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生徒会
52話 学園の超新生
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「【魔黒閃】」
アルムは地面に向けて黒い熱線を放出し、爆発により大きな煙が彼らを覆いつくす。
「ごほッ、あれが例の黒い光線か……」
氷塊を打ち止めし、テイバンは灰眼を細めてアルムの接近に注意を払う。
(周囲に生徒がいるから撃てないと考えていたが……)
テイバンは勝負を挑む前に主にアルムを良く思わない生徒に限定してB組の生徒から彼の魔法について聞き回っていた。
多少の罪悪感こそあったが、勝利を掴み取るためには仕方ないと割り切ってこの戦いに臨んでいた。
一騎打ちのルール上、魔黒閃を放てなければ勝機が見えると考えていたため、テイバンの内心は穏やかでは無かった。
(どこから来る? 右か、左か――――)
首を振り回して周囲を見回すと地面から微細な震動を感じ取る。
「下か!」
反射的に跳躍した瞬間、無数の黒い棘が勢い良くせり上がった。
「【氷の壁】」
左手から厚さ数センチほどの氷壁を生成するも、防御が間に合わず左足を掠めとる。
「おらァ!」
黒棘を凌いだのも束の間、煙の中から漆黒の槍がアルムの声と共にテイバンに投擲される。
「【氷塊】」
氷壁では防ぎきれないと判断したテイバンは、槍との間に大きな氷を作り出して槍の軌道を逸らす。
(後手に回ってしまったが、ここから反撃――――⁉)
アルムの正確な位置を把握したテイバンは氷塊を生成するも、自身に人差し指を突き付けられている事に気付く。
「ここなら外野に当たらねぇだろ?」
「まさか⁉」
テイバンは再度、アルムとの間に氷塊と氷壁を展開する。
「【魔黒閃】」
が、しかし放出された熱線は射線上に存在する全て氷造形物を溶かし尽す。
「【万凍の冷気】‼」
生半可な魔法では止められないと悟り、突き出された左手から霧状の冷気が放たれ、熱線とぶつかり合い大爆発が起きる。
その衝撃は対戦者の二人を吹き飛ばし、観戦する生徒たちにも突風を浴びさせた。
「会長! これ以上は危険では?」
ミリエラは想像を超える戦いに藍色の長髪を押さえながら審判を務めるカルティアに打診する。
「……そうですね! ここまでの規模は想定外です、彼らの状態に関係なく終わらせることにしましょう」
カルティアは残念そうにしながらもこれ以上の状況悪化を防ぐため、適切な判断を下す。
「怪我した人はいますか?」
煙が立ち込めているが、衝撃が落ち着いたタイミングでカルティアは声を上げる。
生徒たちのざわめきは収まっていないが、怪我人は出ていないようだった。
「ライタード君! テイバン! 大丈夫ですか?」
生徒の安否を確認した彼女は対戦者の二人に声を掛ける。
「俺は、問題ありません!」
アルムは自身を中心に黒き空牢で囲み、衝撃を防いでいた。
「テイバン! 返事をしてください!」
しかしもう一人の安否が確認できず、声を上げて彼の名を叫ぶ。
「……ここです、姫様」
小さく返事しながら横たわっていたテイバンは上体を起こした。
「ああァ! 無事で良かったです……」
安心した余り本音を漏らすが、彼の体を見て顔を引きずる。
テイバンが着ていた制服は焼け焦げており、複数箇所で火傷も見受けられ、重傷とまではいかなくとも戦える状態では無かった。
(出力ミスったかな……)
アルムは心の中でテイバンに謝罪する。
魔物討伐試験以降は魔黒閃の練習をして出力方向の精度が上がったが、出力調整のほうはまだまだ未熟のままだった。
無論、殺さないように調整こそするが手加減できるほど余裕がある訳でもなかった。
「テイバン、貴方の負けです」
カルティアは彼の状態を見て采配を言い渡す。
「待ってください、姫さ――――じゃなくて会長! 俺はまだ戦えます!」
テイバンはその采配に異議を申し立てるが、痛みを耐えるのに必死だった。
「貴方は良く戦いました。その怪我で戦意が折れていないのも素晴らしいです。しかし挑んでも結果は変わりません」
「くっ……!」
彼女から告げられた言葉にショックを受ける。
しかしテイバンも心のどこかで薄々感じていたようですんなり納得した。
「……俺の負けだ――――」
「これで良いのか、テイバン先輩?」
彼の降参の言葉を被せてアルムが声を上げる。
「な、何を言っているんですか! ライタード君」
「カルティア先輩、本人が戦えるって言っているんですから、もう少し戦わせてあげませんか?」
彼女はアルムの滅茶苦茶な意見に押し黙る。
彼女自身は戦わせてあげたい気持ちもあるが、審判の立場上戦闘続行の判断は出来ないのだ。
「お前何様のつもりだ!」
カルティアが押し黙っていると観客の生徒が声を上げる。
「そうよ! テイバン先輩はもう戦えないのよ!」
「これ以上怪我人を痛めつけて楽しいのかよ!」
「少し強いからって調子乗んな!」
「平民の分際でそもそも生意気なんだよ!」
一人の生徒を皮切りに観客全体がアルムを非難し始めた。
「もうアルム、どうして素直に勝ちを受け入れないのかな……」
想い人が非難される中、ラビスはどうすることも出来ずその場でうずくまった。
「皆さん落ち着いてください!」
カルティアやミリエラなど生徒会役員が収めようとするも生徒たちの非難が収まることを知らない。
「何でこんなことに……」
テイバンは自身が招いた弱さを憎む。
そして非難の中心に晒されていたアルムは地面に触れ、天井に届いてしまうほどの黒棘を生成する。
「アルム君……?」
カルティアは生徒たちを黙らせようと魔法を発動したのかと思ったが、数百人規模の罵詈雑言が場内を渦巻いており、そう簡単に口を閉ざさせることは出来なかった。
「目には目を歯には歯を、耳障りな騒音には騒音を……」
そう言ってアルムはゆっくりと魔法の効力を消失させる。
その瞬間、ガシャァァン――――――――と黒棘が砕け散る。
その爆音は密閉された場内で大きく響き渡り、アルムを除く全員が耳を塞いだ。
数秒後、全ての黒棘を砕き終え、場内に静寂が訪れる。
「お前らこそ何様だ?」
静寂の空間の中でアルムの声だけが響く。
「テイバン先輩はもう戦えない? 怪我人を痛めつけて楽しい? なに勝手に決めつけてんだ。テイバン先輩はまだ戦えるっつってんだろ! 観客が決めることじゃねぇから」
粗暴な言葉遣いだが、非難した者に反論は出来ない。
「それに平民の分際? ああ、確かに公爵家と王族の人間に生意気だったと思うよ。でも俺はテイバン先輩の対戦者として彼を引き止めた。そして俺たちの審判としてカルティア先輩に意見したんだ。俺の立場で言うのもなんだが、彼らがこの勝負を持ち掛けたんだ。ならこの場では対等な関係――――ですよね?」
アルムは話題に出した二人に返答を求める。
「……勿論です!」
「……勿論だ!」
カルティアとテイバンはお互いに顔を見合わせた後、大きな声で返答する。
「彼の言う通りです。この場では私たちは対等な関係、その事実を非難する方々は私たちを非難するのと同義であることを理解していますか?」
「違います! 僕はその平民に注意しようとしたんです!」
「決してカルティア様を避難しようとは……」
アルムを非難した生徒たちは必死に弁明する。
「……被害者はアルム君です。貴方がたの処罰は彼に決めてもらいます」
判断をアルムに委ねられ、非難した生徒たちは顔を青ざめた。
彼は不敵な笑みを浮かべてから口を開く。
「処罰なんてありませんよ。形やどうあれカルティア先輩やテイバン先輩を気に掛けての事ですから」
アルムの恩情に生徒たちは安堵した。
「先の話の続きですが、なにも全身を使って戦えとは言ってませんよ」
「ではどういった戦闘を想定していたのですか?」
「お互いに一つの魔法を撃ちあって打ち消せたほうが勝つのはどうですか?」
アルムは動けないテイバンに配慮した戦い方をカルティアに提案する。
(それなら火傷を負ったテイバンにも勝ち目はあるけど……)
「会長! 俺に挽回するチャンスを下さい!」
アルムからの提案に頭を悩ませているとテイバンが申し出る。
「……分かりました。その戦いをもって勝敗を決めたいと思います」
「「ありがとうございます」」
要望を聞き入れてくれた彼女に二人は感謝を述べる。
「本当に大丈夫なのでしょうか、テイバン先輩は……?」
ミリエラはカルティアに耳打ちする。
「正しい判断とは言えないでしょうが、本人たちの申し出なら仕方ありません」
しかし彼女はテイバンが懇願してきたことに驚きつつもを嬉しさを滲ませていた。
(アルム=ライタード、彼はこれからの国に必要な人材になりそうね……)
カルティアは薄っすらと笑みを浮かべ、察したミリエラは彼女の傍を離れた。
アルムは地面に向けて黒い熱線を放出し、爆発により大きな煙が彼らを覆いつくす。
「ごほッ、あれが例の黒い光線か……」
氷塊を打ち止めし、テイバンは灰眼を細めてアルムの接近に注意を払う。
(周囲に生徒がいるから撃てないと考えていたが……)
テイバンは勝負を挑む前に主にアルムを良く思わない生徒に限定してB組の生徒から彼の魔法について聞き回っていた。
多少の罪悪感こそあったが、勝利を掴み取るためには仕方ないと割り切ってこの戦いに臨んでいた。
一騎打ちのルール上、魔黒閃を放てなければ勝機が見えると考えていたため、テイバンの内心は穏やかでは無かった。
(どこから来る? 右か、左か――――)
首を振り回して周囲を見回すと地面から微細な震動を感じ取る。
「下か!」
反射的に跳躍した瞬間、無数の黒い棘が勢い良くせり上がった。
「【氷の壁】」
左手から厚さ数センチほどの氷壁を生成するも、防御が間に合わず左足を掠めとる。
「おらァ!」
黒棘を凌いだのも束の間、煙の中から漆黒の槍がアルムの声と共にテイバンに投擲される。
「【氷塊】」
氷壁では防ぎきれないと判断したテイバンは、槍との間に大きな氷を作り出して槍の軌道を逸らす。
(後手に回ってしまったが、ここから反撃――――⁉)
アルムの正確な位置を把握したテイバンは氷塊を生成するも、自身に人差し指を突き付けられている事に気付く。
「ここなら外野に当たらねぇだろ?」
「まさか⁉」
テイバンは再度、アルムとの間に氷塊と氷壁を展開する。
「【魔黒閃】」
が、しかし放出された熱線は射線上に存在する全て氷造形物を溶かし尽す。
「【万凍の冷気】‼」
生半可な魔法では止められないと悟り、突き出された左手から霧状の冷気が放たれ、熱線とぶつかり合い大爆発が起きる。
その衝撃は対戦者の二人を吹き飛ばし、観戦する生徒たちにも突風を浴びさせた。
「会長! これ以上は危険では?」
ミリエラは想像を超える戦いに藍色の長髪を押さえながら審判を務めるカルティアに打診する。
「……そうですね! ここまでの規模は想定外です、彼らの状態に関係なく終わらせることにしましょう」
カルティアは残念そうにしながらもこれ以上の状況悪化を防ぐため、適切な判断を下す。
「怪我した人はいますか?」
煙が立ち込めているが、衝撃が落ち着いたタイミングでカルティアは声を上げる。
生徒たちのざわめきは収まっていないが、怪我人は出ていないようだった。
「ライタード君! テイバン! 大丈夫ですか?」
生徒の安否を確認した彼女は対戦者の二人に声を掛ける。
「俺は、問題ありません!」
アルムは自身を中心に黒き空牢で囲み、衝撃を防いでいた。
「テイバン! 返事をしてください!」
しかしもう一人の安否が確認できず、声を上げて彼の名を叫ぶ。
「……ここです、姫様」
小さく返事しながら横たわっていたテイバンは上体を起こした。
「ああァ! 無事で良かったです……」
安心した余り本音を漏らすが、彼の体を見て顔を引きずる。
テイバンが着ていた制服は焼け焦げており、複数箇所で火傷も見受けられ、重傷とまではいかなくとも戦える状態では無かった。
(出力ミスったかな……)
アルムは心の中でテイバンに謝罪する。
魔物討伐試験以降は魔黒閃の練習をして出力方向の精度が上がったが、出力調整のほうはまだまだ未熟のままだった。
無論、殺さないように調整こそするが手加減できるほど余裕がある訳でもなかった。
「テイバン、貴方の負けです」
カルティアは彼の状態を見て采配を言い渡す。
「待ってください、姫さ――――じゃなくて会長! 俺はまだ戦えます!」
テイバンはその采配に異議を申し立てるが、痛みを耐えるのに必死だった。
「貴方は良く戦いました。その怪我で戦意が折れていないのも素晴らしいです。しかし挑んでも結果は変わりません」
「くっ……!」
彼女から告げられた言葉にショックを受ける。
しかしテイバンも心のどこかで薄々感じていたようですんなり納得した。
「……俺の負けだ――――」
「これで良いのか、テイバン先輩?」
彼の降参の言葉を被せてアルムが声を上げる。
「な、何を言っているんですか! ライタード君」
「カルティア先輩、本人が戦えるって言っているんですから、もう少し戦わせてあげませんか?」
彼女はアルムの滅茶苦茶な意見に押し黙る。
彼女自身は戦わせてあげたい気持ちもあるが、審判の立場上戦闘続行の判断は出来ないのだ。
「お前何様のつもりだ!」
カルティアが押し黙っていると観客の生徒が声を上げる。
「そうよ! テイバン先輩はもう戦えないのよ!」
「これ以上怪我人を痛めつけて楽しいのかよ!」
「少し強いからって調子乗んな!」
「平民の分際でそもそも生意気なんだよ!」
一人の生徒を皮切りに観客全体がアルムを非難し始めた。
「もうアルム、どうして素直に勝ちを受け入れないのかな……」
想い人が非難される中、ラビスはどうすることも出来ずその場でうずくまった。
「皆さん落ち着いてください!」
カルティアやミリエラなど生徒会役員が収めようとするも生徒たちの非難が収まることを知らない。
「何でこんなことに……」
テイバンは自身が招いた弱さを憎む。
そして非難の中心に晒されていたアルムは地面に触れ、天井に届いてしまうほどの黒棘を生成する。
「アルム君……?」
カルティアは生徒たちを黙らせようと魔法を発動したのかと思ったが、数百人規模の罵詈雑言が場内を渦巻いており、そう簡単に口を閉ざさせることは出来なかった。
「目には目を歯には歯を、耳障りな騒音には騒音を……」
そう言ってアルムはゆっくりと魔法の効力を消失させる。
その瞬間、ガシャァァン――――――――と黒棘が砕け散る。
その爆音は密閉された場内で大きく響き渡り、アルムを除く全員が耳を塞いだ。
数秒後、全ての黒棘を砕き終え、場内に静寂が訪れる。
「お前らこそ何様だ?」
静寂の空間の中でアルムの声だけが響く。
「テイバン先輩はもう戦えない? 怪我人を痛めつけて楽しい? なに勝手に決めつけてんだ。テイバン先輩はまだ戦えるっつってんだろ! 観客が決めることじゃねぇから」
粗暴な言葉遣いだが、非難した者に反論は出来ない。
「それに平民の分際? ああ、確かに公爵家と王族の人間に生意気だったと思うよ。でも俺はテイバン先輩の対戦者として彼を引き止めた。そして俺たちの審判としてカルティア先輩に意見したんだ。俺の立場で言うのもなんだが、彼らがこの勝負を持ち掛けたんだ。ならこの場では対等な関係――――ですよね?」
アルムは話題に出した二人に返答を求める。
「……勿論です!」
「……勿論だ!」
カルティアとテイバンはお互いに顔を見合わせた後、大きな声で返答する。
「彼の言う通りです。この場では私たちは対等な関係、その事実を非難する方々は私たちを非難するのと同義であることを理解していますか?」
「違います! 僕はその平民に注意しようとしたんです!」
「決してカルティア様を避難しようとは……」
アルムを非難した生徒たちは必死に弁明する。
「……被害者はアルム君です。貴方がたの処罰は彼に決めてもらいます」
判断をアルムに委ねられ、非難した生徒たちは顔を青ざめた。
彼は不敵な笑みを浮かべてから口を開く。
「処罰なんてありませんよ。形やどうあれカルティア先輩やテイバン先輩を気に掛けての事ですから」
アルムの恩情に生徒たちは安堵した。
「先の話の続きですが、なにも全身を使って戦えとは言ってませんよ」
「ではどういった戦闘を想定していたのですか?」
「お互いに一つの魔法を撃ちあって打ち消せたほうが勝つのはどうですか?」
アルムは動けないテイバンに配慮した戦い方をカルティアに提案する。
(それなら火傷を負ったテイバンにも勝ち目はあるけど……)
「会長! 俺に挽回するチャンスを下さい!」
アルムからの提案に頭を悩ませているとテイバンが申し出る。
「……分かりました。その戦いをもって勝敗を決めたいと思います」
「「ありがとうございます」」
要望を聞き入れてくれた彼女に二人は感謝を述べる。
「本当に大丈夫なのでしょうか、テイバン先輩は……?」
ミリエラはカルティアに耳打ちする。
「正しい判断とは言えないでしょうが、本人たちの申し出なら仕方ありません」
しかし彼女はテイバンが懇願してきたことに驚きつつもを嬉しさを滲ませていた。
(アルム=ライタード、彼はこれからの国に必要な人材になりそうね……)
カルティアは薄っすらと笑みを浮かべ、察したミリエラは彼女の傍を離れた。
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