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魔導大会一日目
91話 マリアの奇策
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『さぁ! 始まってまいりました百キロ走! 実況役はわたくし、全種目を夢見て五年間補欠一筋のサイベル=ブリッタです!』
『どうも、解説役のエリア=プリミオンです」
闘技場に設置された貴賓席の一角でふたりの男が挨拶する。
『学生として五年、実況役として十年以上も務めてきましたが大会の雰囲気には毎度呑み込まれてしまいます!』
『ええ、春の暖かさから夏の暑さに気候が変わるこの時期は学生時代の光景が目に浮かびますよ』
『エリアさんは魔導大会の選手として出場した経験があるんですもんね! どんな競技に出場していたんですか?』
『答えたい気持ちは山々ですが、今はあちらの状況について話しましょう』
そう言ってエリアはフィールド中央に大きく映し出された映像に意識を向けさせた。
『さっそく職務を放棄するところでした。では現場を実況しながら百キロ走の出場者について軽く触れていきましょう!』
「すっげぇ……!」
王都内を疾走するアルムたちは現地民の応援や横断幕、それらの光景が一瞬で通り過ぎていく新鮮さに驚愕していた。
「マリアちゃん、このまま街道を突き進んでって良かったんだよね?」
「はい、このままでお願いします」
「今は他の選手たちと並んで走っているけど、周りに誰も居なくなったら分かんなくなりそう……」
一か月の成果もあって現段階では息切れひとつ起こさず、彼らは適度に会話をしながら王都を抜けようと走り続ける。
「もし私たちと逸れて道が分からなくなったら、伝承石に魔力を供給して付近の監督者に尋ねてください。行動不能になった時も同様にお願いします!」
「わ、分かりました!」
マリアは的確なアドバイスで取り除く。
『エンドリアス学園では百キロ走の出場経験者がゼロという事ですが、分析力の高いマリア選手と五年生のスベン選手が一年生二人を引っ張っているようです!』
バルテンたち監督教師が記入した選手情報を見ながらサイベルは仕事に取り掛かっていた。
『今年度からは20位から24位と加点の順位幅が増やされ、多くの学園が昨年よりも多くの選手を導入している中でエンドリアス学園は継続して四人です。この判断理由のコメントとして、≪このメンバーなら加点順位に確実に入れると確信して指名した≫と言っており、監督教師と選手たちが信頼し合っていることが分かりますね』
『とは言え選手が多い分、ゴールまでの難易度は下がるため他校との人数差がどう埋めていくのか課題ですね。そして選手たちは舗装された街道を抜けて現在五キロ通過! そのまま三キロ先の森林区画へ向かって行きます!』
「マリア先輩! このまま継続して走りますか?」
選手同士の妨害許可区画が差し迫り、横並びで走っていた選手たちが動き出すタイミングでアルムは指示を仰いだ。
「そうですね……」
(一番避けたいのは妨害区画に入った瞬間に戦闘に入ってしまうこと、私たちは他の選手よりやや後ろだからスタミナを温存して岩山区画に追い付いて……でもそのまま追いつけなくなる可能性も否定しきれない。それに――――)
マリアは前方で走る選手を睨むような視線を向ける。
『注目選手と言われればこの選手! ロードスト学園四年生トールズ=フィルフィート。彼は昨年と一昨年の百キロ走に出場し、14位と3位という優秀な成績を収め、今種目の一位獲得者に最も近いと言われています!』
『雷魔法で鎧のように全身に纏わせて身を守り、他を寄せ付けない圧倒的な速さで駆け抜ける姿はまさに電光と呼ぶにふさわしい。去年よりも更に研ぎ澄まされた魔法を見られるのが楽しみです』
(体力、魔法力、経験……これらの要素兼ね備えた最も警戒しなければならない人物! もし私たちが温存するのに対し、彼が魔法を発動して一気に突き放されてしまったらもう止められない……こうなったら――――!)
