137 / 162
魔導大会四日目
没収試合の危機
しおりを挟む
「……はっ、あっ?」
切断された衝撃で後ろに飛ばされるアルムは地面に斬り落とされた右腕と大量の血が噴き出る断面を交互に眺める。
(腕が斬られ、あ――――)
「あああああああああアアアアアアアアアァァ――――……‼)
数秒の遅れでやってくる焼かれるような激痛に彼は絹を張り裂くような悲痛の叫び声を上げる。
「アルムっ⁉」
「貴方、腕がっ……あの子の腕が……」
「マインちゃん見ちゃ駄目!」
ロイドは息子の名を叫び、レイナは顔を青ざめ、ラビスは女児の両手を覆った。
「嘘でしょ……⁉」
「なんてことだっ……」
「これは……不味い事になった」
ミリエラを息を呑み、テイバンは衝撃を受け、ライザは嫌な予感に頭を悩ませた。
「試合は一時中断ッ! ベレス選手はその場から動かないで下さい!」
「……ついに完成した」
呼び止める監督者だが当の本人は自身の右腕に夢中で聞く耳を持たない。
「ッ……ああっ……!」
「アルム選手、落ち着いてください! まずはゆっくりと深呼吸をっ!」
彼は斬られた断面を左手で抑えながら呼吸を整える。
(状況を整理しろォ……まずさっきの攻撃は本体の俺が腕を斬られたせいで影武者たちの攻撃も当たっていない)
ベレスを囲っていた黒棘は彼の数メートル手前まで溶解しており、もう一秒射撃が速ければ命中は確実だった。
「それに何なんだあの魔法は……!」
「隠し玉がお前だけの特権だと思うなよ」
「ベレス選手、わたしは動くなと伝えたはずですよ!」
「手を出さなきゃ良いんだろ、それに審判のくせに出しゃばり過ぎだ」
「なっ……⁉ わたしは――――」
「それで、何の用だよ……」」
ポタポタと汗を垂らしながら睨みつけるアルムに彼は右脚を庇いながら膝を屈した。
「ここで試合を降りるな、ただそれだけだ」
「…………」
淡々と告げるその言葉はただ戦いに身を置きたいように聞こえたが、投げ掛けられたアルムだけは僅かに異なる思いを感じ取る。
「何を言っているんですか⁉ どちらも重傷で試合を行っている場合ではありません、即刻中断です!」
「さっきからピーピー煩ェんだよ。俺はこいつに訊いてんだ、お前は黙ってろ」
静寂を破り介入する監督者を鋭い眼光で睨みつけるベレス。
「……黙りません! 私は審判としてこれ以上の戦闘を――――」
「何勝手なこと言ってんだ、端から試合を降りる気はねェよ」
「あ、アルム選手まで何を言っているんですか⁉」
『選手の彼らは試合続行を望んでいますが、この場合はどうなるのでしょう?』
『原則として審判の指示に従わなければなりませんが、双方の選手が反対している以上……彼の一存で決めるのは難しいでしょうね』
彼らの試合が多くの思惑や陰謀に晒されていると密かに感じていたエリアはそう言って答えを濁す。
「没収試合かと思ったらどうなっちまうんだよ!」
「良いぞ、納得するまで戦いまくれ!」
「なに無責任なこと言ってんだ! これ以上戦ったらどっちか死んじまうぞォ!」
全く読めない試合の流れに観客たちも続々と騒ぎ始めた。
「さっさとこの煩わしい声を止めさせるのだ。貴殿ならたった一言で試合を続けることが出来るだろう」
バリウスに尋ねられ、魔導大会連盟の会長は肩を震わす。
「バリウス殿、申し訳にくいのですが流石にあの負傷では試合を止めたほうが宜しいかと……」
自分の保身と選手の身を案じてそれと無く中断を促す。
しかしバリオスは黙ったまま見つめ続け、他の者も我関せずといった対応で時間が経つのを静かに待った。
「わたしも試合続行に反対します」
会長が首を縦に振る直前で主賓席に座るレイゼンは手を挙げた。
「貴国の優秀な選手が活躍する場を失うお気持ちは十分に理解できますが、これ以上の戦闘は命に関わります。どうか冷静なご判断をお願いします」
「……レイゼン理事長殿、貴殿の生徒に対する慈愛は理解できますぞ。しかし生徒本人が希望している事を大人の我々が奪ってしまうことは、果たして教育者の行いと呼べるのかな?」
「バリウス殿の仰る通りです。生徒の自主性を尊重すべきです!」
「どちらも聡明な選手だ。本当に危なくなったら自ら降参する!」
大義を得たバリウスの反論を皮切りに静観していた理事長や来賓した他国の王たちはレイゼンの意見に真っ向から反対する。
「レイゼン理事長殿は彼らの身を案じて言ってくれたのだ。非難されるようなことではないぞ」
ニチャリと気味の悪い笑みを浮かべながらレイゼンを擁護する姿勢を見せた。
「では会長殿、よろしく頼みますぞ」
「……承知しました。では試合を継続するよう伝えに行って参ります」
反対できる雰囲気ではないと諦めた彼は頭を下げ、主賓席から離脱する。
(開催国として絶対的強さを誇示したいバリウスと生徒のことは二の次で媚びる事しか能のない権力者。私情が無ければあそこまで反対はしなかったが……)
「下衆共め……」
