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魔導大会五日目
不穏な待ち時間
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生徒60人全員が揃い、俺たちは宿舎を出立した。
目論見通り早朝のため人通りも少なく、転移できる大会会場までの移動はスムーズに進んだのだが……。
「『ロードスト王国の転移魔法が不良のため正常に戻るまで待機』って舐めんのかァ⁉」
「しぃ……! アルム声大きいよ……」
俺の、いやエンドリアス学園生徒全員の怒りの声が廊下に響き渡る。
「でもロードスト王国の転移魔法が上手く作動しないのなら、私たちを先に行かせればいいとは思うけどね」
「そうして欲しいけど大人数の転移はそう簡単に切り替えられないんだよなぁ」
「どうゆうこと?」
「今はロードスト王国の宮廷魔法師たちが自国の魔法陣に魔力を注ぎ込んで、大会会場の転移魔法陣を繋ぎ留めている形なんだ。だから俺たちを先に王都に帰すとなるとロードスト王国が魔法陣の接続を切らなくてはならない」
コクコクと短めの茶髪の左右に揺らしながら頷く彼女に口元が緩まされてしまう。
「でも数百キロも離れた魔法陣同士を繋ぐには相当の魔力を消耗する事になるんだ」
「動き続けるのは簡単だけど動き出すのは難しい、みたいな」
「そうそうそんな感じ、だから先生たちも強く言うことが出来ないんだ。多分だけど接続を切ったら二、三日は追加で滞在する事になるだろうね」
「ええェ⁉ 確かにそれなら仕方ないね……」
「まあラビスの気持ちは理解できるよ。
『結局ここで待機するなら私が怒られた意味ないじゃない』って、俺もそう思う」
「ちょっと、私そんな事一言も言ってないんだけど!」
「隠す事はない、そして安心してくれ。たとえ遅刻しようと先生に逆ギレしようと俺はきみの味方だ」
「ちょっと! 遅刻はしたのは事実だけど先生に逆ギレはしてないよ!」
「それに寝癖が治っていなくてもきみの味方だ。俺は女性に理解ある男だからな」
「味方とか理解は嬉しいけど、って寝癖⁉ 早く教えてよぉ!」
「いや人居ないところまで来たら教えようと思ったからさ」
適格なツッコミと喜怒哀楽と怒涛の感情変化、そして極めつけの指摘に彼女は手櫛で髪を整える。
「それにしたって何で遅刻したんだ? 夜更かしでもしていたのか」
「夜更かしするつもりは無かったんだよ、でも……ドキドキして眠れなくて」
「ドキドキ? これから何かあったっけ?」
「違うよ……アルムと顔を合わせるのが緊張して」
「そ、そうだったのか……」
照れたように身を縮め、モジモジする可愛い仕草に思わず鼓動が高鳴った。
「アルムは違うの?」
「……まあ俺は緊張よりも期待のほうが上だったかな」
深緑の瞳が控えめに見上げると俺は正直な思いと真っ直ぐな視線を向けた。
「期待?」
「ああ、関係が変わったきみとこれからのどんな毎日が送れるのかっていう期待」
「それなら私もすごく楽しみにしてたよ。アルムと、婚約者の貴方とどんな素敵な日々が待っているのかなって……!」
「ラビス……!」
向き合っていた視線をより一層絡め、俺は一歩前に踏み出し彼女との距離を数センチまで縮める。
「アルム、こんなところで……⁉」
「人の気配はしない、お前が嫌なら止めるけど」「……ううん、止めないで」
静かに瞼を閉じる彼女、俺は頭部を傾け姿勢を屈めながらラビスの顔にゆっくり近づいた。
この両腕で彼女を抱き寄せられたら、と思うが今はこの状況も楽しむとしよう。
「失礼、お時間よろしいでしょうか?」「おはァ⁉ はい何でしょうか……?」
しかし彼女との空間の中に色黒肌の男が乱入する。
というか話しかけられるまで存在すら認知できなかった……。
「私はモーゴット=ベルリオン、ロードスト学園の教師を務めているものです」
「俺は――――」
「アルム=ライタード君、そしてお隣はラビス=ベルティーネさんですね」
ライザ以上の巨体に見合う大きな手を彼女の前に突き出す。
「私の名前も知っているんですか⁉」
「勿論です、貴方は我が校の生徒トールズと渡り合った有望な選手ですから」
そう言ってラビスと握手を交わした。
「それでモーゴットさん、俺たちに何の用ですか?」
気配を隠していたと言い、ただ者ではない雰囲気だ。
「用は特にありません。ご挨拶したい方々が目の前に居たから声を掛けた、それ以上でも以下でもありません」
「……そうですか、用が無いのであれば俺たちは失礼します。行こうラビス」
「う、うん」
俺たちはモーゴットの横を通り過ぎ、足早にその場を去って行く。
「忠告ですが足を止めたほうがよろしいかと……」「はっ?」
ガシャン!
直後、数歩先の大窓に人が激突しガラスが叩き割られる。
「ラビスっ⁉」
鋭い破片が彼女に向かって一直線に飛び、俺は咄嗟にラビスの前に立った。
腕で受け止めるしかねェ――――差し迫った破片を前に覚悟を決める。
「咄嗟の判断力と自己犠牲の精神――――」
しかし筋骨隆々の巨腕が眼前に現れ、破片を真上から叩き砕いた。
「実に見事です」「あ、ありがとうございます……」
体勢の向きを反転、俺の背後まで移動し拳を振り下ろす動作までが早過ぎる!
しかも窓ガラスが割れることを察知していたような口ぶり……。
「あんた、本当にただの教師か……⁉」「はなし終わったか?」
戦慄する俺を余所に平然とした様子でベレスが顔を見せる。
「お前……⁉ 何しに来たんだ、危ねェだろ!」
「悪い悪い、お別れ前に会っておきたくてな」
昨日の件で少し見直そうかと思ったがやっぱこいつは駄目だ。
「お邪魔のようなので私はこれで……」
「話はまだ終わっていな――――」
「そう焦る必要はない、遠くない内にまた会えますよ」
どこか意味を匂わせる言葉を残し、モーゴットは去って行く。
「アルム、大丈夫だった⁉」「ああ、俺は別に……」
「アルム、話し終わったかって」「ああ、終わったよォ!」
謎は残ったままだが目の前の煩いヤツをどうにかするしかない。
俺たちも今度こそこの場を去って行った。
目論見通り早朝のため人通りも少なく、転移できる大会会場までの移動はスムーズに進んだのだが……。
「『ロードスト王国の転移魔法が不良のため正常に戻るまで待機』って舐めんのかァ⁉」
「しぃ……! アルム声大きいよ……」
俺の、いやエンドリアス学園生徒全員の怒りの声が廊下に響き渡る。
「でもロードスト王国の転移魔法が上手く作動しないのなら、私たちを先に行かせればいいとは思うけどね」
「そうして欲しいけど大人数の転移はそう簡単に切り替えられないんだよなぁ」
「どうゆうこと?」
「今はロードスト王国の宮廷魔法師たちが自国の魔法陣に魔力を注ぎ込んで、大会会場の転移魔法陣を繋ぎ留めている形なんだ。だから俺たちを先に王都に帰すとなるとロードスト王国が魔法陣の接続を切らなくてはならない」
コクコクと短めの茶髪の左右に揺らしながら頷く彼女に口元が緩まされてしまう。
「でも数百キロも離れた魔法陣同士を繋ぐには相当の魔力を消耗する事になるんだ」
「動き続けるのは簡単だけど動き出すのは難しい、みたいな」
「そうそうそんな感じ、だから先生たちも強く言うことが出来ないんだ。多分だけど接続を切ったら二、三日は追加で滞在する事になるだろうね」
「ええェ⁉ 確かにそれなら仕方ないね……」
「まあラビスの気持ちは理解できるよ。
『結局ここで待機するなら私が怒られた意味ないじゃない』って、俺もそう思う」
「ちょっと、私そんな事一言も言ってないんだけど!」
「隠す事はない、そして安心してくれ。たとえ遅刻しようと先生に逆ギレしようと俺はきみの味方だ」
「ちょっと! 遅刻はしたのは事実だけど先生に逆ギレはしてないよ!」
「それに寝癖が治っていなくてもきみの味方だ。俺は女性に理解ある男だからな」
「味方とか理解は嬉しいけど、って寝癖⁉ 早く教えてよぉ!」
「いや人居ないところまで来たら教えようと思ったからさ」
適格なツッコミと喜怒哀楽と怒涛の感情変化、そして極めつけの指摘に彼女は手櫛で髪を整える。
「それにしたって何で遅刻したんだ? 夜更かしでもしていたのか」
「夜更かしするつもりは無かったんだよ、でも……ドキドキして眠れなくて」
「ドキドキ? これから何かあったっけ?」
「違うよ……アルムと顔を合わせるのが緊張して」
「そ、そうだったのか……」
照れたように身を縮め、モジモジする可愛い仕草に思わず鼓動が高鳴った。
「アルムは違うの?」
「……まあ俺は緊張よりも期待のほうが上だったかな」
深緑の瞳が控えめに見上げると俺は正直な思いと真っ直ぐな視線を向けた。
「期待?」
「ああ、関係が変わったきみとこれからのどんな毎日が送れるのかっていう期待」
「それなら私もすごく楽しみにしてたよ。アルムと、婚約者の貴方とどんな素敵な日々が待っているのかなって……!」
「ラビス……!」
向き合っていた視線をより一層絡め、俺は一歩前に踏み出し彼女との距離を数センチまで縮める。
「アルム、こんなところで……⁉」
「人の気配はしない、お前が嫌なら止めるけど」「……ううん、止めないで」
静かに瞼を閉じる彼女、俺は頭部を傾け姿勢を屈めながらラビスの顔にゆっくり近づいた。
この両腕で彼女を抱き寄せられたら、と思うが今はこの状況も楽しむとしよう。
「失礼、お時間よろしいでしょうか?」「おはァ⁉ はい何でしょうか……?」
しかし彼女との空間の中に色黒肌の男が乱入する。
というか話しかけられるまで存在すら認知できなかった……。
「私はモーゴット=ベルリオン、ロードスト学園の教師を務めているものです」
「俺は――――」
「アルム=ライタード君、そしてお隣はラビス=ベルティーネさんですね」
ライザ以上の巨体に見合う大きな手を彼女の前に突き出す。
「私の名前も知っているんですか⁉」
「勿論です、貴方は我が校の生徒トールズと渡り合った有望な選手ですから」
そう言ってラビスと握手を交わした。
「それでモーゴットさん、俺たちに何の用ですか?」
気配を隠していたと言い、ただ者ではない雰囲気だ。
「用は特にありません。ご挨拶したい方々が目の前に居たから声を掛けた、それ以上でも以下でもありません」
「……そうですか、用が無いのであれば俺たちは失礼します。行こうラビス」
「う、うん」
俺たちはモーゴットの横を通り過ぎ、足早にその場を去って行く。
「忠告ですが足を止めたほうがよろしいかと……」「はっ?」
ガシャン!
直後、数歩先の大窓に人が激突しガラスが叩き割られる。
「ラビスっ⁉」
鋭い破片が彼女に向かって一直線に飛び、俺は咄嗟にラビスの前に立った。
腕で受け止めるしかねェ――――差し迫った破片を前に覚悟を決める。
「咄嗟の判断力と自己犠牲の精神――――」
しかし筋骨隆々の巨腕が眼前に現れ、破片を真上から叩き砕いた。
「実に見事です」「あ、ありがとうございます……」
体勢の向きを反転、俺の背後まで移動し拳を振り下ろす動作までが早過ぎる!
しかも窓ガラスが割れることを察知していたような口ぶり……。
「あんた、本当にただの教師か……⁉」「はなし終わったか?」
戦慄する俺を余所に平然とした様子でベレスが顔を見せる。
「お前……⁉ 何しに来たんだ、危ねェだろ!」
「悪い悪い、お別れ前に会っておきたくてな」
昨日の件で少し見直そうかと思ったがやっぱこいつは駄目だ。
「お邪魔のようなので私はこれで……」
「話はまだ終わっていな――――」
「そう焦る必要はない、遠くない内にまた会えますよ」
どこか意味を匂わせる言葉を残し、モーゴットは去って行く。
「アルム、大丈夫だった⁉」「ああ、俺は別に……」
「アルム、話し終わったかって」「ああ、終わったよォ!」
謎は残ったままだが目の前の煩いヤツをどうにかするしかない。
俺たちも今度こそこの場を去って行った。
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