「皆さん! 『氷面風進の陣』を形成してください!」
「「「えっ⁉」」」
数秒の猶予の中でマリアは指示を下すと、三人はあからさまに嫌そうな顔を浮かべた。
「も、もう少し様子を見ようじゃないか? なぁアルム君」
「そ、そうですね! マリア先輩、変なこと訊いてすみません……」
「変なことは何も言ってませんよ? むしろ丁度いいタイミングです! 妨害区画に侵入する前に周りの選手から距離を置きましょう!」
「「「…………」」」
それとなく考え直させようと誘導するも彼女の意志は固まったようだった。
説得を諦めた彼らは徐々にスピードを落とし、集団を抜けた。
「うぅ……みんなを運ぶのはさすがに緊張する……」
「お前の魔法制御力は学園でもトップクラス、それは俺が保証するから自信持てよ!」
「そんな気負わなくて大丈夫だよ、多少のズレは僕が補正するから」
「ラビスさんが居たからこの陣形を考案できたのです。貴方なら出来ます!」
「……頑張ります!」
列の三番目と最後尾にそれぞれ並んでいたラビスとアルムは位置を入れ替え、スベンを先頭、マリアは戦闘からやや距離を開けて列の二番目に立ち位置を変えた。
(((……あいつら、何をする気だ?)))
理解不能の動きにその場に居合わせた選手だけでなく、その様子を映像で見ていた人たちも注目していた。
『エンドリアス学園の選手たちは何かを仕掛けるつもりですね! そしてここからは魔物たちが蔓延る森林区画、そして二キロ先からは選手同士の妨害許可区画にも突入します!』
「スベンさん! お願いします!」
「【水泡】、【冷気】」
スベンが構築式を展開し、森の向こうまで水が射出され、湿らせた地面を瞬時に凍らせる。
「――――うん! これなら滑るね」
「アルム君! ラビスさん!」
「【黒器創成】」
彼らは凍らせた地面に足を乗せ、アルムは大人四人がすっぽり入るほどの大きな器を生成した。
「嘘だろ……⁉」
『おおっと! まさかのこれは……⁉」
その光景を見ていたトールズは嫌な予感が頭をよぎらせ、実況役のサイベルは期待に胸を膨らませる。
「行きます! 【風魔弾】!」
後方に誰も居ない事を確認するとラビスは最大出力の突風を生み出した。
「「「「――――‼」」」」
強い追い風に押された器は氷が張った道を勢いよく突き進み、前方で走っていた選手らをあっという間に追い抜いた。
『どうも、解説役のエリア=プリミオンです」
闘技場に設置された貴賓席の一角でふたりの男が挨拶する。
『学生として五年、実況役として十年以上も務めてきましたが大会の雰囲気には毎度呑み込まれてしまいます!』
『ええ、春の暖かさから夏の暑さに気候が変わるこの時期は学生時代の光景が目に浮かびますよ』
『エリアさんは魔導大会の選手として出場した経験があるんですもんね! どんな競技に出場していたんですか?』
『答えたい気持ちは山々ですが、今はあちらの状況について話しましょう』
そう言ってエリアはフィールド中央に大きく映し出された映像に意識を向けさせた。
『さっそく職務を放棄するところでした。では現場を実況しながら百キロ走の出場者について軽く触れていきましょう!』
「すっげぇ……!」
王都内を疾走するアルムたちは現地民の応援や横断幕、それらの光景が一瞬で通り過ぎていく新鮮さに驚愕していた。
「マリアちゃん、このまま街道を突き進んでって良かったんだよね?」
「はい、このままでお願いします」
「今は他の選手たちと並んで走っているけど、周りに誰も居なくなったら分かんなくなりそう……」
一か月の成果もあって現段階では息切れひとつ起こさず、彼らは適度に会話をしながら王都を抜けようと走り続ける。
「もし私たちと逸れて道が分からなくなったら、伝承石に魔力を供給して付近の監督者に尋ねてください。行動不能になった時も同様にお願いします!」
「わ、分かりました!」
マリアは的確なアドバイスで取り除く。
『エンドリアス学園では百キロ走の出場経験者がゼロという事ですが、分析力の高いマリア選手と五年生のスベン選手が一年生二人を引っ張っているようです!』
バルテンたち監督教師が記入した選手情報を見ながらサイベルは仕事に取り掛かっていた。
