12 / 163
【萌々香 Ⅰ】
🚱12 御遣いとは
しおりを挟む「御遣い様、ようこそお越しくださいました。我らはあなた方を歓迎いたしますぞ」
「みつかい?」
愛唯の鸚鵡返しの問いかけに、集団から一歩踏み出した男性が答える。
「この泉は、女神ファリテー様の心が清水となって湧き出るもの。我らの祈りが届き、あなた方が現れたという事は、女神ファリテー様の遣わした御遣い様でございましょう」
何というか、勝手な人達だ。
まず、私達がなぜここにいるのかという説明になってるようでなっていない。
この人達が、神さまにお願いして──たぶん何かの助けになる人物を望んだのだろう──私達が現れたというが、なぜ助けを求めたのか、何故それが私達だったのかの説明がない。
そして、いきなりようこそお越し、歓迎しますぞと言われても、こちらの都合や感情は二の次なのね? 黙って連れ出したら誘拐と変わらないよね?
私達を御遣いだと断言してるけど、私達は女神様とやらに会ったこともないし、この人達を助けてやれとも誰にも言われてない。
泉に祈ったら私達が出て来たからと言って、この人達の勝手な理屈に過ぎない。
そして、喚び出された人が必ず自分達の役に立ち、助けになると思い込んでるけど、そんなのこっちにしたら、知ったこっちゃないやんと言いたい。ただの女子高生に何を期待しているのか。
こんな、漫画や映画のような事が現実に起きているのが、どこかドッキリなんじゃないかと思っている私が居る。
「さっきまで何言ってるのか解らなかったのに、急に通じるようになったけど、ご都合主義のドッキリ企画とか、人を騙してるんじゃないわよね?」
愛唯の疑問はもっともだ。私だってそう思ってる部分がある。
そして、幾ら胡散臭くても、これは現実だ、しっかりしろと語りかける自分もいる。
シュルリ
乾いてきたのか、パーカーのフードに隠れて頭に張り付いていた髪が一房、肩に垂れてくる。
真珠色の透き通った白髪。
「⋯⋯ちょっと、萌々香。髪。元の色出てるよ? 水に濡れて直ぐ落ちる染料使ってるの?」
勿論、美土里は知っている。私が子供の頃から、総白髪である事を。厳密には白髪ではなく色素の極端に薄い白っぽい金髪だ。父親が北欧圏の人で遺伝だ。帰化したので、名前も国籍も日本だけど。
普段は染めている。勿論、お風呂で髪を洗っても一度や二度で落ちるような染め粉は使っていない。
爪と同じく、人と違う姿は虐めや迫害の元なので、普段は隠している。
けど、なぜ今、地の色が?
0
あなたにおすすめの小説
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる