもなると、わかりません。ご不快な思いをさせる事も出て来るかもしれませんが……」
「あ、ああ、いえ、大丈夫です。その、皆さんが妄想するようなコトはなかったのは、私が一番よく解ってますし、言葉が通じないんなら、何言われたって平気です。私は。
 でも、ルーシェさんが、ヘンな噂が立つと困るんじゃ……
 まだ、奥さんにお会いした事もないけど「いらっしゃいません」問題が……え?」
 今、いらっしゃいませんって言った?

「旦那様は、まだ、奥方をお迎えになっていらっしゃいません」
「独身? だったら余計、今後、いいとこのお嬢さんを娶ったりするのに差し支えるんじゃ……」
「そのような予定は聞かされておりません。が、公爵家や侯爵家の跡取りの事もあって、いずれはお迎えになられる事でしょう」
 にっこり笑顔で、私の夜着を剥ぎ取り、メイドもパンツを降ろし(ヤメテクレ)、湯船に促される。

 そりゃ、昨夜は久しぶりに熟睡できて、頼れる腕の中での安心感はありがたかったけど、よく考えなくても、やっぱマズいよねぇ?

しおりを挟む
感想 32

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】番である私の旦那様

桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族! 黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。 バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。 オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。 気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。 でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!) 大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです! 神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。 前半は転移する前の私生活から始まります。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める

遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】 猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。 そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。 まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。

この度異世界に転生して貴族に生まれ変わりました

okiraku
ファンタジー
地球世界の日本の一般国民の息子に生まれた藤堂晴馬は、生まれつきのエスパーで透視能力者だった。彼は親から独立してアパートを借りて住みながら某有名国立大学にかよっていた。4年生の時、酔っ払いの無免許運転の車にはねられこの世を去り、異世界アールディアのバリアス王国貴族の子として転生した。幸せで平和な人生を今世で歩むかに見えたが、国内は王族派と貴族派、中立派に分かれそれに国王が王位継承者を定めぬまま重い病に倒れ王子たちによる王位継承争いが起こり国内は不安定な状態となった。そのため貴族間で領地争いが起こり転生した晴馬の家もまきこまれ領地を失うこととなるが、もともと転生者である晴馬は逞しく生き家族を支えて生き抜くのであった。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...