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自由民ギルド ロックウェル支部
⛔3 雉も鳴かずば
しおりを挟む評議国で憔悴しきったまま食っちゃ寝の生活をしていたせいで、身体が重怠い。
体力をつけたくて、山歩きをしたいと思い、碧山葡萄の実二盛りと白草苺の実を五籠の採集クエストを受注する。
「ガヴィルさんも気の毒ね? 毎日子守りなんて」
受付の金髪金目のお姉さんが恐い目で一瞬私を睨んで、冷たい笑顔でガヴィルさんに向き直る。
あ~あ、それじゃ好かれるはずないヮ。
「好きでしていることだ。俺から志願したのだから、モモカを詰るのはお門違いだ。正しく公正に受付嬢の仕事をしろ」
ほら。けんもほろろ、好感度下がったんじゃない?
態々要らんこと言わなきゃいいのに。
雉も鳴かずば打たれまいって諺、こっちにも似たようなのありそうだけど。
──いつものことらしいよ?
──本人も解ってるんじゃない? 知らんぷりしてあげて
──ツンデレはガヴィルの守備範囲じゃないから一生かかっても無理だね
──万が一、ツンデレを「可愛い」と認識できたらワンチャン?
メラもウィンも、容赦ないな?
お姉さんの耳が赤くなってる。ガヴィルさんと向き合うのが照れるのか、精悍な相貌とスラッと高く肉厚な体格の男前ぶりに惚れ直してはじらってるのか。
どちらにしても、素直に可愛らしさを全面に押し出せるようにならないと、望みは薄そうだ。
──三十年近くツンデレをやって来たんだし、今更変わるのは無理じゃない?
──よほど人生の変わるような出来事にぶち当たらないと
とは、お姉さんに憑いてる陽光とレアメタルの精霊達の言葉だ。
特殊な精霊で、身を守ったり環境に働きかけるのが得意な力を持ち、お姉さんも普段は協会の受付嬢だけど、訪問者の鑑定や、持ち込む依頼の査定、有事の協会の防御を受け持つ上級魔法士でもあるらしい。
私のクエストに(ガヴィルさんと)同行したいと申し出るくらいだからそこそこの上級者だとは思ったけど、自由民協会の建物全体を受け持つくらいだから、防御力には自信があるのだろう。
風と水の守護を持って、短剣やナイフの物理攻撃と魔法でのまあまあの攻守、少しだけど回復魔法が使えるガヴィルさんとなら、攻撃一択のキミカさんよりバランスよくいけるのかもしれない。
「そんな表情しても代わってあげないわよ?」
キミカさんもとりつく島もない。
悔しそうなお姉さんを背に、クエストに向かうべく、私達三人は、自由民協会の建物を後にした。
次話
⛔4 アオヤマブドウ(碧山葡萄)
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