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竜王国って、竜の国?
🚷12 心の健康
しおりを挟む結局、野生動物にも魔獣にも出遭わなかった。
私のまわりは、みんなのおかげで霊圧が高くて、野生動物や魔獣は本能で危機感を覚えるのだろう、心配しなくても向こうから避けるのだ。
「凄いね、心の友ってだけじゃなくて、一緒にいるだけで、護衛にもなるんだね」
──モモカは前向きで可愛いよね
──星竜が気に入るわけだよね
時々聞く『星竜』の名が気にならない訳じゃない。どちらかと言えば、訊き出したい。
でも、みんなは言えないと言っていたし、いつか出逢えるという話だったから、楽しみにするのもいいよね。
──ホント、モモカは前向きで善良で可愛い
──アイツらから離れて正解だよね
──心が一気に健康になったよ
それは、あのままだったら不健康だったということ。
怖気のたつ蟲型の魔物に取り囲まれたり、性的興奮状態の妖魔に繁殖対象として詰め寄られたり、それも複数というか景色が見えなくなるほどの大群に取り囲まれて、恐怖に震えているところへ、岩も融けて溶岩になる高熱の火炎魔法で焼き尽くされる。
音も凄くて、蟲の蠢く音は思い出すだけで鳥肌が立つし、熱は伝わらないはずなのに、発情興奮した醜鬼や豚鬼の熱気は伝わる。
幾ら魔力の防御膜を纏って、直接は触れない、熱は伝わらない、打撃は受けないと言っても、目や耳には訴えてくる訳で、精神的苦痛は避けられない。
夢にまで見て、最近は真面に眠れなかった。
眠れずに与えられた部屋から抜け出して夜風に当たっていると、翌日の仕込みをしていたマクロンさんに見つかって、並んで二人でお喋りして。
彼は日本の私達の生活を、文化を聞きたがった。
話してる内に眠気が来て、そのままいつの間にか彼の膝枕で寝てたり、肩に凭れて涎零してたりした。
マクロンさん。この世界に来て、一番よくしてくれた人。
──一番?
あ、ごめんごめん。勿論、みんなが護ってくれて、手助けしてくれた事が一番助かってるよ?
でも、私を便利道具としか見てない評議員達や、自分達程度の魔法も使えないと見下した魔法士たちに囲まれて暮らしてると、メンタルは駄々下がりするの。
見習い巫女達は仲良くしてくれるけど、友人には一歩下がった位置にいて、美土里は忙しそうだし、愛唯は、なんだか怖くて信頼は出来ないから。
そんな中で、唯一、本当に仲良くしてくれたのがマクロンさんだったのだ。
見下したり持ち上げたりせずに、人として扱ってくれた。
変な期待を持たず、たくさんの魔力を持ちながら使い熟せなくても手の平を返したりせず、ずっと親身になってくれた。
ちょっと時々近すぎてセクハラ疑惑があったけど、そんなに怒るほど嫌じゃなかった。
むしろ、精神的に私の方が寄りかかって甘えてたと思う。
他人なのに、どこか心の支えにしてた。
──マクロンと番いになるの?
「ならないよ」
私は、この世界の人間じゃない。
次話
🚷13 依頼心か信頼か
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