死神と恐れられた俺、転生したら平和な時代だったので自由気ままな人生を享受する

オカさん

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魔導大会四日目

殺し合い

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 審判から正式に試合続行の判断が下され、アルムの止血や斬り落とされた腕の回収のため5分のインターバルが設けられた。

「まさか小休憩を挟めるだけとか何考えてんだ連盟はよっ!」

「お気持ちは分かりますが少し落ち着いてください」

 苛立ちを見せるライザにカルティアは注意する。

「はっ、お前だって望んでない展開じゃないだろ?」

「……⁉」

「ライザさんっ!」

「……悪い、すこし頭冷やしてくる」

 ライザは応援席から立ち上がり会場のどこかに消えていった。

「ありがとうございますテイバン。しかしライザ君の言う通りなのかもしれませんね」

「カルティア様が気に病む必要はありません。全てはアルムの意思によるものなんですから!」

 フォローするテイバンだが彼女の曇った表情を拭うことは出来ない。

(没収試合にならなかったのは不幸中の幸いだが)

「そんな怪我を負ってまで応援なんてできねェよ……」  

 テイバンは痛々しい彼の姿を見て前向きな気持ちにはなれなかった。

「アルム選手、止血は出来ましたがやはりここは――――」
「ありがとうございました」

 監督者の助言を感謝の言葉で遮り、アルムは歩み始める。
 右肩から下をごっそり斬り落とされたせいで左右のバランス感覚が狂い、お世辞にもしっかりとした足取りとは言えない。
 端から見ればひどく滑稽に見えるかもしれない、しかしそれを笑う者は誰一人としていなかった。

「あんな状態で戦いを続けるとかアルムもベレスもどうかしている」

「あんたがそういうなんて珍しいわね」

「タリオナっ! 寝てなくて平気なのか?」

 観客席の渡り廊下から独り言を呟くライオス。
 その隣には病室で療養していたはずの彼女が槍を片手に佇んでおり、魔法でこの会場まで来たことが伺えた。

「怪我は治療したから問題は無いわ。それにしても戦闘狂のあんたにしてはらしくないわね」

「だれが戦闘狂だ! 俺は全力で、かつ軽傷で済む戦いが好きなだけだ。腕を斬られたとか脚を貫かれるとか真っ平ごめんだね! そんなのは――――」
「『殺し合いの時だけで十分』、でしょ」

「……ああっ!」

 言い当てられたことは面白くないが同時に否定はしない。
 戦争孤児だった彼らにとって殺し合いは身近な存在であり、最も忌み嫌うもの。

「それは同感、

 タリオナは丸眼鏡をくいっと挙げ、彼らの戦いを見届ける準備をした。

「五分経過しました。双方、位置について下さい」

 審判は気を取り直して職務を全うする。

「ここからは私も勝敗が決するまで介入は致しませんので、存分に戦い下さい」

 本意ではない、しかし選手である彼らがそれを所望しているのだ。

(私が邪魔ノイズと言うのなら、潔く身を引きましょう……)

「双方、恥じない戦いを……戦闘開始!」

「【黒器創成くろきそうせい】!」「【火炎付与エンチャント・フレイム】!」

 再戦の合図が出されると飛び掛かる勢いで地面を蹴った。
 アルムは魔力を纏わせた槍を突き立てベレスは炎を甲冑に纏わせた拳を突き出す。

 ガァンッ!

 結晶と歯牙が軋み、轟音がフィールド中に響き渡る。
 拮抗すること一瞬、互いの思考がリンクするように押し合いを中断し、二撃三撃と繰り出した。

 アルムは突きから左半身を後ろに反らして一回転。
 遠心力で威力を高めた横振りでベレスの首を捉える。

「【手中抹消インディレータ】」

 首に触れる直前で右手を間に挟んで防御、消されまいと魔力を一層注ぐアルム。

 しかしベレスの本命は防御ではなかった。

「――――【空裂破断くうれつはだん】」

 左手の爪先を横断し、鋭い一閃を空間に描く。

(上へ、いやそれだと間に合わない……)

「【黒棘ブラックパレス】!」

 針状の黒結晶がアルムの足元を中心に無差別に生成され、ベレスもまとめて巻き込んで吹っ飛ばす。

 指向性が逸らされた一閃は明後日の方向に向かって放たれるとフィールドを覆う結界に激突、大きな裂け目を作り出した。

「「キャアァァ⁉」」

『結界魔法師20人で形成した完全なる障壁パーフェクト・シェルに裂け目ががァ⁉』

『会場の皆さま、すぐに修復しますので落ち着いてください』

 エリアはすぐに混乱を収める。
 激突した方向は観客席に当たる位置では無かったため怪我人はいない。

「狙った攻撃ですらないのにこの威力⁉」

「怖いよぉ、お姉ちゃん……」

 テイバンは戦慄を覚え、マインはギュッとラビスに抱き着いた。

「大丈夫、大丈夫だよ……!」

「あんな魔法を撃って大丈夫なのか⁉ もしアルムが食らってたら……」

 彼女は優しく慰め、ロイドはそんな息子の姿を容易に想像してしまった。

「やべェ、マジであの魔法だけは対処しねェと……」

(展開されたら回避は不可能、さっきのは奇跡みたいなもんだ。次は確実に……)

 死が差し迫った彼の鼓動は早まり、包帯で塞いだはずの断面から血が染み出す。

「最低だけど、このやり方で攻めるか……!」

 アルムは決死の作戦を思い付き、影の中に沈んで行った。
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