悪役令嬢だと気づいたので、破滅エンドの回避に入りたいと思います!

飛鳥井 真理

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第一章 目覚めた記憶

第32話 準備万端?

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 今日は午前中に授業があったため、自由時間は午後からの数時間だけだ。

 時間が惜しいのでギルドの近くまでは馬車で向かうことにする。極力目立ちたくないと、実用重視の木製の馬車一台を用意し、フレデリック達と相乗りすることでコンパクトに移動する事に成功した。

 前回、メイドと執事を連れた魔法学院の生徒という、えらく目立つ格好で乗り込んでしまった点も反省して、全員が一見平民に見える服装を取り揃えた。

 丈夫なのが取り柄の地味な色合いの服だが、前世の記憶がある二人は何か落ち着くなぁと心の中で密かに思いながら、抵抗なく袖を通す。素朴な見た目に反して着心地は良いいのも嬉しかった。

 一応、下には魔法糸を織り込んだ、そこんじょそこらの甲冑よりも頑強で高価な下衣を着込んでいる。
 これは防御の為にも絶対に来てくださいとメイド達から強く押し付けられたものだ。見えなければセーフだろうと、大人しく従った。

  革製の胸当てや籠手、頑丈なロングブーツや魔法使い用のローブなどの他にも、短剣や弓、剥ぎ取りナイフなども華美でない実用的なものを用意してもらい、装備していく。

 出来上がったのは、ギルド登録したばかりの初心者には過ぎた格好の若者達の一団だったが、アリスによると、まあ小金持ちの庶民ぐらいに見てもらえるだろうということだった。



「あれからギルドの依頼を調べましたところ、僕たちが受けれる依頼だと今現在大発生している水路に湧いたスライム退治があるようです」

「まあ、スライムですか」

「ええ。これなら街中ですから移動時間がかかりませんし、今は何時でもギルドで受理してくれるそうですからいいのではと、シリル様も賛成なさっていまして……」

 ギルドに着くまでの間、馬車の中でフレデリックが今日の方針を話してくれた。シリル様も賛同済みなら丁度いい依頼なんだろう。

「お調べいただきありがとうございます。わたくしもそれで構いませんわ」

「良かった」



 F級冒険者には、魔物退治の依頼は少ない。貴重な討伐依頼と言えた。この国には緩やかに四季があるのだが、スライムというのは冬季以外の気温が高くなる時期に突発的に増えてしまう傾向にあるらしい。今年に入ってからは初めて観測されたようだ。

 大量発生したばかりならまだ最弱だろし、初戦の相手としては丁度いいだろう。

 魔物を倒した事で得られる経験値は、スライムだと微量なので、発生直後だとF級冒険者以外には人気のない依頼らしい。なのでこの時間でも残っているんだとか。

「初動を間違えるとスライムってどんどん強くなってしまうからね」

「そこがスライムの厄介なところですわよね」

 魔力が存在するこの世界では、全ての動植物や鉱物、空気中や水の中にも魔力が宿っている。

 そして、その魔力を何処からでも吸収できる能力が一番高いのが、スライムなのである。火山の中や雪の中もへっちゃらだし、海にも砂漠にも何処にでも対応出来てしまう。

 「うん。水路にいるだけでも、水から魔力を吸収しまうしね。何でも食べてしまうし食べたものの力も取り込んで、どんどん成長してしまうから。ギルドとしては早く封じ込めたいだろうし」

「はい、強くなる前に倒しきりたいですわね。門限までの限られた時間ですが頑張りましょう」

「うん、そうだね」 




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