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魔導大会五日目
終息を迎える魔導大会
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決勝戦が始まり岩魔法で巨体を隠しながら接近戦に持ち込もうとするライザ。
万全ではないベレスにとって身体能力に大きな開きがあったため合理的な判断を下し、白鬼の前腕を身に付けた彼は空裂破断で大岩を一蹴。
試合開始から五分が経過した現在、お互いに膠着状態が続いた。
「チッ! 一か八か突っ込んでやろうか……」
膠着状態とは言っても障害物に身を潜ませるライザにとっては不利な状況。
だからと言って空裂破断が発動されれば回避はアルムでも不可能、勝負を投げ出さず打開策を考える。
「【空裂破断】」
対するベレスは視界内に捉えたそばから爪先で空間に線を描き、次の瞬間には大岩を一刀両断。
(去年の決勝戦のほうがまだ楽しかったな……)
つまらなそうに淡々と、だが確実に彼の状況を悪化させていった。
「ほっほっ! ベレスの奴め、ようやく王者としての自覚が芽生えたようだ」
ここまで来れば無難な勝利で十分と、主賓席で笑みを浮かべるバリウス。
「ライザと戦えるものこれが最後だ、相手の全てを出させた上で勝ちてぇ……」
(けど駄目だ。今年だけはアルムの壁として一位を獲られるわけにはいかない)
否、合理的など二の次でベレスの判断基準はアルムが最優先であった。
「やべェ、どれだけ考えても特攻以外に戦い方がねェ……」
(そもそも俺の強みは近接戦、中距離以降じゃ岩魔法の性能も一気に落ちる)
「大分厳しそうだな、ライザ先輩」
「あんな風に離れられて不可避と即死級の魔法を連発されれば、ほとんどの人間はどうしようもない。逆になんで貴様は戦えたんだ?」
「戦えたなんて大袈裟、思い付きの小細工で何とか食らい付いていただけだ」
(影移動のような接近手段、もしくは影武者のような攪乱手段があれば可能性も……)
「お兄ちゃん、ライザオジサン、勝てるよね……?」
お祭りですっかり仲良くなったマインは心配そうな面持ちでアルムに歩み寄る。
「ああ、あの人なら大丈夫だよ」
アルムは勝敗について触れようとはせず妹を膝上に乗せた。
「ハァ――――もういい、とりあえず特攻だっ!」
意を決した彼は姿を現すと岩壁を蹴ると同時に岩柱が隆起。
矢のように弾き飛び、ベレスに向かって一直線に突っ込んでいく。
「あの脳筋、気でも狂ったか……」
空間干渉で感知していたベレスは即座に反応し、爪先を縦断。
(ベレスとの距離40、30、20……空裂破断の展開時間まで残り――――)
「片腕は覚悟しろ……」「今だっ!」
魔法展開の直前、ライザは下半身を折り畳み足裏を地面と平行にさせる。
「もう一回押し出せェ!」
そこから再び岩柱が隆起し、横方向の勢いとともに斜め上に大きく跳躍。
一瞬遅れて空間が裂かれ、隆起した岩柱が跡形もなく消し飛ばされた。
「危なっ⁉ よく避けた、けど……」
彼の度胸に感心するアルムだがお世辞でも打開したとは言えない。
「消される場所が変わっただけじゃねェか」
足場を失ったライザに爪先を向ける――――が、岩の影が彼の視界を覆った。
「【手中抹消】」
岩柱が視界を埋め尽くすほどに押し寄せられ、ベレスは左腕を突き出し身を守る。
『ライザ選手っ! 跳躍寸前で魔法を発動させ、ベレス選手の追撃を見事に振り切る!」
「これなら攻撃させずに近付けるはずだ!」
「いや、たとえ正確な位置は特定出来ずとも空中じゃまともに移動は出来ないんだ。そのまま空裂破断で終わりじゃないのか……⁉」
期待に胸を膨らませるスベンだがセロブロは冷静に戦況を分析する。
「【岩塊の巨腕】!」
ライザは防御姿勢も取らないまま、右腕に硬化させた岩の装甲を纏った。
(正確な位置が特定出来なきゃ空裂破断は使えねェだろっ!)
