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魔導大会四日目
空裂破断
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ベレスは焼け焦げた左手を頭上まで高く挙げる。
「【黒器創成】」
アルムは右手に刃渡り50センチにも満たない短剣を片手に黒色の魔力を纏った。
「――――【引手】」
重力に従って左手を下ろした直後、熱を宿した突風がアルムの顔面をジリジリと焦がしながら右腕の甲冑が眼前に迫る。
「死ね……!」
淡々と発せられた殺意が込められた一言。
その言葉を聞いただけなら戦闘を楽しむベレスとは誰も思わない。
それだけ今の彼には普段の面影がなく、ただ目の前の相手を殺すための言動でしかなかった。
アルムは短剣の刃先を左手に添えるとブレード部分で彼の鉄拳を受け止める。
「くっ……!」
熱風と凄まじい衝撃が真正面から突き抜け、踏ん張りが利かなかった彼の両足は数歩後ろに引かされた。
「痛ェ、なんつう馬鹿力だ……!」
纏う面積を狭め、耐久力を上げようと短剣を選ぶアルムだがそれでも砕かれてしまう。
(炎の推進力もあるがそれ以上に膂力が数段増しているな……)
「【黒棘】」
接近戦が不利だと判断したアルムは戦闘で破壊された箇所を埋めるように展開し、再びフィールド全体を黒結晶で満たす。
「またあの時間差攻撃か……」
「ここからは隠れながら一気に攻め落とす!」
アルムは影に潜り込むと配置に気を配りながら影武者の構築に取り掛かった。
「アルムの奴、もう一度あの魔法を繰り出すようですがどう見ますか?」
「ベレスの魔法特性上、先ほどの攻撃を躱すもしくは防ぎ切るのは極めて難しい。迎撃の手段が無ければアルムの勝利は目前といったところだな」
「ベレスの魔法特性ってどういうものなんですか?」
テイバンとライザの掛け合いにマリアが疑問を抱く。
(触れた空間に干渉・消滅させる……それがベレスの魔法特性だ)
これまでの戦闘を振り返り、アルムたちはそう結論付けていた。
「この戦い方、俺の魔法特性を把握してるってのは嘘じゃねェみたいだな」
(仮にあの分身体が二体以上で攻められた場合、手中抹消で守り抜くことは不可能……だ?)
ベレスは人生最大の窮地に立たされてしまうが、偶然にも地割れに落とされたはずの白鬼の前腕が目に入る。
「たとえば引手、握り消した空間を埋めようとして周囲の空間が歪み、その副産物として引き寄せる力が発生する」
「不可視の歪みなら空間に干渉し、捻じ曲げて自在に方向を変えられる。手中抹消なら手の平の空間を消す際に魔法や物質収束し、滅することが可能なんだ」
「自身の周囲の空間に干渉し続けていれば死角に現れた俺を感知する事も容易い。あとは空間消滅時に発する引力を利用して高速移動、手中抹消で難なく防御。お前の魔法を見極めるのに相当の時間を掛けられたぜ……」
(では私の胸が斬り裂かれた攻撃は発生した引力の仕業という事ですね)
ライザたちの説明を聞き、カルティアの疑問は解消された。
「大体分かりました、でもそれだけ知っているならアルム君に話しても良かったんじゃないんですか?」
「話そうとは思ったんだけどな……」
丁寧に説明する彼らにマリアは苦言を呈すとテイバンはライザに視線を向ける。
「あいつなら戦いの中で一人で気付けると踏んでいたんだ。それに確証がない情報をアルムの耳に入れたくなかったからな」
「な、なるほど……」
「それで本音は何なんですか?」
理解できなくもない判断にマリアは口ごもるがミリエラは容赦なく切り込んだ。
「どの段階で気づくのか試したくなった、ってところだな!」
悪びれる様子もなく正直な思いを口視するライザに一同はため息を吐いた。
(お前が負けたら間接的に俺が悪くなっちまう。だから勝てよ、アルム……)
「ベレスの位置、両腕の甲冑、影武者の狙撃配置、全て問題ない」
ライザの期待に応えるように彼は目視確認と自己呼称で万全を期す。
「防御も回避も迎撃も今の俺には不可能……一か八か本体を叩くしかねェな」
ベレスは左腕の甲冑を装着し、相手の立場から戦術を考えた。
「さぁ、試合を決めにいこうか!」
八体の影武者を構築したアルムは魔黒閃の構築式を付与する。
(対ベレス用に編み出した九方向からの一斉砲撃。どんな魔法で対抗しても凌げる攻撃ではない、仮に全てを捌けたとしても追撃役として俺が控えている)
「俺の動きに合わせろっ、【影武者】!」
彼らは影の世界から地上へ同時に姿を現す。
「来たっ!」
(本体を探せェ、俺の見立てが正しければ対角線上に――――)
負傷した右脚を軸にフィールド全体を見回すベレス。
『影の人形、でしょうか⁉ ベレス選手を囲っています!」
『集中砲火で決めるつもりですね』
非現実的な光景に興奮する彼らを余所にアルムたちはベレスに指先を向け、構築式を展開した。
「【魔黒閃】」
交差する黒棘の隙間から見える九つの黒い光。
突き進む熱線は黒結晶を熔解しながらベレスに命中する――――はずだった。
「【空裂破断】」
ベレスは本体の方向を見つめながら空間を甲冑の爪先で縦断する。
針の如く細く鋭い一閃が矢のように放たれ、空間を滅しながらアルムの右腕を切断した。
「【黒器創成】」
アルムは右手に刃渡り50センチにも満たない短剣を片手に黒色の魔力を纏った。
「――――【引手】」
重力に従って左手を下ろした直後、熱を宿した突風がアルムの顔面をジリジリと焦がしながら右腕の甲冑が眼前に迫る。
「死ね……!」
淡々と発せられた殺意が込められた一言。
その言葉を聞いただけなら戦闘を楽しむベレスとは誰も思わない。
それだけ今の彼には普段の面影がなく、ただ目の前の相手を殺すための言動でしかなかった。
アルムは短剣の刃先を左手に添えるとブレード部分で彼の鉄拳を受け止める。
「くっ……!」
熱風と凄まじい衝撃が真正面から突き抜け、踏ん張りが利かなかった彼の両足は数歩後ろに引かされた。
「痛ェ、なんつう馬鹿力だ……!」
纏う面積を狭め、耐久力を上げようと短剣を選ぶアルムだがそれでも砕かれてしまう。
(炎の推進力もあるがそれ以上に膂力が数段増しているな……)
「【黒棘】」
接近戦が不利だと判断したアルムは戦闘で破壊された箇所を埋めるように展開し、再びフィールド全体を黒結晶で満たす。
「またあの時間差攻撃か……」
「ここからは隠れながら一気に攻め落とす!」
アルムは影に潜り込むと配置に気を配りながら影武者の構築に取り掛かった。
「アルムの奴、もう一度あの魔法を繰り出すようですがどう見ますか?」
「ベレスの魔法特性上、先ほどの攻撃を躱すもしくは防ぎ切るのは極めて難しい。迎撃の手段が無ければアルムの勝利は目前といったところだな」
「ベレスの魔法特性ってどういうものなんですか?」
テイバンとライザの掛け合いにマリアが疑問を抱く。
(触れた空間に干渉・消滅させる……それがベレスの魔法特性だ)
これまでの戦闘を振り返り、アルムたちはそう結論付けていた。
「この戦い方、俺の魔法特性を把握してるってのは嘘じゃねェみたいだな」
(仮にあの分身体が二体以上で攻められた場合、手中抹消で守り抜くことは不可能……だ?)
ベレスは人生最大の窮地に立たされてしまうが、偶然にも地割れに落とされたはずの白鬼の前腕が目に入る。
「たとえば引手、握り消した空間を埋めようとして周囲の空間が歪み、その副産物として引き寄せる力が発生する」
「不可視の歪みなら空間に干渉し、捻じ曲げて自在に方向を変えられる。手中抹消なら手の平の空間を消す際に魔法や物質収束し、滅することが可能なんだ」
「自身の周囲の空間に干渉し続けていれば死角に現れた俺を感知する事も容易い。あとは空間消滅時に発する引力を利用して高速移動、手中抹消で難なく防御。お前の魔法を見極めるのに相当の時間を掛けられたぜ……」
(では私の胸が斬り裂かれた攻撃は発生した引力の仕業という事ですね)
ライザたちの説明を聞き、カルティアの疑問は解消された。
「大体分かりました、でもそれだけ知っているならアルム君に話しても良かったんじゃないんですか?」
「話そうとは思ったんだけどな……」
丁寧に説明する彼らにマリアは苦言を呈すとテイバンはライザに視線を向ける。
「あいつなら戦いの中で一人で気付けると踏んでいたんだ。それに確証がない情報をアルムの耳に入れたくなかったからな」
「な、なるほど……」
「それで本音は何なんですか?」
理解できなくもない判断にマリアは口ごもるがミリエラは容赦なく切り込んだ。
「どの段階で気づくのか試したくなった、ってところだな!」
悪びれる様子もなく正直な思いを口視するライザに一同はため息を吐いた。
(お前が負けたら間接的に俺が悪くなっちまう。だから勝てよ、アルム……)
「ベレスの位置、両腕の甲冑、影武者の狙撃配置、全て問題ない」
ライザの期待に応えるように彼は目視確認と自己呼称で万全を期す。
「防御も回避も迎撃も今の俺には不可能……一か八か本体を叩くしかねェな」
ベレスは左腕の甲冑を装着し、相手の立場から戦術を考えた。
「さぁ、試合を決めにいこうか!」
八体の影武者を構築したアルムは魔黒閃の構築式を付与する。
(対ベレス用に編み出した九方向からの一斉砲撃。どんな魔法で対抗しても凌げる攻撃ではない、仮に全てを捌けたとしても追撃役として俺が控えている)
「俺の動きに合わせろっ、【影武者】!」
彼らは影の世界から地上へ同時に姿を現す。
「来たっ!」
(本体を探せェ、俺の見立てが正しければ対角線上に――――)
負傷した右脚を軸にフィールド全体を見回すベレス。
『影の人形、でしょうか⁉ ベレス選手を囲っています!」
『集中砲火で決めるつもりですね』
非現実的な光景に興奮する彼らを余所にアルムたちはベレスに指先を向け、構築式を展開した。
「【魔黒閃】」
交差する黒棘の隙間から見える九つの黒い光。
突き進む熱線は黒結晶を熔解しながらベレスに命中する――――はずだった。
「【空裂破断】」
ベレスは本体の方向を見つめながら空間を甲冑の爪先で縦断する。
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