異世界ってやっぱり異国よりも言葉が通じないよね!?

ピコっぴ

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保護児童(ただ飯食い)から公爵様の愛妾に昇格?

バスボールの秘密

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「ね~ぇ? 聞いてみたかったんだけど、このボール、浮かべるのがここの流儀なの? みんなこれと一緒に入るの?」
 お風呂に浮かんだ、オパールのような輝きの、水晶玉みたいなのに僅かに弾力のある、西瓜サイズの玉をぺしぺししながら訊ねてみる。

「いいえ? みんなではありません。が、貴族の令嬢やご婦人方は、使われる方もいらっしゃいます」
「ルーティーシアさんも?」
「ルーティーシア・マリヴァ・ルッシェンリールお嬢さまは、今の所、必要がありませんから」
 私の背中をゆるく摩りながら、マーサさんが答える。

「必要がある人とない人がいるの?」
「そうです。ヴァニラお嬢さまは、奥様の指示で使っていただいてます」
「そうなの? ルーティーシアさんには必要なくて、私には必要があるの?
 ……なんのためのものなの?」
「それは、ヴァニラお嬢さまが、貴族の一員になられましたら、お教え致しましょう」
「ふぅん?」

 貴族の娘さん達の秘技なのね? 残念、一生知る事は出来ないのか。気になるのに。

 もしかして、ルーシェさんやルーティーシアさんに訊いたら、教えてくれそうな気もしたけど、知ったら最後、どこかに閉じ込められたり、忘れるよう記憶操作の魔法をかけられたり、誰にも喋らないと誓わされて、誰かに秘密を漏らしたら苦しんだり死んだりする呪いで縛られたりするのかも? くわばらくわばら。

 凄く、凄~く残念だけど、バスボールの秘密を知るのは諦めた。

「でも、どうして、今、言葉が通じてんのかな?」
「通じてる、というよりかは、繋がっている、でしょうか?
 ヴァニラお嬢様の言葉は、聴いても私どもには解りません。が、頭の中で、シルジェヴァーン語に置き換えられているのです。僅かな魔力とお嬢様の霊力を感じますから、魔道的なフィールドで、精神の一部が繋がっている状態なのだと思います。
 いつもより、お嬢様の感情が伝わり感じやすいですし」
 マーサさんはにっこり笑って、よくよく考えるとちょっと怖い事を言った。

 *****

 ほこほこ状態から、化粧水や美容液塗り込められて、黄色のひらひらしたフリル付きワンピース(我が儘からオーダーメイドごめんなさい)に着替え終わった頃、お湯を使ってさっぱりしたルーシェさんがお迎えに来る。

 定番のお父さん抱っこに抱え上げられ、慌てて辞退しようとする。
「あっあのっ、歩けますから……!」
「今日は、言葉が通じるのか」
「な、なんか、不思議フィールドで心が繋がってる時だけ、意味が自動変換でチートな感じに伝わってるって、マーサさんが……」
 至近距離でルーシェさんのきらきら爽やか(朝の色気は抜けたようです)美貌に動揺が出て、言ってるこちらもよく解ってないめちゃくちゃな事を言ってしまう。
「……なるほど。その手があったか」
 え? 今のでなんか解ったの? さすが魔道王さま。

「とにかく、食事にしよう。最近、あまり食べてなかったのだろう? 前より軽くなった」
 え? ホント? ダイエット出来てる?

「肌の艶も、前はもっとすべらかで柔らかかったのに、眠れてなかったからか、少しやつれたようだ。ベリーや鶏肉、野菜をたくさん用意させるから、ちゃんと食べなさい」
 少し悲しそうな、寂しそうな表情で、私の頰を摘まんだり撫でたりする。

「痩せられたのなら、もう少し痩せたいかも」
「ダメだ。ちゃんと食べなさい。痩せたいのなら、しっかり食べた上で、運動を増やすんだ。なにが得意かな? 乗馬は出来ないんだったね?」
 そう、やはり貴族のご主人様、わりとここはダメって所は許してくれないんだよね。

「得意競技はありましぇん。走りたくないし、球技も目がよくないから苦手です。
 乗馬もやってみたいけど、膝が弱いから、腿で馬を押さえて乗るとか鐙の上に中腰とか続けられない可能性大です。水泳や団体競技も不得意……ただ、躰を動かすだけの、軽体操や散歩など歩くだけとかなら……」

「解った。なにか考えよう」
 結局下ろしてもらえず、階段を抱き上げられたままおりることに。
「何日もちゃんと寝てなくて、食事も不規則少量、寝て過ごしてたというのなら、ヴァニラにはこの段差はキツいだろう? 元々大変そうだった」
 ……それはそうなんですがね。周りの眼と居心地が居たたまれましぇん。

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