死神と恐れられた俺、転生したら平和な時代だったので自由気ままな人生を享受する

オカさん

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魔導大会一日目

98話 マリア救出作戦

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「はぁ⁉ 何でおれが他校生の為にそこまでしなきゃならねェんだよ!」

 アルムの作戦を聞かされたトールズはあからさまに嫌そうな言動で拒絶する。

「そこをなんとかお願いします!」

「……気の毒だとは思うけど、竜種とはもう関わりたくねェよ」

 そう言ってトールズは竜息に焼かれた右腕に触れ、先の恐怖体験を思い返していた。

(そりゃそうだ。見返りリターンも無いのに格上の相手に喧嘩を売れる訳が無い。でも囮を引き受けた、ってことは少なくとも他人を心配できる良い人間なのが間違いないはず。せめて俺の作戦を乗ってくれる言い分を……)

「トールズさん、もし作戦に乗ってくれるのなら貴方を一位にさせると約束しましょう」

「……⁉ 何を言って……」

「なに言ってんだァ! アルムの野郎は!」

 トールズは驚き、会場の生徒は困惑や疑念、怒りと言った表情を浮かべる。

「競技が中断したとはいえまともに再開されるとは思えない。それに今はそんな事を話している場合じゃ――――」

「この作戦は貴方のあしが無ければ成立しないんです。それならどんな条件だって提示しますよ」

 アルムは彼の目をしっかりと見据え、交渉を終わらせまいと奮闘ふんとうする。

「……じゃあ条件だ、彼女を回収して竜種を始末できたら俺と勝負しろ!」

「良いんですか? あの竜種に敵意を向けられるかもしれないのに?」

 驚いた様子で尋ねるとトールズは鼻で笑った。

「この四年間はこの日を誰よりも速く走るために費やして来たんだ。それを台無しにした竜種アレにイラつかないわけねェだろ……!」

「交渉成立ですね」

 アルムは右手を突き出し、互いに握手を交わす。

「頼みましたよ、トールズ先輩」

「こちらこそよろしくな、アルム」

 熱い握手を交わしたトールズはすぐさま雷化礼装を纏い、電光の速さで山道を下って行った。

「……さて、俺も対空準備に取り掛かりますか」

 アルムは助走距離を確保するため、竜種が飛行する方角に向けて黒棘を展開する。

「【黒器創成くろきそうせい】」

 足場を確保したアルムは右手に長槍を生成し、魔力を槍全体に帯びさせる。

「アルム選手! 勝手な行動は慎んでいただきたい!」

 自分たちが対処しようと監督者たちが介入する。

「ちょうど良かった! 監督者の皆さんは落ちて来るマリア先輩を魔法で受け止めてもらえますか?」

「いや、ですから勝手な行動は――――すみません、少し失礼します」

 監督者側の伝承石が反応したようで彼はその場を離れる。
 そして僅か数秒の問答で連絡が済んだようで監督者は戻って来た。

「ええェと、さらわれたマリア選手を魔法で受け止められる監督者を配備する、で宜しいでしょうか?」

「……はい、落下ダメージを無くすことが出来ればいいので、終わり次第その場を離れて頂いて大丈夫です」

「では風魔法を行使できる監督者にそのように伝えておきます」

 監督者たちは不服そうな顔をしながらそそくさとその場を去った。

「一体誰からの連絡だったんだ、ってこっちもだな!」

 伝承石を取り出し、トールズからの魔力波を受信する。

「こっちは持ち場に着いた。多少は座標がズレても対処するから気にしなくていい」

「分かりました。先ほど監督者たちと話を着けて協力してくれる事になったので、トールズ先輩は竜種を出し抜く事だけに集中してください」

「了解だ、アルムこそいろいろ手ェ回して竜種を撃ち抜けなかった、なんて事はないようにな!」

「ええ、そこはお任せください」

 アルムは通信を終わらせ、移動しながら深呼吸を吐く。 

「……んじゃ、始めるかァ!」

 そう言ってアルムは軽快なステップで勢いをつけ、徐々にその踏み込みを強めた。

(狙うは足、一槍で貫く……)

 彼のまなこはマリアを掴んだ竜種の左前足を捉える。
 左足を大きく前に出し、全身の筋肉を動員してねじった上半身を槍と共に引き戻す。

「【黒憑クロウヴィル】」

 黒い魔力を纏った長槍を遥か上空の竜種に目掛けて投擲とうてきした。
 空気が裂けるような音を立て、あっという間に距離を詰める。

「――――――――!」

 槍の接近に気付けなかった竜種は足の靭帯じんたいが貫かれ、意思に反してマリアを放してしまう。

「……ッ、きゃあああああああァァ――――‼」

 意識を取り戻した彼女だが、地表から数百メートルの高さから落ちている状況に絶叫する他なかった。

『アルム選手、抜群ばつぐんの運動神経を発揮した超高精度の遠距離投擲ィ! しかし貫かれた竜種も逃げず執拗しつようにマリア選手を付け狙う!』

 実況している場合ではないと理解しつつも、目の前の戦闘に口を閉じていられるほど利口りこうでは無かった。

『魔物以前に生物の本能として、彼女に固執することは更なる悪化を招くことは火を見るよりも明らかです。あの竜種にとってマリア選手は自らを危険にさらしてでも連れて行きたい理由があるのでしょうか……?』

 解説役のエリアは竜種の不可解な行動に疑心がつのるばかりだった。

(……だんだん分かってきました!)

 落下し続ける状況にも適応し、マリアは地面に背を向けて接近する竜種に攻撃しようと試みる。

「ファイヤーボ――――えっ⁉」

 直後、脳に正体不明の声が流れ始める。

「……この声、貴方なの?」

 マリアは意思疎通が出来る筈もない竜種に問いかけた。

「――――――――」

 その問いに答えるように竜種は口を開くが、その口から漏れたのは吐血だった。

「さっさとくたばれェ!」

 マリアから手を離れたため、竜種の急所に黒槍を投げ飛ばす。
 持ち堪えられなくなった竜種はマリアから進路がれてしまった。

「今です!」

「【天風の渦リレイブ・フロート】」

 少し距離を置いた位置から監督者が風魔法を発動させる。
 大きなうずを巻いた上昇気流が落下の勢いをころしてマリアを優しく受け止めた。

「ご協力ありがとうございます! 彼女は自分が連れて行くので今すぐこの場を離れてもらって結構です!」

 彼女を抱えたトールズは監督者に避難を促した。

「何故トールズさんがここに……?」

 彼女の質問を無視してトールズはアルムに魔力波を送る。

「彼女は回収した! あとの事は任せたぞ!」

「ええ、恩に着ます」

 アルムは彼女を救出できたことに笑みを浮かべ、何も考えず竜種を殺せることに目を血走らせた。
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