聖女も勇者もお断り🙅

ピコっぴ

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竜族の棲む深い森の中で

🔇15 襲撃者の脅迫と巻き込まれる人

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「危ないから、街に戻ってくださぁい!!」

──大丈夫

 なにがっ クラーレっぽい麻痺毒の塗られた極細針が刺さっても倒れちゃうだろうし、もしかしたら刺さり処が悪かったり耐性がなかったら呼吸困難で死んじゃうかもしれへんやん! 魔法士の攻撃魔法に当たるかもしれないよ!? 他人を巻き込めないよ! 逃げて! 街に戻って!!

 魔法士のローブに似た、ずるずるの衣装で、こちらに向かってゆったりと歩いてくる姿は、まだ遠くて陽も殆ど落ちて薄暗くてよく見えないけど、背の高い男性と思われる。

 その男性が、私に気がついたのかふと立ち止まり、こちらに向かって手を挙げて、微笑んだ。
 遠くても、笑顔はなんとなく判るって本当なんだ。
 いつだったかテレビで、100m以上離れて、喜怒哀楽を演技したところ、笑顔が一番判りやすかったと言うのを見たことが⋯⋯

 って、そうじゃない!! 危ないんだってば。

「モモカ~!!」

 え? 街から出て来たのっぽの男性は、笑顔で私を呼んだ。

「お嬢ちゃん、知り合いかな? 素直に仲間になると言わないから、こうなるんだよ?」

 背後の魔法士が、そんな事を言いながら、魔力を高める気配がする。

「な⋯⋯にを⋯⋯」

「火の粉、風のはやき閃光。りて縒りて縒りて、つなるものひとつとなりて、彼の地を踏む者を標的と定めねとサヌルが命ず『劫火轟雷』!!

 多少の魔法の心得があっても、三種の精霊を使っての攻撃はそうは防ぎ切れるもんじゃない。
 お嬢ちゃんが逆らう度に、誰かがこうなるんだよ」

 呪文詠唱の中で精霊に命じる時にサヌルと名乗った魔法士の放った、火と風と光の複合魔法が、遠目にもはっきりと男性の頭に着弾するのが見える。
 赤く燃え上がりながら閃光が走る真昼のような明るさで、瞬間、男性の顔が判別出来た。

 深草色と渋茶色が混じり合ったような迷彩色の髪と、深い緑の瞳。魔法士のようなローブを縁取る金糸の縫い取りは薬剤調合魔法士の徴。
 この国に居るはずのない、竹野内豊似の好青年。

「マクロンさん!?」

 私が彼の名を呼ぶ声をかき消す轟音と共に、追撃者の攻撃魔法が、彼に着弾した。



 次話
【心を守ってくれた優しい人】
🚫1 私の代わりに打たれた人

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