159 / 163
親鳥と雛
🔕1 北欧家具チックな家具達
しおりを挟むマクロン親鳥の給餌行動が今日一番の高ダメージだと思ってたけど、甘かった。
この後、最大級の事件が待っていた。
私が疲れて眠そうだからという言い訳をして、お父さん抱っこで私を運ぶマクロンさん。
私も本当に眠たいので、彼の肩に頭を押し付けるようにして、半分夢見ているかのようにぼんやりして、本当に重くないのかとか申し訳ないとかの遠慮はなく運ばれていた。
「あれ? 転移魔法で出たあのお部屋じゃないんだ?」
「ああ、あの部屋は、イサナが転移魔法を展開した場合の出口で、屋敷内では必ずあの部屋に出るように座標設定されているんだ。だから、あの部屋にイサナが戻れば、母上の部屋に報せが入るようになってる」
だから、あの時すぐにお母さまが来たんだ。
「萌々香が身仕度している間に、萌々香の故郷の物に似ているという作家の家具で揃えておいたよ」
マクロンさんが嬉しそうに、ちょっと自慢げに開いた扉の先は、王様の部屋や評議国での評議員達──元貴族達の迎賓室のような、緻密な彫刻や宝石を填め込んだりしたものではなく、北欧家具と呼ばれる飽きのこないシンプルスタイリッシュデザインのような、父方の祖父母のお家にあったような家具でいっぱいだった。
ぬいぐるみや花生け、本などが置かれているサイドボード、ローテーブルとソファの応接セット、チェストやクロゼット、一見小さめの箪笥だけど扉を手前に倒すと文机になるライティングビューロー、椅子、可愛い鏡のついたドレッサー。
扉から入ってすぐ横には、ハンガーポールもあった。
それらはどれも、飾りは少なくシンプルで、かつ、素材がいい。どっしりした木材で、中にはアンティークなのか、使い込まれたから出る艶と色合いの素晴らしさは、本当に北欧の祖父母のお家に行ったみたいで、温かみがあって、嬉しい。
「気に入ってくれたようで、よかったよ」
お城もお屋敷も、貴族向けの緻密な細工の豪奢な家具が多く、こういうシンプルな家具は、民間人向けに出回っている物らしい。
「城下町の、豪商が傾いた時に売りに出されたものらしいね、使い古しとも言えるけれど、萌々香の故郷では、こういう物も大切にされているんだったよね」
「うん。アンティークって言って、使い込まれた色合いと艶の風合いが人気なんだよ」
家具のひとつひとつを撫でていく。
今まで見たものは、無垢材の子供の工作のような簡素な物か、逆に中世のお城の内装に使われてそうな、美術館の額縁みたいな重々しい家具ばかりで、現代っ子の私にしたら、こういう家具の方が馴染みがあって、インテリアとして落ち着く。
マクロンさんは、応接セットも素通りし、部屋の奥にある小さめの扉を開いて中に入る。
寝室だった。
天蓋付きの、ロココなベッド。
「ごめんね、ベッドはああいう感じの家具に天蓋はついてなくて、いいのがなかったんだ。これは、僕が子供の頃使っていたものなんだよ」
いや、天蓋がついてないと寝られない訳じゃないよね。なくて結構。
天蓋の天幕を引いて、お布団に触れてみる。
羽毛布団? って思うくらい、ふわっふわ。
マクロンさんはいつの間にかいなくなってて、メイドさんがわらわらと近づいてきて、ドレスや装飾品を取り去っていく。
え、ちょ、何? 自分で脱げるよぉ。とは思いつつも、高価な飾りやドレスを汚したり傷めたりしないで出来るかというと自信はないので、羞恥に暑くなりながらも我慢する。
ああ、寝間着に着替えさせられるから、気を利かせて自分の部屋に帰ったんか。
おやすみなさいの挨拶出来なかったな⋯⋯
柔らかい蒸しタオルで顔を拭われ何かをはたくように塗られ、メイド達は片付けてあっという間にいなくなる。
なんなんや。嵐が去ったと思い、絹の掛け布団を捲り、中に入ろうとした時、本日最後の最高の事件が起こった。
次話
🔕2 おねむで頭が回りません
0
あなたにおすすめの小説
冷遇王妃はときめかない
あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。
だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。
冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります
真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」
婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。
そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。
脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。
王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
【12月末日公開終了】これは裏切りですか?
たぬきち25番
恋愛
転生してすぐに婚約破棄をされたアリシアは、嫁ぎ先を失い、実家に戻ることになった。
だが、実家戻ると『婚約破棄をされた娘』と噂され、家族の迷惑になっているので出て行く必要がある。
そんな時、母から住み込みの仕事を紹介されたアリシアは……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる