寂しい幽霊の生かしかた

六二三(ろにさ)

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青信号

フレンド・イン・ザ・ルーム

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──the elephant in the room



誰もがそこにいる(ある)と認識しているけれど、あえて触れずに気付かないふりをする状況を表す

──────────────────

七月二十二日。高校二年の夏休み初日。

梓月しづきはほの暗い部屋を照射する電灯を見つめている。

黒く肩に触れるほど伸びた髪は、毛先が不揃いで傷んでいる。蜂蜜色と薄花色のオッドアイが長い前髪から覗かせていた。

この部屋には、カーテン越しに差し込む光も、窓の外の喧騒もない。このまま、誰にも見つけられずに往生を遂げるのか。

 ふと、部屋が冷気を増して寂びれた心地になる。霜風の出処を見ると、毛布を被り現今にそぐわぬ書生服を着た友人の姿があった。

いや、人ではない。暗がりの中なのに薄らと光を帯びており、透けた身体の向こうには午前三時を示した壁掛け時計が見える。

梓月は、どうせ夢だと悟るも、それの顔を見て不愉快な表情を顕にした。都合の良いように生み出した存在が何故泣くのか

「なんでこんな夢ばっかり」

「違うよ」

 記憶から薄れつつあった友の声が鮮明に聞こえた。

「なんだよ、ただの幻の癖に」

「ほんとうだったら?」

「本当なわけ、だってお前」

 梓月の表情は青白く、額からは脂汗が滲み出ている。

「この前死んだじゃないか」

「ごめんね、ずっと待たせてしまって」

 D君でぃーくんはそっと手を伸ばすも、梓月の目の前でしまいこむ。そして、何か言いたげに己の手と面食らった梓月を交互に見ている。けれども、梓月の沈黙に耐えられずに口癖を零す。

「ごめんなさい」

 梓月は、半分起き上がった身体を再び床に落とす。

「寝させて」

「う、うん! 顔色悪いもんね……」

 鼻につく言葉選びの下手さに覚えがある。一度寝て考えよう。朝になればわかることだ。

「梓月くん!」

 混濁した目に友が飛び込んでくる。高校一年生の夏にプールサイドで肌を寄せ合い、暖をとっていたことを思い出す。友の傍が寒いと感じたのは、この日が初めてだった。



 夢を見た。そこは真っ暗で冷たい場所。気がつくと、そこにはD君がいるいつもの夢。

「どうして、僕を置いて行ったの?」

 震えながら俯いているD君を、見つめていた。

「僕は、ずっと待ってたのに」

 友の声は、掠れていて苦しそうだった。ふわりと漂うD君の手に触れようとする。

「もう、疲れちゃったなあ」

 D君がそう呟いた瞬間、目が覚めた。
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