死神と恐れられた俺、転生したら平和な時代だったので自由気ままな人生を享受する

オカさん

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魔物討伐試験

31話 赤い煙幕

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「さて、お前たちはどうしてやろうか?」

「「「えっ?」」」

「えっ? ってなんだよ。セロブロを痛めつけて許して貰えると思ったのか?」

「いや、この流れだったら逃がしてくれる、みたいな……」

 どうやら自分たちがしたことの重大さを理解していないようだ。
 単に頭が悪いのか、平民の命を奪ったとしても何とも思わないのか。
 まあ人殺し云々うんぬんについて人を悪く言える立場では無いが。

「言っておくけどお前らは人を殺そうとしたんだぞ……俺とラビスを殺そうとしたんだぞ」

「「「す、すみません……」」」

 怒りはすっかり収まったが、許すつもりは毛頭ない。
 高圧的な態度で詰め寄ると謝罪の声を漏らして縮こまってしまう。

「ラビスを連れてくるから少し待ってろ。逃げだしたら許さないぞ」

「「「はいッ!」」」

 こいつらの処遇を決めるため結界内へ戻る。

「終わったの?」

 ラビスは指で地面に絵を描いて暇そうに時間を潰していたようだ。
 結界外ではあれだけ騒いだのにも関わらず、その余波を感じさせないのは外部の影響を内部にまで干渉されないよう空間を切り離す特性を付与してあるからだ。

「セロブロの取り巻きがまだ終わっていないけど、とりあえず外が安全になったから呼びに来た」

「ジ、ジクセスさんはどうしたの……?」

「殺しては無い、魔法を一発叩き込んで今はぐっすく寝てるよ」

「ぐっすり寝てる……本当に殺してないんだよね?」

 怪訝な顔で再びセロブロの生死を尋ねるラビスに少しばかり傷付く。
 そんなに俺は血の気の多い奴に見えるのか?

「そんなに気になるなら確かめに行こうぜ」

 黒き空牢ローブ・ジエルドを解いてセロブロたちの下へ向かう。 

「ラビス、俺の怒りは収まったからこいつらの処遇はお前が決めていい」

「私がかぁ……」

 考え込む様子の彼女に取り巻きたちは悲しそうな視線を向ける。
 ラビスがお人好しなのは知っているからこのような判断は彼女を困らせるだけだと分かってはいた。しかし彼女が一番の被害者であるにもかかわらず、その処遇を決められないのはおかしな話だ。だからその機会を与えてみたが……。

「許しても良いんじゃないかな。私ももう怒ってないから」

 そう言って笑顔を見せる彼女に取り巻きたちはホッとする。
 やはりラビスには他人を罰することが出来なかったか……。

「分かったよラビス――――でもやっぱムカつくからこいつら殺すわ」

「「「えっ?」」」

 衝撃の発現に全員が口を開けたまま止まる中、俺は黒器創成くろきそうせいで大鎌を生成する。

「死にたい奴からそこに並べ。早ければ早いほど楽に殺してやる」 

「ちょ、ちょっと待ってアルム! 殺すって何の冗談なの? それに怒りは収まったんじゃなかったっけ?」    

「さっきまではな。だけど自分たちに罰が下らないと分かった瞬間、笑いやがったんだ。そうだろ?」

「笑ってない! 本当に笑ってない‼」

 問い詰めたクラスメイトは物凄い勢いで首を横に振る。
 そう、ホッとしただけで笑ってはいない。どんな罰が下されるのか分からない状況でお咎めなしと分かれば安心くらいするし、それ自体は何とも思っていない。
 これは演技だ、ある目的を遂行するために。

「ほら、さっさと決めねえと全員ろくな死に方しないぞ」

 どうすれば許して貰えるのか相談する者、涙を浮かべて嗚咽おえつする者と反応は様々だ。
 それにしても彼らの反応から自身の演技力の凄さを実感する。

「待ってよアルム」

 ラビスは俺と彼らの間に割って入る。

「なんだ? 時間がないから手短に話せ」

 ラビスにまで高圧的に接する意味はないが態度を変えるのも不自然なため、心苦しいが接し方を統一する。

「クラスメイトを殺すなんて幾らなんでも見過ごせることじゃないよ!」

「そいつらだって殺そうとしてきたんだ。だったらこっちが殺しても文句はないだろ?」

「……アルムの言う事が間違っているとは言わない。私だってこの人たちに背中を向けているのが怖い。でも、アルムの力は、人を殺すために使って欲しくない! 人を守るために使って欲しいの!」

「ッ……⁉」

『貴方は自分を人殺しと思うかもしれない。けれどその裏には同じくらいの人の命を救っている。貴方はただのギール、死神なんかじゃないわ』

 ラビスが発した言葉が似ていたせいか昔の記憶を思い出す。
 当時の俺にはこれ以上ない言葉だったのだろうが、今ではその人の顔も名前も思い出せない。ていうか、よくよく考えたらそこまで似ていないな……。 

「――――アルム?」

 目の前で名前を呼ぶラビスに気が付き我に返る。どうやら数秒ほど意識が飛んでいたらしい。

「戻って来た! 急に反応が無くて焦ったよ」

「悪い、少し疲れてるのかも……」

 目を擦って現実に戻ると取り巻きたちは恐怖と期待の眼差しを俺とラビスに向けていた。

「仕方ねえ、今回はラビスに免じて許してやる。だが次は容赦なく殺してやるから覚悟して挑むんだな、分かったか!」

「「「はいっ、もうしません‼」」」

 目的を達成した俺は彼らを恐怖から解放させる。
 今更振り返ると平民の俺が貴族に命令をするなんて凄い絵面だったな。

「ラビス、さん。本当にありがとう……」

「ホント命の恩人だ! マジでありがとうな」

「そんな事ないよ……」

 彼らはラビスの周りに集まって感謝を伝えると、照れくさそうに頬を搔いた。
 俺の目的、それはラビスがクラスで孤立しないよう彼らに恩を売ることだ。
 この感謝がいつまで続くかは分からないが、ラビスは良い奴だから自然に仲良くなれるだろう。
 俺もみんなと仲良く出来るように立ち回れたら良かったが、欲張ってしまえばこの状況すら実現するのは難しかっただろう。
 せめて彼女との交友関係が消えないことを祈っておこう。

「……なんだあれ?」

 取り巻きが向ける視線の先には青空に赤い煙幕が広がっていた。
 魔法と言えなくもないが、どちらかと言えば救援弾のたぐいだろう。
 俺たち生徒の所有物と考えられなくもないが、方角と位置からちょうど設営地の真下、つまり騎士団が上げた可能性が高い。

設営地テントで何かあったのか……」

「アルム、どうする……?」

 ラビスだけでなく全員が不安な面持ちで俺の声に耳を傾けていた。
 指示に従う気は無いだろうが、俺がどう動くのか気になっているらしい。
 
「あの赤い煙が『救援』を暗示をしているとすれば、騎士団でも対処できない問題が発生したという事だ。俺は設営地テントに戻って必要に応じた行動を取ろうと思う。そしてお前らはこの場に残っていろ」

 主にラビスが口を開こうとしたするも手を挙げて静止させる。

「最後まで俺の話を聞け。まずこの場に残っていたほうが安全だからだ。魔力を消耗しているとはいえ、魔法が使える人間が五人も集まれば魔物は退けるはずだ。必要ならさっきの結界も張ってやる。反対に俺と一緒に行った場合のことも考えて欲しい」

 俺はラビスの瞳を見つめる。

「いくら俺でも騎士団が手を焼くほどの問題を対処できるか分からん。最悪、返り討ちに合うくらいの脅威がいるかもしれない。その場合、お前らを守って逃げるのは極めて困難だ。悪いことは言わないからここで待っていろ、問題を片付けたら呼びに来る」

 命に関わるかもしれない選択なため脅し気味に伝える。
 取り巻きたちはともかく、ラビスはここで折れてほしいが……。

「アルムの言いたい事は凄く分かった。でも私は困っている人が近くにいるのに黙って待っていることなんて出来ないよ!」

「お、俺たちはここに残っていようかな……!」

「……そうか、じゃあ一緒に行くぞ」

 自分を顧みず人助けをしようとする考えは見習いたいと思うが、今回ばかりは少し困ったな。
 しかしこれ以上の説得は無意味な事は、長い時間を共にしていなくても理解している。
 だから――――。

「ガァ⁉」

 走り出しの無防備にな体勢を狙って首元に手刀を叩き込む。
 俺からの攻撃を予測していなかった彼女はあっという間に気絶し、地面に触れる前に彼女を受け止めた。

「結界は張っておくから問題が片付いたら迎えに行く。あとラビスのことはお前らをからまじで頼んだぞ、何かあったら……分かるな?」

「分かっております! 安心してお任せください!」

 結界がラビスたちを囲うのを確認してから設営地に向けて動き出した。
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