死神と恐れられた俺、転生したら平和な時代だったので自由気ままな人生を享受する

オカさん

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魔導大会四日目

没収試合の危機

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「……はっ、あっ?」

 切断された衝撃で後ろに飛ばされるアルムは地面に斬り落とされた右腕と大量の血が噴き出る断面を交互に眺める。

(腕が斬られ、あ――――)
「あああああああああアアアアアアアアアァァ――――……‼)

 数秒の遅れでやってくる焼かれるような激痛に彼は絹を張り裂くような悲痛の叫び声を上げる。

「アルムっ⁉」
「貴方、腕がっ……あの子の腕が……」
「マインちゃん見ちゃ駄目!」

 ロイドは息子の名を叫び、レイナは顔を青ざめ、ラビスは女児の両手を覆った。

「嘘でしょ……⁉」
「なんてことだっ……」
「これは……不味い事になった」

 ミリエラを息を呑み、テイバンは衝撃を受け、ライザは嫌な予感に頭を悩ませた。

「試合は一時中断ッ! ベレス選手はその場から動かないで下さい!」

「……ついに完成した」

 呼び止める監督者だが当の本人は自身の右腕に夢中で聞く耳を持たない。 

「ッ……ああっ……!」

「アルム選手、落ち着いてください! まずはゆっくりと深呼吸をっ!」

 彼は斬られた断面を左手で抑えながら呼吸を整える。

(状況を整理しろォ……まずさっきの攻撃は本体の俺が腕を斬られたせいで影武者シャルトリアたちの攻撃も当たっていない)

 ベレスを囲っていた黒棘は彼の数メートル手前まで溶解しており、もう一秒射撃が速ければ命中は確実だった。

「それに何なんだあの魔法は……!」
「隠し玉がお前だけの特権だと思うなよ」

「ベレス選手、わたしは動くなと伝えたはずですよ!」

「手を出さなきゃ良いんだろ、それに審判のくせに出しゃばり過ぎだ」

「なっ……⁉ わたしは――――」

「それで、何の用だよ……」」

 ポタポタと汗を垂らしながら睨みつけるアルムに彼は右脚を庇いながら膝を屈した。

「ここで試合ゲームを降りるな、ただそれだけだ」

「…………」

 淡々と告げるその言葉はただ戦いに身を置きたいように聞こえたが、投げ掛けられたアルムだけは僅かに異なる思いを感じ取る。

「何を言っているんですか⁉ どちらも重傷で試合を行っている場合ではありません、即刻中断です!」

「さっきからピーピーうるせェんだよ。俺はこいつに訊いてんだ、お前は黙ってろ」

 静寂を破り介入する監督者を鋭い眼光で睨みつけるベレス。

「……黙りません! 私は審判としてこれ以上の戦闘を――――」
「何勝手なこと言ってんだ、端から試合ゲームを降りる気はねェよ」

「あ、アルム選手まで何を言っているんですか⁉」

『選手の彼らは試合続行を望んでいますが、この場合はどうなるのでしょう?』

『原則として審判の指示に従わなければなりませんが、双方の選手が反対している以上……彼の一存で決めるのは難しいでしょうね』

 彼らの試合が多くの思惑や陰謀に晒されていると密かに感じていたエリアはそう言って答えを濁す。

「没収試合かと思ったらどうなっちまうんだよ!」
「良いぞ、納得するまで戦いまくれ!」
「なに無責任なこと言ってんだ! これ以上戦ったらどっちか死んじまうぞォ!」

 全く読めない試合の流れに観客たちも続々と騒ぎ始めた。

「さっさとこの煩わしい声を止めさせるのだ。貴殿ならたった一言で試合を続けることが出来るだろう」

 バリウスに尋ねられ、魔導大会連盟の会長は肩を震わす。

「バリウス殿、申し訳にくいのですが流石にあの負傷では試合を止めたほうが宜しいかと……」

 自分の保身と選手の身を案じてそれと無く中断を促す。
 しかしバリオスは黙ったまま見つめ続け、他の者も我関せずといった対応で時間が経つのを静かに待った。

「わたしも試合続行に反対します」

 会長が首を縦に振る直前で主賓席に座るレイゼンは手を挙げた。

「貴国の優秀な選手が活躍する場を失うお気持ちは十分に理解できますが、これ以上の戦闘は命に関わります。どうか冷静なご判断をお願いします」

「……レイゼン理事長殿、貴殿の生徒に対する慈愛は理解できますぞ。しかし生徒本人が希望している事を大人の我々が奪ってしまうことは、果たして教育者の行いと呼べるのかな?」

「バリウス殿の仰る通りです。生徒の自主性を尊重すべきです!」
「どちらも聡明な選手だ。本当に危なくなったら自ら降参する!」

 大義を得たバリウスの反論を皮切りに静観していた理事長や来賓した他国の王たちはレイゼンの意見に真っ向から反対する。

「レイゼン理事長殿は彼らの身を案じて言ってくれたのだ。非難されるようなことではないぞ」

 ニチャリと気味の悪い笑みを浮かべながらレイゼンを擁護する姿勢を見せた。

「では会長殿、よろしく頼みますぞ」

「……承知しました。では試合を継続するよう伝えに行って参ります」

 反対できる雰囲気ではないと諦めた彼は頭を下げ、主賓席から離脱する。

(開催国として絶対的強さを誇示したいバリウスと生徒のことは二の次で媚びる事しか能のない権力者。私情が無ければあそこまで反対はしなかったが……)

下衆げす共め……」

 レイゼンは小さな声量で心の声が漏れた。
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