レイゼンは小さな声量で心の声が漏れた。
切断された衝撃で後ろに飛ばされるアルムは地面に斬り落とされた右腕と大量の血が噴き出る断面を交互に眺める。
(腕が斬られ、あ――――)
「あああああああああアアアアアアアアアァァ――――……‼)
数秒の遅れでやってくる焼かれるような激痛に彼は絹を張り裂くような悲痛の叫び声を上げる。
「アルムっ⁉」
「貴方、腕がっ……あの子の腕が……」
「マインちゃん見ちゃ駄目!」
ロイドは息子の名を叫び、レイナは顔を青ざめ、ラビスは女児の両手を覆った。
「嘘でしょ……⁉」
「なんてことだっ……」
「これは……不味い事になった」
ミリエラを息を呑み、テイバンは衝撃を受け、ライザは嫌な予感に頭を悩ませた。
「試合は一時中断ッ! ベレス選手はその場から動かないで下さい!」
「……ついに完成した」
呼び止める監督者だが当の本人は自身の右腕に夢中で聞く耳を持たない。
「ッ……ああっ……!」
「アルム選手、落ち着いてください! まずはゆっくりと深呼吸をっ!」
彼は斬られた断面を左手で抑えながら呼吸を整える。
(状況を整理しろォ……まずさっきの攻撃は本体の俺が腕を斬られたせいで影武者たちの攻撃も当たっていない)
ベレスを囲っていた黒棘は彼の数メートル手前まで溶解しており、もう一秒射撃が速ければ命中は確実だった。
「それに何なんだあの魔法は……!」
「隠し玉がお前だけの特権だと思うなよ」
「ベレス選手、わたしは動くなと伝えたはずですよ!」
「手を出さなきゃ良いんだろ、それに審判のくせに出しゃばり過ぎだ」
「なっ……⁉ わたしは――――」
「それで、何の用だよ……」」
ポタポタと汗を垂らしながら睨みつけるアルムに彼は右脚を庇いながら膝を屈した。
「ここで試合を降りるな、ただそれだけだ」
「…………」
淡々と告げるその言葉はただ戦いに身を置きたいように聞こえたが、投げ掛けられたアルムだけは僅かに異なる思いを感じ取る。
「何を言っているんですか⁉ どちらも重傷で試合を行っている場合ではありません、即刻中断です!」
「さっきからピーピー煩ェんだよ。俺はこいつに訊いてんだ、お前は黙ってろ」
静寂を破り介入する監督者を鋭い眼光で睨みつけるベレス。
「……黙りません! 私は審判としてこれ以上の戦闘を――――」
「何勝手なこと言ってんだ、端から試合を降りる気はねェよ」
「あ、アルム選手まで何を言っているんですか⁉」
『選手の彼らは試合続行を望んでいますが、この場合はどうなるのでしょう?』
『原則として審判の指示に従わなければなりませんが、双方の選手が反対している以上……彼の一存で決めるのは難しいでしょうね』
彼らの試合が多くの思惑や陰謀に晒されていると密かに感じていたエリアはそう言って答えを濁す。
「没収試合かと思ったらどうなっちまうんだよ!」
「良いぞ、納得するまで戦いまくれ!」
「なに無責任なこと言ってんだ! これ以上戦ったらどっちか死んじまうぞォ!」
全く読めない試合の流れに観客たちも続々と騒ぎ始めた。
「さっさとこの煩わしい声を止めさせるのだ。貴殿ならたった一言で試合を続けることが出来るだろう」
バリウスに尋ねられ、魔導大会連盟の会長は肩を震わす。
「バリウス殿、申し訳にくいのですが流石にあの負傷では試合を止めたほうが宜しいかと……」
自分の保身と選手の身を案じてそれと無く中断を促す。
しかしバリオスは黙ったまま見つめ続け、他の者も我関せずといった対応で時間が経つのを静かに待った。
「わたしも試合続行に反対します」
会長が首を縦に振る直前で主賓席に座るレイゼンは手を挙げた。
「貴国の優秀な選手が活躍する場を失うお気持ちは十分に理解できますが、これ以上の戦闘は命に関わります。どうか冷静なご判断をお願いします」
「……レイゼン理事長殿、貴殿の生徒に対する慈愛は理解できますぞ。しかし生徒本人が希望している事を大人の我々が奪ってしまうことは、果たして教育者の行いと呼べるのかな?」
「バリウス殿の仰る通りです。生徒の自主性を尊重すべきです!」
「どちらも聡明な選手だ。本当に危なくなったら自ら降参する!」
大義を得たバリウスの反論を皮切りに静観していた理事長や来賓した他国の王たちはレイゼンの意見に真っ向から反対する。
「レイゼン理事長殿は彼らの身を案じて言ってくれたのだ。非難されるようなことではないぞ」
ニチャリと気味の悪い笑みを浮かべながらレイゼンを擁護する姿勢を見せた。
「では会長殿、よろしく頼みますぞ」
「……承知しました。では試合を継続するよう伝えに行って参ります」
反対できる雰囲気ではないと諦めた彼は頭を下げ、主賓席から離脱する。
(開催国として絶対的強さを誇示したいバリウスと生徒のことは二の次で媚びる事しか能のない権力者。私情が無ければあそこまで反対はしなかったが……)
「下衆共め……」
レイゼンは小さな声量で心の声が漏れた。
2
あなたにおすすめの小説
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
クラス全員が転生して俺と彼女だけが残された件
兵藤晴佳
ファンタジー
冬休みを目前にした田舎の高校に転校してきた美少女・綾見(あやみ)沙羅(さら)は、実は異世界から転生したお姫様だった!
異世界転生アプリでクラス全員をスマホの向こうに送り込もうとするが、ただひとり、抵抗した者がいた。
平凡に、平穏に暮らしたいだけの優等生、八十島(やそしま)栄(さかえ)。
そんな栄に惚れ込んだ沙羅は、クラス全員の魂を賭けた勝負を挑んでくる。
モブを操って転生メンバーを帰還に向けて誘導してみせろというのだ。
失敗すれば、品行方正な魂の抜け殻だけが現実世界に残される。
勝負を受ける栄だったが、沙羅は他クラスの男子の注目と、女子の嫉妬の的になる。
気になる沙羅を男子の誘惑と女子の攻撃から守り抜き、クラスの仲間を連れ戻せるか、栄!
異世界では地味な俺が、なぜか神々に最愛されて無双してる件
fuwamofu
ファンタジー
平凡な高校生・桐生ユウは、女神の手違いで異世界に転生した。
チートもスキルも貰えず、冒険者登録すらままならない落ちこぼれ……のはずだった。
しかし周囲の異常な好感度、意味不明な強運、そして隠された神格スキルによって、ユウは「無自覚に全能」な存在へと覚醒していく。
気づけば女神も姫騎士も魔王娘も彼に夢中。誤解と崇拝が加速する中、ユウの“地味な日常”は世界を揺るがす伝説になっていく。
笑いあり、胸キュンあり、ざまぁありの最強(なのに本人だけ気づいてない)異世界ファンタジー開幕!
暗殺者から始まる異世界満喫生活
暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。
流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。
しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。
同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。
ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。
新たな生活は異世界を満喫したい。
異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる
家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。
召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。
多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。
しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。
何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。
彼はその日から探索者――シーカーを目指した。
そして遂に訪れた覚醒の日。
「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」
スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。
「幸運の強化って……」
幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。
そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。
そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。
だが彼は知らない。
ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。
しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。
これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。
近未来の魔法世界に転生して最強ハーレムを作る
こうたろ
ファンタジー
トラックの直撃で死亡。「君は選ばれた。異世界へ行く資格を得たのだ」とか言われてとりあえず転生させられたクルト。公爵家だけど四男だし魔術があるけど魔力量判定Eでほぼほぼ使い物にならないし……魔物1体倒すのも一苦労。俺の転生後生活、大丈夫か?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる