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第一章 目覚めた記憶
第68話 ヒロイン爆誕!
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――『ルチル・ヒューシャ』になる予定のわたしには、誰にも言えない秘密があるの。
それは、前世の記憶を持ったまま生まれてきたってこと。俗に言う転生者ってことね。
どうしてこうなったかはわたしにも分からないけれど、でもとってもラッキーだったと思う!
だって、大好きだった乙女ゲームの世界に生まれ変わることができたんだもんっ。
初めて鏡の中に映る、幼い自分の姿を見た時に衝撃を受けて、これってヒロインのスチルそっくりじゃんってことで記憶を取り戻したんだ。
その時はもう嬉しくて嬉しくて、思わずやったーって叫んじゃった!
しかもプレイした乙女ゲームの中で一番好きでやり込んだ『恋の華が咲くまで~学園編~』の世界のヒロインとかっ、最高過ぎないですか!!
いつも画面越しに見て羨ましいなって思っていた、庇護欲をそそる超絶可愛い可憐な美少女がわたしってっ、すごくない!?
――前世のわたしはまあつまらない奴だったよ、うん。
どこにでもいる平凡な女の子で、クラスでも埋没していたしね。
顔も頭の中身も特別に悪いってわけではないものの、努力してどうにかなるものでもなかった。
何をしても無駄だって、色々諦めてた。当然、彼氏もいなかったよね。
でも、今世は違う。誰もが私を見て可愛いって言ってくれるし(わたしもそう思うっ)、両親にも溺愛されている。
ヒロインの、と言うか現世でのわたしの両親はシナリオ通り大きな商家を営んでいてとっても裕福で、欲しいものは何でも買い与えくれた。滅茶苦茶好い人たち。
全く、前世の親とは大違いだよ……アイツらは最悪、思い出したくもない。
いっつも派手に夫婦喧嘩してたし、何かあるとすぐ八つ当たりしてくるし、お金にもケチくさくて煩かったし。
お前はダメだ出来損ないだっつって貶してくるし、褒められたことなんてない。
物理的に殴られはしなかったけど、精神攻撃が酷くてヤバかった。
ま、いわゆる毒親って奴?
本当、最悪だったよね。
だから最初にここが『恋の華が咲くまで~学園編~』、コイサクの世界だって分かった時は、前世の知識を生かして、知識チートでもしてやろうと思ったんだ。誰も見たことのないような新商品を作ったら面白いかなって。
今の優しい両親のため、何か役に立つことをしたかったんだよねぇ。
だけどそう上手くはいかなかった。
ここには既に、わたしが考え付くような便利家電や美容用品、美味しい料理のレシピまで揃っててさ……わたしの拙い知識では入り込む余地はなかったんだよ。
でも両親はその気持ちだけでも嬉しいって言って褒めてくれたし、喜んでくれた。
そういえばコイサクって日本の乙女ゲームだし、異世界が舞台とはいえ生活環境はほぼ変わらない設定だったっけ?
電力も魔力や魔石で代用できるんだもんね、うん。
ちょっとがっかりしたけど、何もしなくても快適なのは楽だし嬉しい。
まぁゲームのメインは攻略対象との恋愛だしね、別にいっかって思ったんだ。
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