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魔導大会一日目
97話 適任者
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『百キロ走は一時中断、これから生徒たちを保護するため監督者たちが動くので落ち着いてください!』
大会運営側が対応を決め、サイベルは混乱を招かないよう何度も繰り返した。
「っ……会長!」
「心配なのは分かりますが落ち着きなさい。ここで助けに行ったとしても一時間以上は掛かります。それに身勝手な行動は下級生や周囲の人間、延いては王都全体の混乱を招く可能性もあります。心苦しいですがトールズ君やアルム君、監督者の方を信じる以外にありません」
「……分かりました」
テイバンはその場に居ない自分を責め、彼らが無事に生還することを静かに願った。
「【電撃】」
トールズは狭い山道の中で竜種の攻撃を回避しながら黄色い稲妻を顔面に直撃させる。
「……くそ、効果無しかよ!」
しかし高い硬度の外皮と魔法耐性を有する竜種は食らい続けてもなお、攻撃の手を緩めなかった。
(あの外皮を貫くには火力を上げるしかねェけど、雷化礼装を維持しながらは無理だ。ここで倒せたら超カッコいいが、今は見栄より命優先で考えねェとな……)
「トールズ選手! 今すぐ離れてください!」
彼らより上の山道から監督者二人が顔を覗かせて警告する。
トールズは素直に従ってすぐにその場から離れた。
「【瀑布】」
「【万凍の冷気】」
膨大な水と強烈な冷気が吹きつけ、竜種全体を大きな氷で覆いつくす。
「監督者すげぇ……!」
彼らがもし自分がルール違反をした際に捕らえられるのか疑念を懐いていたが、目の前の光景を見てその考えがひっくり返された。
「――――――――」
竜種は背中や翼、体の隅々まで凍結させられて危機的状況だと理解すると口から大量の空気を取り込み、体内で爆発的燃焼を引き起こす。
「もっかい行くぞ!」
「了解!」
凍死させようと再び構築式を展開した瞬間、竜息を地面に向けて吐き出した。
「っあ――――あっつ⁉」
瞬時に自身を覆っていた氷を溶かし、山道や崖を伝って離れていたトールズや監督者にまで豪炎が広がる。
「――――冗談じゃないわ……」
そしてその豪炎は先んじて逃げていたマリアたちにも届いてしまう。
「マリアさん! 早く逃げてェ!」
「ライタード! さっさと助けに来いよ!」
座っている場合ではないとエンドリアス学園の生徒らは立ち上がり、必死になって彼女たちを応援する。
「はっ、はっ、はっ――――!」
マリアは気絶している彼らを放り出さず、耐え凌げる場所を必死に探すが炎の熱を背中で感じられる程に差し迫っていた。
「……もう、無理」
マリアは逃げ場がないと悟り、一か八か崖から飛び降りるという選択を取った。
「「「――――――――‼」」」
二度目の身を投げ出す光景に会場では再び叫喚の声が響く。
「絶対助ける」
「「「うおおおおおおおおォォォ――――‼」」」
直後、アルムが木陰の中から姿をあらわし会場全体が熱狂に包まれる。
「【黒棘】」
アルムは最短距離で彼女たちに辿り着こうと崖に杭を生成させながら近づくが、拘束を解いた竜種も彼女たちに接近していた。
「あ、アルム君! 早く来てください!」
「分かっている! 【魔黒閃】!」
竜種に熱線を撃つが、緩急をつけた飛行でギリギリのところで躱されてしまう。
「チィ! さっさと失せろ!」
アルムは魔黒閃を連射するが巨躯に見合わない素早い動きに翻弄され、竜種の進行を止めることが出来ない。
(おかしい……俺がいるのに何故頑なにラビスたちを付け狙う⁉)
竜種の意図は分からないが、これ以上の接近を許す気はないアルムは黒棘で彼女たちを受け止め、棘から棘を交差させて堅牢な檻で固めた。
「これで狙われる心配は――――はぁ⁉」
手出しできないと高を括るアルムだが、竜種は躊躇なく黒棘の檻に体をぶつける。
黒棘の魔法特性上、硬度が竜種の外皮に劣るためガラスを叩き割るように簡単に壊された。
「待てッ!」
食われるのだけは避けようと魔黒閃の照射姿勢を取るが、竜種は自身の前足で気絶したマリアを掴むと興味が失せたようにその場を後にした。
予想外の行動にぽかんとした様子で眺めているが、すぐにハっとなってスベンとラビスの救出に向かう。
「スベン、回収! ラァビ――――ス!」
直近のスベンを受け止めるが、惜しくもラビスを掴み損ねてしまう。
「【黒器創成】!」
スベン担ぐ片手間で鎖を生成し、彼女の体に巻きつけた。
「……とりあえず、二人救出。あとはマリア……」
ラビスを引き上げた彼は黒棘と黒き空牢で防備を固め、竜種を狙える高さまで駆けのぼる。
「魔黒閃、は無理だな。この距離だと流石にブレる」
先の凍結で感覚が麻痺して飛行速度は低下しているが、人間たちを警戒して横ではなく雲に向かって飛翔していた。
(命中率を考えるなら投擲のほうが期待値は高いけど、マリアを放したらだれが受け止める――――)
「何だよ! せっかく俺が囮を引き受けてやったのに捕まってんじゃねェか!」
冷静に分析する傍らでトールズはひとりでギャアギャアと騒いでいた。
「……トールズ=フィルフィート!」
アルムは雷の鎧を纏った青年を見て彼の名前を呟く。
「ん? なんだよ? 競技は中断だから戦う気は――――」
「俺の作戦に乗ってくれませんか?」
アルムは適任な人物を見つけて嬉しそうな表情を浮かべた。
大会運営側が対応を決め、サイベルは混乱を招かないよう何度も繰り返した。
「っ……会長!」
「心配なのは分かりますが落ち着きなさい。ここで助けに行ったとしても一時間以上は掛かります。それに身勝手な行動は下級生や周囲の人間、延いては王都全体の混乱を招く可能性もあります。心苦しいですがトールズ君やアルム君、監督者の方を信じる以外にありません」
「……分かりました」
テイバンはその場に居ない自分を責め、彼らが無事に生還することを静かに願った。
「【電撃】」
トールズは狭い山道の中で竜種の攻撃を回避しながら黄色い稲妻を顔面に直撃させる。
「……くそ、効果無しかよ!」
しかし高い硬度の外皮と魔法耐性を有する竜種は食らい続けてもなお、攻撃の手を緩めなかった。
(あの外皮を貫くには火力を上げるしかねェけど、雷化礼装を維持しながらは無理だ。ここで倒せたら超カッコいいが、今は見栄より命優先で考えねェとな……)
「トールズ選手! 今すぐ離れてください!」
彼らより上の山道から監督者二人が顔を覗かせて警告する。
トールズは素直に従ってすぐにその場から離れた。
「【瀑布】」
「【万凍の冷気】」
膨大な水と強烈な冷気が吹きつけ、竜種全体を大きな氷で覆いつくす。
「監督者すげぇ……!」
彼らがもし自分がルール違反をした際に捕らえられるのか疑念を懐いていたが、目の前の光景を見てその考えがひっくり返された。
「――――――――」
竜種は背中や翼、体の隅々まで凍結させられて危機的状況だと理解すると口から大量の空気を取り込み、体内で爆発的燃焼を引き起こす。
「もっかい行くぞ!」
「了解!」
凍死させようと再び構築式を展開した瞬間、竜息を地面に向けて吐き出した。
「っあ――――あっつ⁉」
瞬時に自身を覆っていた氷を溶かし、山道や崖を伝って離れていたトールズや監督者にまで豪炎が広がる。
「――――冗談じゃないわ……」
そしてその豪炎は先んじて逃げていたマリアたちにも届いてしまう。
「マリアさん! 早く逃げてェ!」
「ライタード! さっさと助けに来いよ!」
座っている場合ではないとエンドリアス学園の生徒らは立ち上がり、必死になって彼女たちを応援する。
「はっ、はっ、はっ――――!」
マリアは気絶している彼らを放り出さず、耐え凌げる場所を必死に探すが炎の熱を背中で感じられる程に差し迫っていた。
「……もう、無理」
マリアは逃げ場がないと悟り、一か八か崖から飛び降りるという選択を取った。
「「「――――――――‼」」」
二度目の身を投げ出す光景に会場では再び叫喚の声が響く。
「絶対助ける」
「「「うおおおおおおおおォォォ――――‼」」」
直後、アルムが木陰の中から姿をあらわし会場全体が熱狂に包まれる。
「【黒棘】」
アルムは最短距離で彼女たちに辿り着こうと崖に杭を生成させながら近づくが、拘束を解いた竜種も彼女たちに接近していた。
「あ、アルム君! 早く来てください!」
「分かっている! 【魔黒閃】!」
竜種に熱線を撃つが、緩急をつけた飛行でギリギリのところで躱されてしまう。
「チィ! さっさと失せろ!」
アルムは魔黒閃を連射するが巨躯に見合わない素早い動きに翻弄され、竜種の進行を止めることが出来ない。
(おかしい……俺がいるのに何故頑なにラビスたちを付け狙う⁉)
竜種の意図は分からないが、これ以上の接近を許す気はないアルムは黒棘で彼女たちを受け止め、棘から棘を交差させて堅牢な檻で固めた。
「これで狙われる心配は――――はぁ⁉」
手出しできないと高を括るアルムだが、竜種は躊躇なく黒棘の檻に体をぶつける。
黒棘の魔法特性上、硬度が竜種の外皮に劣るためガラスを叩き割るように簡単に壊された。
「待てッ!」
食われるのだけは避けようと魔黒閃の照射姿勢を取るが、竜種は自身の前足で気絶したマリアを掴むと興味が失せたようにその場を後にした。
予想外の行動にぽかんとした様子で眺めているが、すぐにハっとなってスベンとラビスの救出に向かう。
「スベン、回収! ラァビ――――ス!」
直近のスベンを受け止めるが、惜しくもラビスを掴み損ねてしまう。
「【黒器創成】!」
スベン担ぐ片手間で鎖を生成し、彼女の体に巻きつけた。
「……とりあえず、二人救出。あとはマリア……」
ラビスを引き上げた彼は黒棘と黒き空牢で防備を固め、竜種を狙える高さまで駆けのぼる。
「魔黒閃、は無理だな。この距離だと流石にブレる」
先の凍結で感覚が麻痺して飛行速度は低下しているが、人間たちを警戒して横ではなく雲に向かって飛翔していた。
(命中率を考えるなら投擲のほうが期待値は高いけど、マリアを放したらだれが受け止める――――)
「何だよ! せっかく俺が囮を引き受けてやったのに捕まってんじゃねェか!」
冷静に分析する傍らでトールズはひとりでギャアギャアと騒いでいた。
「……トールズ=フィルフィート!」
アルムは雷の鎧を纏った青年を見て彼の名前を呟く。
「ん? なんだよ? 競技は中断だから戦う気は――――」
「俺の作戦に乗ってくれませんか?」
アルムは適任な人物を見つけて嬉しそうな表情を浮かべた。
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