157 / 162
魔導大会五日目
数多の幕引き
しおりを挟む
表彰式、晩餐会、そしてラビスと婚約を誓い合い翌朝を迎える。
「帰り支度が済み次第、受付前に集合しろっ!」
バルデンたち教師陣は選手が宿泊した部屋を確認しながら指示を飛ばした。
「観光地図を置きっぱなしヤツ誰だ⁉」「す、すみません!」
「はァ――――朝7時は早過ぎるって」「いくら混むからって早いよな」
「あったま痛ェ……」「少し浮かれ過ぎたか」
所持品を忘れている者、眠い目を擦る者、二日酔いの者と様々だ。
ちなみに俺は既に荷物をまとめ受付前で待機中だ。
「アルム、昨日の夜中に起きなかったか? 変な声が聞こえたぞ」
同じく荷物をまとめたセロブロは鋭い目つきで尋ねて来る。
「気付いた? 寝返ったら壁に右腕が激突した」
「だから緩衝材を置けと言っただろう、お陰で叩き起こされて寝不足だ」
「悪かったよ、代わりに荷物は俺が持ってやるから許してくれ」
「いや両腕が使えないだろ……待て、貴様どうやって身支度を整えた?」
「それはあれだよ、魔法とか……とにかく色々だよ」
彼の疑問にそれらしい答えを言えず目線を泳がせる。
じつを言うと荷物整理に適したの魔法は持っていなかったため、脚や口を器用に使い何とかまとめることが出来た。
まあ想定以上に作業が進まず宿舎で食べられる最後の朝食は逃す羽目になったが。
「自業自得、と言ってしまうのは簡単だがあまりに惨めだ。今回だけは特別に僕が貴様の荷物も持ってやる」
「セロブロ……この借りはジクセス家の専属騎士の就任を以て返したと思います」
「なぜ僕が雇わなければならないんだ、貴様が我が屋敷に居座られてはオチオチ眠れもしない……」
珍しく軽口に乗りながら溜息を漏らすセロブロ。
「それこそ『緩衝材を敷け』とご命令を頂ければ、じゃなくて」
何故こいつの想定じゃ俺の両腕は完治していないんだよ。
「そうですね、ジクセス家の専属騎士になられては困ります」
「カルティア様っ!」「カルティア先輩」
話を盗み聞きしていたのか軽口を叩いてはならない人物が参入する。
「お二人とも朝から重大な話し合いができるなんて凄いですね。セロブロ君は結構なお酒を飲んでいたというのに」
「僕は翌日に影響しない範囲で嗜みましたので……」
同級生から王家の人間と惑うことなく、切り替える彼に僅かに尊敬の念を懐く。
「アルム君は飲まなかったんですか? 私も少量しか飲みませんでしたがとても美味しかったですよ」
「俺はまだ成人じゃないので飲めないんですよ」
それに仮に飲める年齢だとしてもラビスに頼むのは気が引ける。
「ということは14歳、誕生日はいつですか?」
「ええェと、今日からちょうど三週間後ですね」
「では生徒会の加入も合わせ、みんなで祝わせてください」
「えっ?」「はっ⁉ アルム、貴様生徒会に入るのか?」
「ああァ……まあ、そうそう」
さらっと生徒会新メンバーの公表にセロブロは食い気味に問い詰める。
誰も加入するとは言っていないが、生徒会に所属したほうが彼女たちとの接触も容易いか。
「という事でテイバン先輩と話したかったら俺を通してくれよな」
「もう生徒会面か、あとあんな奴に用など無い」
「相変わらず不仲だな、そう言えばテイバン先輩は大丈夫ですか?」
晩餐会は体調不良で欠席、表彰式も浮かない顔をしていたから気になっていた。
「……ええ、単なる疲れでしっかり療養をさせたので心配には及びません」
いつもの口調で話すカルティアだが全快という感じでは無さそうだ。
準決勝戦でベレスと試合、そして昨年の順位を下回り彼の心労は計り知れない。
「遅れて申し訳ありません」
「テイバン、お前らしくもない……いや次からは気を付けろよ」
出立の時間が迫り選手のほとんどが集まる中、テイバンが姿を見せる。
体調は悪くなさそうだが確かに生徒たちの見本となって行動する彼らしくない。
「では私はここで失礼します」
カルティアは察したように足早に立ち去った。
「貴様が悩んだところで時間の無駄だ。暫くは様子を見るしかないだろう」
冷たく突き放すセロブロもどこか思うところがあるように見える。
それに対等に接していたライザとカルティアも晩餐会で距離を置いているようにを感じられた。
「俺が寝てる間に何があったんだよ……」
どうやらみんなで頑張った楽しい大会で幕引き、という雰囲気ではないな。
「ラビス=ベルティーネ! 集合時刻を2分も過ぎているじゃないかァ!」
「ご、ごめんなさいっ!」
そして婚約者である彼女も最後の最後に説教で幕引き、という結末を迎えた。
「帰り支度が済み次第、受付前に集合しろっ!」
バルデンたち教師陣は選手が宿泊した部屋を確認しながら指示を飛ばした。
「観光地図を置きっぱなしヤツ誰だ⁉」「す、すみません!」
「はァ――――朝7時は早過ぎるって」「いくら混むからって早いよな」
「あったま痛ェ……」「少し浮かれ過ぎたか」
所持品を忘れている者、眠い目を擦る者、二日酔いの者と様々だ。
ちなみに俺は既に荷物をまとめ受付前で待機中だ。
「アルム、昨日の夜中に起きなかったか? 変な声が聞こえたぞ」
同じく荷物をまとめたセロブロは鋭い目つきで尋ねて来る。
「気付いた? 寝返ったら壁に右腕が激突した」
「だから緩衝材を置けと言っただろう、お陰で叩き起こされて寝不足だ」
「悪かったよ、代わりに荷物は俺が持ってやるから許してくれ」
「いや両腕が使えないだろ……待て、貴様どうやって身支度を整えた?」
「それはあれだよ、魔法とか……とにかく色々だよ」
彼の疑問にそれらしい答えを言えず目線を泳がせる。
じつを言うと荷物整理に適したの魔法は持っていなかったため、脚や口を器用に使い何とかまとめることが出来た。
まあ想定以上に作業が進まず宿舎で食べられる最後の朝食は逃す羽目になったが。
「自業自得、と言ってしまうのは簡単だがあまりに惨めだ。今回だけは特別に僕が貴様の荷物も持ってやる」
「セロブロ……この借りはジクセス家の専属騎士の就任を以て返したと思います」
「なぜ僕が雇わなければならないんだ、貴様が我が屋敷に居座られてはオチオチ眠れもしない……」
珍しく軽口に乗りながら溜息を漏らすセロブロ。
「それこそ『緩衝材を敷け』とご命令を頂ければ、じゃなくて」
何故こいつの想定じゃ俺の両腕は完治していないんだよ。
「そうですね、ジクセス家の専属騎士になられては困ります」
「カルティア様っ!」「カルティア先輩」
話を盗み聞きしていたのか軽口を叩いてはならない人物が参入する。
「お二人とも朝から重大な話し合いができるなんて凄いですね。セロブロ君は結構なお酒を飲んでいたというのに」
「僕は翌日に影響しない範囲で嗜みましたので……」
同級生から王家の人間と惑うことなく、切り替える彼に僅かに尊敬の念を懐く。
「アルム君は飲まなかったんですか? 私も少量しか飲みませんでしたがとても美味しかったですよ」
「俺はまだ成人じゃないので飲めないんですよ」
それに仮に飲める年齢だとしてもラビスに頼むのは気が引ける。
「ということは14歳、誕生日はいつですか?」
「ええェと、今日からちょうど三週間後ですね」
「では生徒会の加入も合わせ、みんなで祝わせてください」
「えっ?」「はっ⁉ アルム、貴様生徒会に入るのか?」
「ああァ……まあ、そうそう」
さらっと生徒会新メンバーの公表にセロブロは食い気味に問い詰める。
誰も加入するとは言っていないが、生徒会に所属したほうが彼女たちとの接触も容易いか。
「という事でテイバン先輩と話したかったら俺を通してくれよな」
「もう生徒会面か、あとあんな奴に用など無い」
「相変わらず不仲だな、そう言えばテイバン先輩は大丈夫ですか?」
晩餐会は体調不良で欠席、表彰式も浮かない顔をしていたから気になっていた。
「……ええ、単なる疲れでしっかり療養をさせたので心配には及びません」
いつもの口調で話すカルティアだが全快という感じでは無さそうだ。
準決勝戦でベレスと試合、そして昨年の順位を下回り彼の心労は計り知れない。
「遅れて申し訳ありません」
「テイバン、お前らしくもない……いや次からは気を付けろよ」
出立の時間が迫り選手のほとんどが集まる中、テイバンが姿を見せる。
体調は悪くなさそうだが確かに生徒たちの見本となって行動する彼らしくない。
「では私はここで失礼します」
カルティアは察したように足早に立ち去った。
「貴様が悩んだところで時間の無駄だ。暫くは様子を見るしかないだろう」
冷たく突き放すセロブロもどこか思うところがあるように見える。
それに対等に接していたライザとカルティアも晩餐会で距離を置いているようにを感じられた。
「俺が寝てる間に何があったんだよ……」
どうやらみんなで頑張った楽しい大会で幕引き、という雰囲気ではないな。
「ラビス=ベルティーネ! 集合時刻を2分も過ぎているじゃないかァ!」
「ご、ごめんなさいっ!」
そして婚約者である彼女も最後の最後に説教で幕引き、という結末を迎えた。
1
あなたにおすすめの小説
無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す
紅月シン
ファンタジー
七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。
才能限界0。
それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。
レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。
つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。
だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。
その結果として実家の公爵家を追放されたことも。
同日に前世の記憶を思い出したことも。
一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。
その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。
スキル。
そして、自らのスキルである限界突破。
やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。
※小説家になろう様にも投稿しています
クラス全員が転生して俺と彼女だけが残された件
兵藤晴佳
ファンタジー
冬休みを目前にした田舎の高校に転校してきた美少女・綾見(あやみ)沙羅(さら)は、実は異世界から転生したお姫様だった!
異世界転生アプリでクラス全員をスマホの向こうに送り込もうとするが、ただひとり、抵抗した者がいた。
平凡に、平穏に暮らしたいだけの優等生、八十島(やそしま)栄(さかえ)。
そんな栄に惚れ込んだ沙羅は、クラス全員の魂を賭けた勝負を挑んでくる。
モブを操って転生メンバーを帰還に向けて誘導してみせろというのだ。
失敗すれば、品行方正な魂の抜け殻だけが現実世界に残される。
勝負を受ける栄だったが、沙羅は他クラスの男子の注目と、女子の嫉妬の的になる。
気になる沙羅を男子の誘惑と女子の攻撃から守り抜き、クラスの仲間を連れ戻せるか、栄!
異世界では地味な俺が、なぜか神々に最愛されて無双してる件
fuwamofu
ファンタジー
平凡な高校生・桐生ユウは、女神の手違いで異世界に転生した。
チートもスキルも貰えず、冒険者登録すらままならない落ちこぼれ……のはずだった。
しかし周囲の異常な好感度、意味不明な強運、そして隠された神格スキルによって、ユウは「無自覚に全能」な存在へと覚醒していく。
気づけば女神も姫騎士も魔王娘も彼に夢中。誤解と崇拝が加速する中、ユウの“地味な日常”は世界を揺るがす伝説になっていく。
笑いあり、胸キュンあり、ざまぁありの最強(なのに本人だけ気づいてない)異世界ファンタジー開幕!
暗殺者から始まる異世界満喫生活
暇人太一
ファンタジー
異世界に転生したが、欲に目がくらんだ伯爵により嬰児取り違え計画に巻き込まれることに。
流されるままに極貧幽閉生活を過ごし、気づけば暗殺者として優秀な功績を上げていた。
しかし、暗殺者生活は急な終りを迎える。
同僚たちの裏切りによって自分が殺されるはめに。
ところが捨てる神あれば拾う神ありと言うかのように、森で助けてくれた男性の家に迎えられた。
新たな生活は異世界を満喫したい。
異世界帰りの少年は現実世界で冒険者になる
家高菜
ファンタジー
ある日突然、異世界に勇者として召喚された平凡な中学生の小鳥遊優人。
召喚者は優人を含めた5人の勇者に魔王討伐を依頼してきて、優人たちは魔王討伐を引き受ける。
多くの人々の助けを借り4年の月日を経て魔王討伐を成し遂げた優人たちは、なんとか元の世界に帰還を果たした。
しかし優人が帰還した世界には元々は無かったはずのダンジョンと、ダンジョンを探索するのを生業とする冒険者という職業が存在していた。
何故かダンジョンを探索する冒険者を育成する『冒険者育成学園』に入学することになった優人は、新たな仲間と共に冒険に身を投じるのであった。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~
榊与一
ファンタジー
幼い頃の鑑定によって、覚醒とユニークスキルが約束された少年——王道光(おうどうひかる)。
彼はその日から探索者――シーカーを目指した。
そして遂に訪れた覚醒の日。
「ユニークスキル【幸運】?聞いた事のないスキルだな?どんな効果だ?」
スキル効果を確認すると、それは幸運ステータスの効果を強化する物だと判明する。
「幸運の強化って……」
幸運ステータスは、シーカーにとって最も微妙と呼ばれているステータスである。
そのため、進んで幸運にステータスポイントを割く者はいなかった。
そんな効果を強化したからと、王道光はあからさまにがっかりする。
だが彼は知らない。
ユニークスキル【幸運】の効果が想像以上である事を。
しかもスキルレベルを上げる事で、更に効果が追加されることを。
これはハズレと思われたユニークスキル【幸運】で、王道光がシーカー界の頂点へと駆け上がる物語。
近未来の魔法世界に転生して最強ハーレムを作る
こうたろ
ファンタジー
トラックの直撃で死亡。「君は選ばれた。異世界へ行く資格を得たのだ」とか言われてとりあえず転生させられたクルト。公爵家だけど四男だし魔術があるけど魔力量判定Eでほぼほぼ使い物にならないし……魔物1体倒すのも一苦労。俺の転生後生活、大丈夫か?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる