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今日から冒険者(仮)
🚯5 クリルマ草
しおりを挟む雑草に見えてもハーブの仲間らしく、片っ端から【鑑定】していくと、色んなものがあった。
あの、毎朝顔を洗う時に搾って水に溶かしていた草も。
「凄い、正確に薬草類を集めるのね」
「実は鑑定してますから。ズルですね」
「いいんじゃない? 持ってる技能を活かして叱られる道理はないわ
ただ、そのクリルマ草はなんの効果があるのかちょっと解らないわね」
「これは、精霊の祝福を受けた後、水に搾り汁を入れると美容液になる⋯⋯」
お姉さんは飛びつくように、私の肩を摑んで叫ぶ。
「それを搾ると、そんなお肌になれるの!?」
そんなに食いつくほど、お姉さんのお肌も悪くないと思いますけど?
「ダメよ~。子供を産んでから体質変わったのか、歳なのか、荒れやすくてさぁ。いい化粧品はお貴族さまか大商家の奥方でもなけりゃ、手が出ないし」
機械工業文化がない魔法世界。化粧品は、手作業調合が一番高価で、錬金術師達の大量調合品が一般に出回るけれど、安くないらしい。
「緑気や植物系の精霊や妖精、生命に関係のある精霊の加護をもらわないとただの草で、美容効果は出ないらしいです」
見習い巫女さん達がやっても何も変わらなかったもんね。
「そう⋯⋯そうなの」
眼に見えてガッカリする姿が胸に痛い。
お姉さんには、緑気・草花・樹木などの植物系の精霊の守護はないらしい。
──それを根ごとまるっと摘んでいって、毎日朝陽を浴びさせながら話し掛けてみてよ
え?
──その内、気が向いたら祝福貰えるかもよ?
──そこのとそっちの、緑系の精霊は憑いてないけど、蕾の中に妖精がいるから、大切にしてたら、気が向けば祝福してくれると思う
──但し、毎日ちゃんと世話しないとダメよ?
──そうそう、この花は居心地がいいって思わせないと
「解ったわ! これと、これね? モモカ、移植鏝貸して」
精霊が明滅しながら葉先に留まって教える株を、私の持っていた籠から取り出した移植鏝を使って丁寧に、多めの土ごと掘り起こしていくお姉さん。
──ただ、妖精は精霊ほど勤勉でも素直でもないから、ある日突然飽きて、祝福しなくなっちゃうかもしれないから、期待しすぎないで、して貰えたらラッキーくらいの気持ちで
──毎日葉を摘んで美容液にしたら、あっという間に葉がなくなって枯れちゃうから、様子を見て、何日かごととかにしてね
──量産して儲けようとか無理だから
「勿論よ! この花に宿った妖精が痩せ細ったり嫌になったりしないように気をつけるわ! 隣近所や友達にも内緒にする。たぶん、知られてもお裾分けできない程度の物なのよね?」
「どうかな? 私は、手水の樽にひとつまみ入れて、自分の顔をはたいた後は⋯⋯」
見習い巫女さん達に分けてたとは言えない!! 私ってばお莫迦3度目やる気?
「そうね、余ったのは、自分で、首筋や胸元、手に使ったり、翌日にまわしたりするわ。濃さを調整してみるし」
「うん、妖精さんがお姉さんのお家の窓際を気に入ってくれるといいですね」
「祈ってて」
このやりとりの間、ガヴィルさんは、とても暇そうだった。
次話
🚯6 ルゴの実はどんなの?
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