死神と恐れられた俺、転生したら平和な時代だったので自由気ままな人生を享受する

オカさん

文字の大きさ
139 / 162
魔導大会四日目

戦いの果て

しおりを挟む
「明らかにキレが増してる」

 一方、ベレスは自身の両手を見つめながら確かな成長を実感していた。

(消滅させたほっそい空間を干渉で無理やり押し出す……遠距離攻撃に対応するため編み出した魔法)

 その発想自体はこの魔導大会が開催される前からあった。
 しかし空間に働きかけることが出来るのは両手とその五指でしか適わず、指先以上に鋭く尖った部位は存在しない。

「太くても押し出せるがどうしたって射程が短くなっちまう。ずっと諦めてた、俺が求めていた魔法に到達することはできないってな……」

 過去の葛藤を語るベレス、視線は足元の影に向けながら。

「でもお前と出会えたから、全力のお前を叩き潰したかったから俺は白鬼の前腕これを使おうと持って来たんだぜ……」

 ベルモンド王国の国宝として収められた白鬼の前腕フロム・ガントレッド

 付与された魔法【人体接続ディ・ネクト】の魔法特性は『所持者の肉体との同化』

 即ち、外付けされた甲冑がベレスの血となり肉となり――――両手となるのだ。

「ありがとうアルム。俺を更なる高みへ登らせてくれて……」

 直後、足元の影が揺れ動くと正面から指先を突き出したアルムが出現する。

「そのままあの世まで登って良いぜェ!」

 撃ち出される魔黒閃ビルスター、ベレスは右手の平を正面――――そして背後に左手の平を向け、影武者シャルトリアの熱線も難なく消失させる。

あめェよ、今の俺にそんな小細工は通用しない」 

 見破られてしまった策に呆然とする彼に対し、ベレスは拳を握り締めた。

「――――甘いのはお前だっ!」

 呆然とした様子から一転、再び影が揺れると日本の長槍が浮き上がって来る。

影武者シャルトリアがひとつの動作しか後追いトレース出来ないとは言ってない)

 アルムは魔黒閃の放つ影武者を作る前に黒器創成で長槍を生成する影武者を用意していたのだ。
 あとは後追い時間を設定、影の中から飛び出す勢いを利用するだけ。

「お前がすぐに詰めてくることは分かっていたからな、攻撃時間差の計算くらい簡単だった!」

 勝ちを確信し、安堵の表情を浮かべるアルム。
 二本の槍がベレスの腹を貫こうとした瞬間、空いていた左手で穂先を抉り消す。

「……⁉」

「片手だったら危なかったなァ!」

 膨れ上がった炎ともに甲冑がアルムの左頬を強く穿つ。

「ぐはァ‼」

 掠った程度で済まない骨を砕くような衝撃が脳を揺らす。
 頬の皮膚と筋肉はすぐさま焼かれ、灼熱の炎は口内すら焼け跡を残した。

(がっ……ああっ……だから)
最低ざいでい、なんだよぉ!」

 意識を刈り取られる直前で踏ん張り、アルムは右手に斧を作り出す。

「おおぉらあァ‼」

 右脚から血を噴き出すことを気にも留めず、ありったけの力を拳に乗せるベレス。

 ドゴォン!

 人の身体を殴り飛ばしたとは思えない重々しい音の観客席まで波紋のように広がる。

 今度こそ意識を刈り取られたアルムは両足が宙に浮かぶ。
 右手に握った斧を掴んだまま――――。 

 ザシュ……!

 ベレスの左脇腹に重い刃が通過し、不意の一撃に両手両膝を地面に着ける。

「あ、あ……はぁ?」

 貫かれた右足を遥かに超える量の出血。
 ベレスは斬り裂かれた傷口に触れ、ようやく事態の深刻さを理解する。

「ふははは……そうか、これは確かに最低だ」

「――――――――ごほッ、ごほォ……⁉」

 幸運にも喉が焼かれたせいで上手く呼吸が出来ずにすぐに意識を取り戻す。

「あァ⁉ ああァ! 気持ちわりィ……!」 

 しかし揺さぶられた脳震盪は収まっておらず視界は酷く歪み、激痛とめまいが彼を苦しめた。

「気分最低だろっアルム!」

 おぼつかない足取りで尋ねるベレス。

「自傷覚悟の相討ち作戦……マジで効いたよ……」

 血を流し過ぎた彼は意識が朦朧として今にも倒れそうだった。

「多分、これ以上やったら本当に逝きそうだけど……お前を殺せるなら惜しくないって本気で思ってんだ」

「はァ、はァ、はァ……」

 意識はあり、白目を向いたまま地に伏せるアルム。
 今の彼の耳には一体どれだけの言葉が聞こえているのだろうか。

「アルム=ライタード! お前はどうすんだァ!」

「……ははっ、なんも聞こえねェ。けど言いたいことは分かるぜ、ベレス=ダーヴィネータ」

 ベレス以上に不安定な足取り、しかし彼は立ち上がり戦闘の意思を示す。

「ほんっと最高だよアルム……! 今日この日を、俺たちの命日に刻もうっ!」  

 両者は駆け出し、拳と剣を重ねる。

「あんな状態でよく戦えるわね、あのふたり」

 タリオナは呆れを通り越し、恐怖に近いもの懐いた。

 動くごとにドクドクと流れ落ちる血液
 片腕の左右差だけでなく平衡感覚すら機能していない脳

 しかし彼らの動きは一層洗練されているようにすら見える。

「アルム……」

 ラビスは想い人の変わり果て、痛ましい姿に静かに涙を流した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

クラス全員が転生して俺と彼女だけが残された件

兵藤晴佳
ファンタジー
 冬休みを目前にした田舎の高校に転校してきた美少女・綾見(あやみ)沙羅(さら)は、実は異世界から転生したお姫様だった!  異世界転生アプリでクラス全員をスマホの向こうに送り込もうとするが、ただひとり、抵抗した者がいた。  平凡に、平穏に暮らしたいだけの優等生、八十島(やそしま)栄(さかえ)。  そんな栄に惚れ込んだ沙羅は、クラス全員の魂を賭けた勝負を挑んでくる。  モブを操って転生メンバーを帰還に向けて誘導してみせろというのだ。  失敗すれば、品行方正な魂の抜け殻だけが現実世界に残される。  勝負を受ける栄だったが、沙羅は他クラスの男子の注目と、女子の嫉妬の的になる。    気になる沙羅を男子の誘惑と女子の攻撃から守り抜き、クラスの仲間を連れ戻せるか、栄!

異世界では地味な俺が、なぜか神々に最愛されて無双してる件

fuwamofu
ファンタジー
平凡な高校生・桐生ユウは、女神の手違いで異世界に転生した。 チートもスキルも貰えず、冒険者登録すらままならない落ちこぼれ……のはずだった。 しかし周囲の異常な好感度、意味不明な強運、そして隠された神格スキルによって、ユウは「無自覚に全能」な存在へと覚醒していく。 気づけば女神も姫騎士も魔王娘も彼に夢中。誤解と崇拝が加速する中、ユウの“地味な日常”は世界を揺るがす伝説になっていく。 笑いあり、胸キュンあり、ざまぁありの最強(なのに本人だけ気づいてない)異世界ファンタジー開幕!

暗殺者から始まる異世界満喫生活

暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。 流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。 しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。 同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。 ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。 新たな生活は異世界を満喫したい。

異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる

家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。 召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。 多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。 しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。 何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~

榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。 彼はその日から探索者――シーカーを目指した。 そして遂に訪れた覚醒の日。 「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」 スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。 「幸運の強化って……」 幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。 そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。 そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。 だが彼は知らない。 ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。 しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。 これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。

近未来の魔法世界に転生して最強ハーレムを作る

こうたろ
ファンタジー
トラックの直撃で死亡。「君は選ばれた。異世界へ行く資格を得たのだ」とか言われてとりあえず転生させられたクルト。公爵家だけど四男だし魔術があるけど魔力量判定Eでほぼほぼ使い物にならないし……魔物1体倒すのも一苦労。俺の転生後生活、大丈夫か?

処理中です...