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第一章 目覚めた記憶
第23話 朝から修羅場!?
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「ごきげんようヴィヴィアン様、そしてお久しぶりですわ、フレデリック様。朝からお二人でご一緒に登校されていらっしゃるとは……随分とお仲のよろしいこと」
「リリアンヌ……どうしてここに」
「あら、どうして……なんて。私、婚約者である貴方様に会いに来ただけですのよ。私が来てしまっては何か不都合がございましたか?」
「不都合だなんてそんな……思いがけずこうして君に会えて、とても嬉しいよ。ただ、少し誤解してるんじゃないかなぁ……なんて思ったものだから……」
「誤解? この状況で誤解も何もないのでは? 噂の真相を見せつけられた気分でございますわ」
「うん、やっぱり誤解しているよね!?」
リリアンヌ・マリー侯爵令嬢……。
王立学園に通っているはずのフレデリック様の婚約者で私の友人。
フレデリック様が私を追いかけてこの学園に来たのではという噂をすっかり信じてしまわれたようで、爽やかな朝にはふさわしくない、ドロドロした怨念を背後に背負っていらっしゃいます。
そんな凄みのあるお姿ながら、あくまでもにこやかで可憐な微笑みを浮かべ、淑女らしさを決して崩さないというミスマッチさが異様な雰囲気を漂わせており……お怒りの深さが感じとれて大変怖いです。今すぐここから逃げ出したい。
皆様、ごきげんよう。
のっけから修羅場に巻き込まれ、頭が痛いヴィヴィアンです。
突然、前世の記憶が甦り、この世界が乙女ゲームに酷似していることに気づいてから早、一ヶ月。
私が悪役令嬢で、ヒロインさんが成り上がる為の踏み台にされるという、悲惨で過酷で散々な未来が待っていると知って愕然としたあの日から、全力で回避を目指して突っ走ってまいりました。
昨日、魔法学院の入学式初日に一気に綻び始めてしまうまでは、順調そのものだったのです。
何故か自分の婚約者とは別の攻略対象に構われたり、その方とヒロインさんまでが同じ記憶持ちの転生者だと判明したりと予想外な展開が待っていて……。
只々、翻弄され続けていた一日がやっと終わったと思ったら、これですわ。
恐れていた事態が起こってしまいました。
迅速に対応出来なかった付けが翌日にもう、回ってきたようです……早すぎではありませんこと?
「違うんだ、リリアンヌ。信じて欲しいっ。ヴィヴィアン譲とは本当に何でもないんです」
「フレデリック様、分かっていましてよ。こういう時、殿方は皆様そのようにおっしゃるそうですわ」
「な!? ちょっ、だ、誰がそんな余計なことを貴女に吹き込んだんだっ」
「シリル様ですわ……ヴィヴィアン様の婚約者の。同じ悩みを抱える者として、ご相談に乗っていただいておりました。 私情を挟まず客観的に物事を見れるシリル様のご意見は大変為になりますもの」
「いや、だから手紙にも書いた通り、僕達は本当に運命に立ち向かう同士として以外、やましいことは何もないんですっ」
「まあぁっ、運命に立ち向かう同士……とは。何ともロマンチックな間柄ですわねぇ?」
ちょっ、フレデリック様!?
リリアンヌ様を煽ってどうしますのっ……さすがに恋愛音痴の私でも今のはまずいと分かりましてよっ。
間違ってはいないですけれど、その言葉のチョイスは最悪ですわーー!?
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