「仕方ねェな、拳で決めてやるよ……最大出力」
ベレスは岩で囲まれたこの場で迎え撃とうと嬉々とした様子で右手に魔力を込める。
「殺傷能力が高すぎるが故に正確な位置が分からなくちゃ使えない」
「相手を死に至らしめてしまうから……」
そうなれば競技規定により一対一で獲得したポイントを失い、ベレスの判断基準に最も触れることになる。
アルムは彼らの読み合いを理解し、ラビスは戦慄した。
「だが近接戦で大きなハンデあるのは百も承知、どう反撃に出るつもりだ……」
アルムは彼らの戦い、そして契約の行方を見届けようと左目を光らせた。
「ここからが勝負だァ!」
そう言って彼はベレスの頭上に目掛けて右腕を振り下ろす。
バガンッ!
全身の力と全体重を乗せた拳は一瞬で岩を砕き、ベレスの眼前まで差し迫る。
「うおォ⁉」
直後、振り下ろされたはずの右腕が弾かれたように軌道を変えられてしまう。
「不可視の歪みか……⁉」
曲げられた軌道を修正できず渾身の一撃が地面に叩きつけられ、フィールド全体に地割れが生じた。
「最後の戦いが殴り合いで終われて良かったよ」
そう告げる彼は膝を屈したライザの顔面に狙いを定める。
完全な虚を突かれ、回避も防御も間に合わない体勢。
誰もがそう思った――――ただ一人の男を除いて。
「……まだ、終わってねェんだよ! 【硬化】‼」
ライザは驚きや屈辱、全ての感情を文字通り歯で噛み締め、顔の皮膚を岩の表面のような質感へ変質させる。
(お前と戦ったのはたったの二回、でもずっと見て来たんだ……!
仲間や後輩が一方的、一瞬の間に、そしてあと一歩届かずにやられる姿をッ!
ここまで辿り着いたのは俺の力じゃねェ、皆の力だァ!)
「だから……――――死んでも耐えてやる‼」
ギチィッ!
人間の皮膚では立てられないだろう音を立て、硬度を増し続けるライザ。
それは奇しくも最高硬度と名高いエルベント・タイガーの歯牙に並ぶほどだった。
(アルム、テイバン――――俺は……!)
「最初のお披露目がお前に使えて良かったよぉ!」
ベレスは歓喜の表情を浮かべると自身が描いた空間軌道に乗せて最大出力の引手を発動、ライザの目の前から拳が消失する。
(不可視の歪みで軌道を逸らしても今の俺じゃ近接で勝ち目はほぼゼロ。
だったら弱点を得意で補えばいいだけの話。
不慣れな炎を外から誘導するように、貧弱な肉体を圧倒的な力で導くんだ!)
最大出力の不可視の歪みと最大出力の引手を掛け合わせた融合魔法
「――――【万力の一撃】」
拳が閃光の如く走り、到達するまでの時間が存在しないままライザの顔面を穿つ。
ドガッ‼
常識外れの衝撃に巨体が浮き、地面を滑るようにはるか遠くに吹き飛ばされた。
「が――――あ……」
顎は砕かれ、皮膚と筋繊維の境界が無くなり、白目を向いたまま意識を失う。
「…………」
アルムはそっと体勢を横に向き、妹の視界からフィールドを外させた。
「……ライザ選手戦闘不能ッ! 勝者はベレス=ダーヴィネータ選手!」
『一対一決勝戦を制したのはベルモンド学園四年生ベレス=ダーヴィネータ選手! これで記念すべき四連覇達成ですッ!』
「お前が最強だァ!」「流石は魔導大会開催国っ!」「ベレスこそ至高にして最強!」
「「「べレスッ! ベレスッ! ベレスッ!」」」
サイベルの勝利宣言とともに会場中が大きく湧き上がり、優勝者コールまで起こってしまう始末。
「ほっほっほっ! 我が国は最も偉大で、最も強いのだァ!」
他国の重役がいるにもかかわらず手に入れた勝利に興奮を隠せないバリウス。
「ライザさん……」「くそォ!」「今年こそいけると思ったのに……!」
対照的にエンドリアス学園の応援席では悔しさを滲ませていた。
「お兄ちゃん、ライザオジサンは勝ったの?」
この騒ぎを理解できないマインは兄に尋ねる。
「さぁ、お兄ちゃん腹減ったからあっちで一緒に食べよう」
「うん! お姉ちゃんも一緒に行こっ!」
「う、うん!」
アルムは妹の意識を逸らせることに成功し、彼女も連れて一緒に席から立ち上がった。
(子供とはいえ騒いでいい雰囲気じゃない、気持ちの整理がつくまでは離れたほうが良さそうだな)
アルムは階段を上りながら入口に向かっていくベレスの後ろ姿を眺める。
「……今のベレスにも勝てる気がしねぇな」
彼は試合前の発言を撤回した。
万全ではないベレスにとって身体能力に大きな開きがあったため合理的な判断を下し、白鬼の前腕を身に付けた彼は空裂破断で大岩を一蹴。
試合開始から五分が経過した現在、お互いに膠着状態が続いた。
「チッ! 一か八か突っ込んでやろうか……」
膠着状態とは言っても障害物に身を潜ませるライザにとっては不利な状況。
だからと言って空裂破断が発動されれば回避はアルムでも不可能、勝負を投げ出さず打開策を考える。
「【空裂破断】」
対するベレスは視界内に捉えたそばから爪先で空間に線を描き、次の瞬間には大岩を一刀両断。
(去年の決勝戦のほうがまだ楽しかったな……)
つまらなそうに淡々と、だが確実に彼の状況を悪化させていった。
「ほっほっ! ベレスの奴め、ようやく王者としての自覚が芽生えたようだ」
ここまで来れば無難な勝利で十分と、主賓席で笑みを浮かべるバリウス。
「ライザと戦えるものこれが最後だ、相手の全てを出させた上で勝ちてぇ……」
(けど駄目だ。今年だけはアルムの壁として一位を獲られるわけにはいかない)
否、合理的など二の次でベレスの判断基準はアルムが最優先であった。
「やべェ、どれだけ考えても特攻以外に戦い方がねェ……」
(そもそも俺の強みは近接戦、中距離以降じゃ岩魔法の性能も一気に落ちる)
「大分厳しそうだな、ライザ先輩」
「あんな風に離れられて不可避と即死級の魔法を連発されれば、ほとんどの人間はどうしようもない。逆になんで貴様は戦えたんだ?」
「戦えたなんて大袈裟、思い付きの小細工で何とか食らい付いていただけだ」
(影移動のような接近手段、もしくは影武者のような攪乱手段があれば可能性も……)
「お兄ちゃん、ライザオジサン、勝てるよね……?」
お祭りですっかり仲良くなったマインは心配そうな面持ちでアルムに歩み寄る。
「ああ、あの人なら大丈夫だよ」
アルムは勝敗について触れようとはせず妹を膝上に乗せた。
「ハァ――――もういい、とりあえず特攻だっ!」
意を決した彼は姿を現すと岩壁を蹴ると同時に岩柱が隆起。
矢のように弾き飛び、ベレスに向かって一直線に突っ込んでいく。
「あの脳筋、気でも狂ったか……」
空間干渉で感知していたベレスは即座に反応し、爪先を縦断。
(ベレスとの距離40、30、20……空裂破断の展開時間まで残り――――)
「片腕は覚悟しろ……」「今だっ!」
魔法展開の直前、ライザは下半身を折り畳み足裏を地面と平行にさせる。
「もう一回押し出せェ!」
そこから再び岩柱が隆起し、横方向の勢いとともに斜め上に大きく跳躍。
一瞬遅れて空間が裂かれ、隆起した岩柱が跡形もなく消し飛ばされた。
「危なっ⁉ よく避けた、けど……」
彼の度胸に感心するアルムだがお世辞でも打開したとは言えない。
「消される場所が変わっただけじゃねェか」
足場を失ったライザに爪先を向ける――――が、岩の影が彼の視界を覆った。
「【手中抹消】」
岩柱が視界を埋め尽くすほどに押し寄せられ、ベレスは左腕を突き出し身を守る。
『ライザ選手っ! 跳躍寸前で魔法を発動させ、ベレス選手の追撃を見事に振り切る!」
「これなら攻撃させずに近付けるはずだ!」
「いや、たとえ正確な位置は特定出来ずとも空中じゃまともに移動は出来ないんだ。そのまま空裂破断で終わりじゃないのか……⁉」
期待に胸を膨らませるスベンだがセロブロは冷静に戦況を分析する。
「【岩塊の巨腕】!」
ライザは防御姿勢も取らないまま、右腕に硬化させた岩の装甲を纏った。
(正確な位置が特定出来なきゃ空裂破断は使えねェだろっ!)
