死神と恐れられた俺、転生したら平和な時代だったので自由気ままな人生を享受する

オカさん

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魔物討伐試験

30話 セロブロの本気

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「ラビス、大丈夫か?」

「アルム⁉ 私、死んじゃったの……?」

 目をつむったままのラビスに声を掛けるが、混乱しているようで体のあちこちを触って生死を確かめている。

「死ぬどころか無傷で生きているよ。あいつらの魔法は俺の結界魔法で防いだからな」

 黒き空牢ローブ・ジエルド、俺が使用する魔法で最も殺傷能力が低い魔法だ。俺一人では使う機会などほとんどないが、誰かを守るために存在する魔法を行使できるというのは誇らしい。

「そっか、また助けて貰っちゃったね。ありがと――――」

「言っておくけど今回は完全に俺のせいだ。巻き込んじまって済まなかった!」

 予想していなかったのか俺の謝罪にラビスは面食らってしまう。
 だが謝って許されることではない。結界魔法を習得していたから彼女を無事に守れたが、それでなければ大怪我をさせていた。別の魔法で防ぐことも可能だろうが、ここまで安全な状況を作ることは出来なかっただろう。

「ラビスはここで待っててくれ。俺は外にいる奴らを痛い目に合わせてくる」

「ほ、程々にね……」 

 乗り気ではない様子で俺を見送る。
 殺意を向けてきた相手にすら怒りを露わにしないのは少し問題だが、今はあのクソ野郎共を痛めつけることに集中しよう!

 結界外へ出るとセロブロたちは怪訝けげんな顔を見せる。

「何故、貴様が生きている……」

 期待していなかったが謝罪もなしにセロブロが問い詰める。
 今すぐに魔法を撃ち込んでやろうと思ったが少しくらい話をしてやろう。

「分からないか? お前ら貴族が放つ子供騙しな魔法よりも平民おれの魔法のほうが凄かった。ただ、それだけ」

「子供騙し……! 図に乗るなよ愚民がァ!」

 セロブロに対して返答するも、激昂した様子の取り巻きが声を荒げる。

「セロブロ様、もう一度魔法を撃たせてください! 今度こそ息の根を止めてみせます」   

 取り巻きの四人は再度構築式を展開する。

「時間の無駄だ、その平民は僕が片付ける」

「そんな、セロブロ様のお手を煩わせることなど――――」 

「少し黙れ」

 セロブロの指先から繰り出された火球が取り巻きの顔を横切る。

「ヒィ……⁉」 

「貴族を名乗る者が獲物を仕留めそこなった程度で取り乱すな。見てるこっちが恥ずかしい」

「も、申し訳ありません……」

 俺を倒そうと躍起になっていた取り巻きたちは数歩ほど離れた。

「見苦しいモノを見せて悪かったな」

「へぇ、謝罪できるんだ。見直したよ」

「先程まで敬語を使っていたのが嘘のようだ。それが貴様の本性か?」

「本性……少なくともあんたに対して俺の態度はこんな感じさ。なにせ俺に勝っている要素が親の権力くらいなものだからね」

「……魔法成績も僕のほうが上だが?」

「じゃあここから生きて帰れると思うの?」

「…………難しそうだな」

 軽口のように飛び交う対話に生じた長い沈黙、その末にセロブロは答えを導き出したようだ。

「セロブロ様……」

「済まないお前たち。どうやら僕はとんでもない化け物に手を出してしまったらしい……」

「今ならクラスメイトの目の前で裸土下座はだかどげざすれば許さなくも無いですよ」 

「あまり見くびるなよ。エンドリアスの中枢を担うジクセス家がそんな馬鹿なことが出来るものか!」

 面白半分で言ってみたが少しからかい過ぎたようだ。

「誇りを守るのは結構……それじゃ俺を殺すしかないな」

「元よりそのつもりだ!」

 お互いに構築式を展開する。 

「【烈火放射フレイゾン】――――‼」

 焚きつける炎が濁流のように俺に向かって放たれる。

「【黒棘ブラックパレス】」

 迫り来る炎から身を守るように地面から黒棘を生成する。
 魔法学の授業でも見せていない高出力の火属性魔法、特異魔法でないにもかかわらずこれだけの火力と制御を可能にするまできっと血の滲むような努力をしたのだろう……。

「セロブロ様の魔法が、当たらない⁉」

「涼しい顔しやがって!」

「クソッ……」

 セロブロが放った炎は黒棘に激突するも、幾層にも重ねた俺の魔法を突破することは出来ず、逃げるように横を通り過ぎていく。
 あまりの実力差に取り巻きたちは騒ぎ出し、セロブロは苦渋の表情を見せる。

「でもそれじゃあ俺には勝てねえよ」

「ごふッ……⁉」

 地面を通じてセロブロの腹部に黒棘を叩き込む。殺してしまわないよう先端を丸くする配慮はしておいた。
 もう少し待っても良かったが、木に燃え移って大火事になったら試験どころでは無い。試験時間も少ないしここら辺で止めておいたほうが良い。

「これが、貴様の本気か……?」

 仰向けに倒れたセロブロに歩み寄ると朦朧もうろうとする意識の中で尋ねてくる。

「分かってて聞くなんておかしな奴だな。今のお前に本気を出す価値はない」

「……そうか、次こそは本気を出させてやる」

 薄っすら笑みを浮かべてから意識を失った。

「見せて欲しいな。次があれば、だけど……」

 俺は次に取り巻き四人に狙いを定めた。
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