死神と恐れられた俺、転生したら平和な時代だったので自由気ままな人生を享受する

オカさん

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魔導大会一日目

92話 我が校の最大戦力

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 ロードスト王国西部のとある町。

「ご注文の野菜とハムのサンドウィッチです」

「ありがとうございます」

「早くちょうだい!」

「そんな慌てなくても逃げないわよ」

『おおっと! まさかのこれは……⁉』

 運ばれた軽食を食べながら息子の試合映像を見ていた。

「今まで関心が無かったけど、魔導大会って凄いのね……」

 レイナは旦那のロイドに耳打ちする。
 エンドリアス王国から出発し、ここまでの旅路たびじでこの大会の知名度や期待、そしてその規模がどれ程のモノなのか分からされた。

『エンドリアス学園! 最後尾から一気に先頭におどり出たァ!』

 サイベルの声が店内に響き渡り、食事をしていた者たちも立ち上がり驚嘆の声を上げる。
 
「お兄ちゃん映ってる!」

「ああっ! お兄ちゃんカッコいいな!」

 マインは一日ぶりに見る兄の顔を指差し、そんな娘の頭を優しく撫でた。

「怪我が無ければいいけど……」

 しかしレイナは嬉しさよりも心配する気持ちが勝ってしまったようだった。

「……そりゃあ怪我がないに越したことは無いけど、楽しそうじゃねえか」

「あばああああアアアァァ――――!」

 アルムは涙目になりながら必死で器にしがみ付く。

「ら、ラビスちゃん! 少し勢い落とした方が――――」

「そんなことを言う暇があったら氷を張ってください!」

 アルムと同様に混乱状態にあるスベンは強気なマリアに逆らうことは出来ず、目の前の地面を凍らせた。    

「もう一発デカいのお願いします!」

「【風魔弾ふうまだん】」

「「ウオオオォォォ――――‼」」

 ラビスは再び突風を吹かせて一層加速し、男ふたりは悲鳴を上げた。

「もう良いでしょう! ここまで差をつければ追い付けませんよォ!」

 アルムの訴えはほとんど恐怖によるものだが、実際に後方で走っているはずの選手の姿は見えず、自分たちは道を間違えたとすら思っていた。

「なに甘いことを言っているんです! ここまでは軽い運動ウォームアップみたいなもの、本当の戦いはここからですよ!」

 直後、後方から大きな爆発音がとどろき、無数の火球や岩弾が降り注いだ。

『エンドリアス学園の奇策によって選手たちの集団と大きな差を作りましたが、ここでスタート地点から10キロを通過! ここからは選手たちの妨害行為が認められた区域に入ります!』 

「【黒棘ブラックパレス】」

 アルムは器から身を乗り出して地面に触れ、針状の障壁を展開する。
 向かって来た魔法は黒棘によって阻まれ、の攻撃を凌いだ。

「次、右後方から攻撃来ます!」

「【絡み木ホールドット】」

 周囲の木が形状を変化させ、器を転覆てんぷくさせようと枝葉を伸ばさせる。

「【黒器創成くろきそうせい】」

 長槍を生成し、器を触れさせまいと枝葉をぎ払う。

「次は左後方から来ます!」

「【岩峰の鉄槌ストーン・グラスタル】」

 ビシィと地面が裂け、彼らの目の前に大岩が立ち塞がった。

「なぁ⁉」

「よくやったガレス! このまま袋叩きにするぞォ!」

 他校の選手たちがアルムたちに集まっていく。

「各学園が協力してまで墜とそうとしてるぞ。あのまま先行したのは悪手だったかもしれませんね」

「だからと言って集団から抜け出さなかったとしても、周りは敵だらけで大して違いは無さそうだがな」

 闘技場で彼らを見守っていたテイバンとライザは議論を交わす。

「まあ起こってしまった事を議論しても仕方ありません。ですがどちらを選択しても問題は無いでしょう」

「それもそうだな……」

 カルティアの意見にライザは共感する。

「ったく、使う気なかったのによォ……」

 アルムは後方に控えている選手を無視して目前に迫る大岩を睨みつける。

「不服ですがあいつ以上に頼りになる奴は居ませんね」

 対峙したことのあるテイバンは不満げな様子だが笑みを浮かべた。

「全員伏せてください!」

「「「……!」」」 

 指示に従って彼らは体をかがめて身を守り、アルムは大岩に向けて人差し指を突き出す。 

「ええ、彼は我が校の最大戦力ですから」

「【魔黒閃ビルスター】」

 展開された構築式から黒い熱光線が放射され、大岩を粉々に打ち砕く。

「お、俺の魔法が……!」
「昨日の懇親会で見てたけど、やっぱ格がちげぇ……」
「ベレスとやり合える奴が来る種目じゃないっつーの!」

 ある者は自信を無くし、ある者は実力差に驚き、ある者は悪態を吐く。

「…………」

「スベンさんは引き続き氷をっ! ラビスさんは指示を出すので魔法を――――って、何してるんですか⁉」

 選手たちの包囲網ほういもうを脱しようしている中、アルムは器から降りた。 

「マリア先輩たちはそのまま進んで下さい。俺はこいつらを足止めをします」

「ッ……分かりました、ラビスさん! 魔法をお願います!」

「アルム! 必ず、追い付いて来てね!」

「当り前だ、クソ野郎から守るって約束したからな!」

「――――うん、待ってる!」

 希望に目を輝かせたラビスは突風を放ち、包囲網から抜け出した。 

「ベレスに目を掛けられてるからって調子乗んなよ!」

「この人数差でどう立ち回るつもりだ?」

「お前さえ潰せればあいつ等の足を止めるなんて簡単だ。本当に降りて大丈夫だったのか?」

 しかし目の前の男が最大の障壁だと理解した彼らは、ラビスたちを追いかけようとはせずアルムを袋叩きにしようと囲い込んだ。

「お前らこそこの場から逃げたほうが利口なんじゃねえのか? 向こうに走っていくなら見逃してやる」

 そう言ってアルムは王都の方向を指差した。

「「「――――ぶっ潰す‼」」」

 舐めた態度に怒りが頂点を超えた彼らはアルムに襲い掛かる。

(……絶対にこの種目、妨害区画なくしたほうが良いだろ)

 想像以上に殺伐さつばつとなってしまった初日に彼は軽くため息を吐いた。
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