「仕方ねェな、拳で決めてやるよ……最大出力」
ベレスは岩で囲まれたこの場で迎え撃とうと嬉々とした様子で右手に魔力を込める。
「殺傷能力が高すぎるが故に正確な位置が分からなくちゃ使えない」
「相手を死に至らしめてしまうから……」
そうなれば競技規定により一対一で獲得したポイントを失い、ベレスの判断基準に最も触れることになる。
アルムは彼らの読み合いを理解し、ラビスは戦慄した。
「だが近接戦で大きなハンデあるのは百も承知、どう反撃に出るつもりだ……」
アルムは彼らの戦い、そして契約の行方を見届けようと左目を光らせた。
「ここからが勝負だァ!」
そう言って彼はベレスの頭上に目掛けて右腕を振り下ろす。
バガンッ!
全身の力と全体重を乗せた拳は一瞬で岩を砕き、ベレスの眼前まで差し迫る。
「うおォ⁉」
直後、振り下ろされたはずの右腕が弾かれたように軌道を変えられてしまう。
「不可視の歪みか……⁉」
曲げられた軌道を修正できず渾身の一撃が地面に叩きつけられ、フィールド全体に地割れが生じた。
「最後の戦いが殴り合いで終われて良かったよ」
そう告げる彼は膝を屈したライザの顔面に狙いを定める。
完全な虚を突かれ、回避も防御も間に合わない体勢。
誰もがそう思った――――ただ一人の男を除いて。
「……まだ、終わってねェんだよ! 【硬化】‼」
ライザは驚きや屈辱、全ての感情を文字通り歯で噛み締め、顔の皮膚を岩の表面のような質感へ変質させる。
(お前と戦ったのはたったの二回、でもずっと見て来たんだ……!
仲間や後輩が一方的、一瞬の間に、そしてあと一歩届かずにやられる姿をッ!
ここまで辿り着いたのは俺の力じゃねェ、皆の力だァ!)
「だから……――――死んでも耐えてやる‼」
ギチィッ!
人間の皮膚では立てられないだろう音を立て、硬度を増し続けるライザ。
それは奇しくも最高硬度と名高いエルベント・タイガーの歯牙に並ぶほどだった。
(アルム、テイバン――――俺は……!)
「最初のお披露目がお前に使えて良かったよぉ!」
ベレスは歓喜の表情を浮かべると自身が描いた空間軌道に乗せて最大出力の引手を発動、ライザの目の前から拳が消失する。
(不可視の歪みで軌道を逸らしても今の俺じゃ近接で勝ち目はほぼゼロ。
だったら弱点を得意で補えばいいだけの話。
不慣れな炎を外から誘導するように、貧弱な肉体を圧倒的な力で導くんだ!)
最大出力の不可視の歪みと最大出力の引手を掛け合わせた融合魔法
「――――【万力の一撃】」
拳が閃光の如く走り、到達するまでの時間が存在しないままライザの顔面を穿つ。
ドガッ‼
常識外れの衝撃に巨体が浮き、地面を滑るようにはるか遠くに吹き飛ばされた。
「が――――あ……」
顎は砕かれ、皮膚と筋繊維の境界が無くなり、白目を向いたまま意識を失う。
「…………」
アルムはそっと体勢を横に向き、妹の視界からフィールドを外させた。
「……ライザ選手戦闘不能ッ! 勝者はベレス=ダーヴィネータ選手!」
『一対一決勝戦を制したのはベルモンド学園四年生ベレス=ダーヴィネータ選手! これで記念すべき四連覇達成ですッ!』
「お前が最強だァ!」「流石は魔導大会開催国っ!」「ベレスこそ至高にして最強!」
「「「べレスッ! ベレスッ! ベレスッ!」」」
サイベルの勝利宣言とともに会場中が大きく湧き上がり、優勝者コールまで起こってしまう始末。
「ほっほっほっ! 我が国は最も偉大で、最も強いのだァ!」
他国の重役がいるにもかかわらず手に入れた勝利に興奮を隠せないバリウス。
「ライザさん……」「くそォ!」「今年こそいけると思ったのに……!」
対照的にエンドリアス学園の応援席では悔しさを滲ませていた。
「お兄ちゃん、ライザオジサンは勝ったの?」
この騒ぎを理解できないマインは兄に尋ねる。
「さぁ、お兄ちゃん腹減ったからあっちで一緒に食べよう」
「うん! お姉ちゃんも一緒に行こっ!」
「う、うん!」
アルムは妹の意識を逸らせることに成功し、彼女も連れて一緒に席から立ち上がった。
(子供とはいえ騒いでいい雰囲気じゃない、気持ちの整理がつくまでは離れたほうが良さそうだな)
アルムは階段を上りながら入口に向かっていくベレスの後ろ姿を眺める。
「……今のベレスにも勝てる気がしねぇな」
彼は試合前の発言を撤回した。
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