『今年度からは20位から24位と加点の順位幅が増やされ、多くの学園が昨年よりも多くの選手を導入している中でエンドリアス学園は継続して四人です。この判断理由のコメントとして、≪このメンバーなら加点順位に確実に入れると確信して指名した≫と言っており、監督教師と選手たちが信頼し合っていることが分かりますね』
『とは言え選手が多い分、ゴールまでの難易度は下がるため他校との人数差がどう埋めていくのか課題ですね。そして選手たちは舗装された街道を抜けて現在五キロ通過! そのまま三キロ先の森林区画へ向かって行きます!』
「マリア先輩! このまま継続して走りますか?」
選手同士の妨害許可区画が差し迫り、横並びで走っていた選手たちが動き出すタイミングでアルムは指示を仰いだ。
「そうですね……」
(一番避けたいのは妨害区画に入った瞬間に戦闘に入ってしまうこと、私たちは他の選手よりやや後ろだからスタミナを温存して岩山区画に追い付いて……でもそのまま追いつけなくなる可能性も否定しきれない。それに――――)
マリアは前方で走る選手を睨むような視線を向ける。
『注目選手と言われればこの選手! ロードスト学園四年生トールズ=フィルフィート。彼は昨年と一昨年の百キロ走に出場し、14位と3位という優秀な成績を収め、今種目の一位獲得者に最も近いと言われています!』
『雷魔法で鎧のように全身に纏わせて身を守り、他を寄せ付けない圧倒的な速さで駆け抜ける姿はまさに電光と呼ぶにふさわしい。去年よりも更に研ぎ澄まされた魔法を見られるのが楽しみです』
(体力、魔法力、経験……これらの要素兼ね備えた最も警戒しなければならない人物! もし私たちが温存するのに対し、彼が魔法を発動して一気に突き放されてしまったらもう止められない……こうなったら――――!)
「皆さん! 『氷面風進の陣』を形成してください!」
「「「えっ⁉」」」
数秒の猶予の中でマリアは指示を下すと、三人はあからさまに嫌そうな顔を浮かべた。
「も、もう少し様子を見ようじゃないか? なぁアルム君」
「そ、そうですね! マリア先輩、変なこと訊いてすみません……」
「変なことは何も言ってませんよ? むしろ丁度いいタイミングです! 妨害区画に侵入する前に周りの選手から距離を置きましょう!」
「「「…………」」」
それとなく考え直させようと誘導するも彼女の意志は固まったようだった。
説得を諦めた彼らは徐々にスピードを落とし、集団を抜けた。
「うぅ……みんなを運ぶのはさすがに緊張する……」
「お前の魔法制御力は学園でもトップクラス、それは俺が保証するから自信持てよ!」
「そんな気負わなくて大丈夫だよ、多少のズレは僕が補正するから」
「ラビスさんが居たからこの陣形を考案できたのです。貴方なら出来ます!」
「……頑張ります!」
列の三番目と最後尾にそれぞれ並んでいたラビスとアルムは位置を入れ替え、スベンを先頭、マリアは戦闘からやや距離を開けて列の二番目に立ち位置を変えた。
(((……あいつら、何をする気だ?)))
理解不能の動きにその場に居合わせた選手だけでなく、その様子を映像で見ていた人たちも注目していた。
『エンドリアス学園の選手たちは何かを仕掛けるつもりですね! そしてここからは魔物たちが蔓延る森林区画、そして二キロ先からは選手同士の妨害許可区画にも突入します!』
「スベンさん! お願いします!」
「【水泡】、【冷気】」
スベンが構築式を展開し、森の向こうまで水が射出され、湿らせた地面を瞬時に凍らせる。
「――――うん! これなら滑るね」
「アルム君! ラビスさん!」
「【黒器創成】」
彼らは凍らせた地面に足を乗せ、アルムは大人四人がすっぽり入るほどの大きな器を生成した。
「嘘だろ……⁉」
『おおっと! まさかのこれは……⁉」
その光景を見ていたトールズは嫌な予感が頭をよぎらせ、実況役のサイベルは期待に胸を膨らませる。
「行きます! 【風魔弾】!」
後方に誰も居ない事を確認するとラビスは最大出力の突風を生み出した。
「「「「――――‼」」」」
強い追い風に押された器は氷が張った道を勢いよく突き進み、前方で走っていた選手らをあっという間に追い抜いた。
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