悪役令嬢だと気づいたので、破滅エンドの回避に入りたいと思います!

飛鳥井 真理

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第一章 目覚めた記憶

第15話 ご褒美のケーキ

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「……成る程。つまり、フレデリック様もお嬢様と同じ未来視を体験された……と」

「ええ、そうなんですの」

「お嬢様お一人だけならともかく、他にも同様の方がいらっしゃったとなると……これはもっと真剣に取り組まなくてはいけませんね、セレス」

「ええ。勿論ですわ、アリス。今日からでも警戒レベルを上げましょう」

 今回も上手いことやって主人から話を聞き出した双子は、顔を見合わせると真剣な表情で頷き合う。



「では、フレデリック様のお使いになる影とも、連携をとったほうがよろしいですわね」

「そうですわね。というわけでお嬢様、お身の安全を確保するためにも、フレデリック様の影と繋ぎをとること、お許しくださいませ」

「ええ、それは構わないけど、まずはケーキをいただいてから……」

「いいえ、どうぞ先にお手紙にしたためてください。一刻も早くご了承を得ませんと」

「ええぇ、今から? ケーキを食べた後じゃだめですの?」

「駄目ですっ。まずはお届けするのが先ですわ……ほら、お早く!」

「はぁ、わたくしのケーキ……」

「早くやればそれだけ早くケーキが食べれますよ、お嬢様。頑張ってください」

「分かりましたわよっ」




 というわけで早速、協力体制を取ることを提案し、その旨を記した手紙をセレスに託してお使いに行ってもらった。

 その間にアリス自慢の、ホイップクリームがたっぷり乗ったイチゴのケーキをサーブしてもらい、いそいそと引き寄せる。


 ――ふわぁぁっ、もう、見れば見るほど美味しそうですわぁ。


 でも今なら分かる。このケーキが暴力的なほどのカロリーの塊だということが! だからアリスがたまにしか作ってくれなかったのだということも……。

 早速、一口分をサクッ切り取ると、ワクワクしながら口に運ぶ。

 キメが細かくしっとりとした生地がシュワシュワと口の中でほどけ、スポンジの間に挟まっている濃厚なバターミルクの風味と、それに絡まりつくイチゴの酸味がまた程好くて……いつもながら素晴らしい。

 絶妙で味わい深いハーモニーが、口の中いっぱいに広がっていく……これぞ至福の味です。

「美味しいわ……生きてて良かったぁ」

「ふふふっ、それはようございました」

「ええ、とっても幸せよ。次は是非、アップルパイが食べたいわ」

「そうですね……では、甘さ控えめでよろしければ明日にでもお作りいたします」

「お願いね!」

「はい、承りました」



 念願のケーキを前に、若干浮かれ気味に堪能しながら食べていると、アリスが言った。

「そうそう、シリル様からお手紙が届いておりましたよ」

「まあ、三日前にもお返事を出したばかりですのに……もうですの?」

「そのお手紙の内容を……だと思いますけれど?」

「……やっぱり、アリスもそう思う?」


 ――婚約者であるシリル様相手に、手紙ひとつで直接挨拶もせずに王立学院を転校したのはまずかったか……。




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