死神と恐れられた俺、転生したら平和な時代だったので自由気ままな人生を享受する

オカさん

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生徒会

53話 黒憑

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 数分の休息を挟んだ後、俺とテイバンは勝負前の立ち位置に戻る。
 周囲は黒棘や氷が散乱しているが、戦いに影響はないためそのままである。

「アルム=ライタード、俺に挽回ばんかいする機会を与えてくれたこと、心より感謝する」

「お気になさらず、俺も不完全燃焼で終わりたくなかっただけですから」

 このまま勝負を終わらせてカルティアの真意を聞き出しても良かったが、テイバンほどの実力者と剣を交えるなんてそう多く無い。
 レイゼンが敵と分かった今、戦闘経験は積んだほうが良い。

「……これからの勝負内容で訂正して欲しい所があるのだが、良いだろうか?」

「ええ、何でしょうか?」

 先程提示した勝負内容を思い出しながら彼の意見に耳を傾ける。

「俺は全ての魔力をつぎ込んでひとつの魔法を発動させ、その魔法でお前を倒すつもりだ。だからお前も全力で俺を倒しに来て欲しい」

「なァ⁉」

 カルティアは驚愕の声を漏らすも、すぐに平静をよそおう。
 テイバンの意見を要約すれば、最初に決められたルールに従って戦って構わないということ。
 
「俺は戦闘の幅が広がるに越したことは無いので口出しするつもりはありませんが……」

 俺はカルティアを一瞥いちべつする。

「……これから始まる戦いは言わば貴方たち二人が取り交わした勝負です。審判としての役割は果たしますが、戦い方は両者の判断に委ねます」

 彼女は本音を隠して淡々と告げ、テイバンは軽く頭を下げる。
 本当であれば、テイバンが不利になってしまうこの状況をどうにかしたいと思うだろうが、本人たっての希望であるのなら自分が騒いでも仕方ないと考えたようだ。

「じゃあテイバン先輩の勝負内容で乗ってあげます。でも自分の不利な条件にした上で、取るに足らない魔法だったら承知しませんよ」

「それなら心配に及ばない。勝負内容を訂正した理由は、お前が負けたあとで言い訳させないためだからな」

 煽り口調で言い放つとこちらも言い返されてしまう。
 この状況から逆転できると豪語できるほどの魔法、実に楽しみだ。

「……では双方、魔法準備に取り掛かってください」

 審判の掛け声とともに、テイバンは頭上に冷気を集める。
 戦いの合図はテイバンの魔法が完成した時、俺も準備時間は設けてもらったが、今は彼の魔法に注目しよう。

「あの魔法って……」

「『一対一ワオン・デュエル』で見せたやつか?」

「これは分かんなくなってきたぞ!」

 生徒たちは聞き馴染みのない単語を口にする。

「……ひとつ訊きたい。お前はこの国が好きか?」

 冷気を集めている中、王族の前で答えにくい内容を尋ねられる。
 何故そんな事を聞くのか? そんな野暮な事を聞ける雰囲気ではないのは分かる。
 まあ好きか嫌いかの二択に迫られれば――――。

「好きですよ、この国には良い人がたくさん居ますから」

 ここは模範解答のような返答をしておこう。
 細かく言えば、良いところも悪いところもあるがこの場で問われているのは二択である以上、これが最適解だろう。

「そうか、ありがとう……」

 テイバンは感謝を告げると準備を終えたのか冷気を集めるのを止める。

「綺麗……」

 女子生徒は彼の頭上に咲く一輪の大きな花を見て、静かに呟いた。

「戦いの準備は出来ましたか?」

 カルティアの質問に俺たちは頷く。

「では、始め!」

「【千花氷結せんかひょうけつ】」 

 テイバンは花の氷造形を高速回転させ、無数の花びらを散らせると俺に仕向けた。
 俺は花びらを回避しようと横に流れて移動するも進路を変えて追尾してくる。

追尾ホーミングか……」

 魔法特性に追尾や遠隔操作を付与されている場合は術者を倒せばその特性は失われるが、それは向こうも理解しているのようで残りの花びらを自身の周囲に隙間なく覆わせていた。

 俺は追尾する氷花を避けながら短剣をテイバンに向けて投擲とうてきする。
 彼を覆う氷花に触れると瞬く間に刀身が凍り付き、地面に転げ落ちた。

「マジ……!」

 想像を超える魔法影響力の高さに驚嘆きょうたんの声を漏らしてしまう。
 高密度の魔力で生成した短剣が凍り付いてしまうということは、テイバンの魔法影響力は黒器創成くろきそうせいの魔力密度を遥かに上回っているということだ。
 この場合、彼の魔法影響力を突破できる魔法なんて魔黒閃くらいだろうが、出力をミスればテイバンどころか生徒にも被害が出てしまう。
 
「こうなったら飽和魔力物質オーバーマテルで斬り掛かる……いや無理」

 飽和魔力物質であればどんな魔法影響下だろうと突破できるが、接近することは必然。魔法抵抗レジストをしようとしてもあの氷花に触れれば、数秒でガチガチに凍らされてしまう。
 術者を倒して魔法を消滅させるのが先か、俺の氷像が出来るのか先か、分が悪い賭けなのは変わらない。
 俺は接近せず飽和魔力物質を混入させた武器を投擲するのも良いが、氷花のせいでテイバンの位置が特定できない。仮に山勘で投げたとしても向こう側の生徒に当たってしまう危険性もある。

「まじでどうするかな……」
 
 追尾する氷花を避けながら隙を見て黒棘で牽制けんせい、あとはテイバンの魔力が尽きるのを待つしか――――。

 後退する一瞬、反応が遅れて右手が氷花に触れてしまう。

「――――っぶねェ!」

 さらに地面を蹴って大きく距離を取るが指先が凍ってしまった。
 強烈な冷気に充て続けられたせいで少しずつだが感覚が鈍化し始めている。

 時間を稼いでも優位に働かない、もう一か八か魔黒閃を撃つしか――――いや、出力をミスらない自信がない。
 出力の調整が容易で、魔法影響下でも高い突破力を有していて、周囲の被害も出させない、そんな魔法でもあれば…………あれなら出来るかもしれない!

 何気に一度も試した事が無いから確信は持てないけど、ルールに接触するという最悪の事態は避けれる。

「やるしかねェ……」

 俺は長剣を生成し、テイバンに向かって走り出した。

「自ら飛び込んでくるとはな! 氷漬けにしてやる!」

 テイバンは俺の不可解な動きムーブに動揺することなく、追尾する氷花と自身を覆う氷花で挟んで迎え撃つ。
 
 そんな命の危機が差し迫る状況の中、俺は落ち着いて刀身と体表に黒い魔力を纏わせた。 

 構築式を用いないを魔法と呼ぶには少し厚かましいかもしれない。

「だが、敢えて名付けるなら――――【黒憑クロウヴィル】」

 テイバンを覆う氷花に魔力を纏わせた長剣で斬り掛かる。

「何やってんだアイツ⁉」

「自殺行為だろ!」

 無謀すぎる行動に生徒たちは再び騒ぎ出す。
 テイバンに到達する前に氷漬けにされる、場内にいるほとんどの人間が同じことを考えただろう――――。

「そんな陳腐ちんぷな思考しか出来ない奴は補習決定だ!」

 直後、氷花はまるで突風でも吹かれたかのように刀身を避けた。  

「……何だよ、あれ!」 

「剣から……魔力が、!」

 今度は俺の剣技に生徒たちは騒ぎ出した。

魔法抵抗レジスト……いや違うな、それは何だ」

 氷花を斬り裂くと驚き顔でテイバンが尋ねる。

「この規模は見たことないでしょうから分からないのも無理はないです。これは武器に魔力を纏わせているんです」

「武器に魔力を……? 嘘を吐くな、そんな魔力操作でそこまでの現象を引き起こせるものか!」

 正直に話すもテイバンを含め、会場の人たちには信じてもらえてない様子。
 まあ比喩ひゆ抜きで剣から黒い魔力が噴出している状態を魔力操作と言われても納得は難しいか。

「教えてあげたいですけど今は戦いの途中なんでその後で良いですかね」

「この状況で戦いの途中だと抜かすのか……」

 テイバンの位置が特定できなかったため、打つ手が黒憑これしかなかったが、今では特定どころか完全に視認できている。

「不安症なもので、ぜひ勝敗を聞かせてください」

「……ったく。会長、俺の負けです」

「――――この勝負、アルム=ライタード勝利です!」

 カルティアは勝者を宣言すると生徒たちはわっと湧き上がる。

「副会長に勝つなんて、隊長クラスは本当だったんだな!」

「ビルフォート様、お疲れさまでした!」

「今年の魔導大会は荒れる予感!」

 先程まで非難していた連中とは思えない手のひら返しだが、こうして称賛されるのは悪くない。

「私はさきに生徒会室に戻っています。治療が終わったら来てくださいね」

 カルティアはそう耳打ちすると熱狂に包まれた演習場を去って行った。
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