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第11話 天賦の才能
しおりを挟む城内限定で、あらゆる方面からアホだのバカだの言いたい放題言われている王子なのだが、実は彼には他の誰にも真似できない、ある天賦の才に恵まれていたのである。
――それが、音楽の才能。
どんな難しい譜面も初見で暗譜しては完璧に引きこなし、どんな楽器でも一度見本を見せただけで自在に操り見事な音色を響かせる。
そして実はこの側近、王子の音楽の才能に心底、惚れ込んでしまっているのである。
もう大ファンといってもいい。
側近の地位は、リサイタル以外で希少な弾き語りや未発表の楽曲などを間近で聞けるとあって手放し難い。
それに、彼に限らず王子の奏でる音楽の虜になり、少しでもお側で仕えたいと願う者も多く、狭き門を突破してようやく手に入れたポストでもある。
離職者も少ないのは熱心なファンだからというのもあるが、本人が横暴ではなく、案外素直なところもあるのでバカで目立ちたがりなところだけ目をつぶれば仕えやすいからかもしれない。
というわけで意外なことに男女共、側仕えになるには非常に競争率が高いのであった。
故に王子の周囲には、自然と優秀な人材が揃ってしまっている。
その彼らの優秀な頭脳は現在、どう活かされているか……言うまでもないだろう。
王子の起こす騒動の後始末に、全力で発揮されていたのである……。
リリアナの兄が、アレクシスのことをバカ王子として有名だと言っていたが、本当にそうだと知っているものは意外と少ない。
一部の上位貴族と、ポアロ家のように情報収集を怠らない者達のみで、一般的に真実は知れ渡ってはいないのだ。
むしろ、音楽の天才としての名声の方が広まっていた。
バカだのアホだのという醜聞は全くない訳ではなかったが、それも名声をやっかんだ者たちが流した悪質な噂だろうと認識されており、あまり相手にされていない。
これこそが、王家と婚約者であるイリーナの実家の公爵家、そしてアレクシス王子の元に集まったファンと言う名の側近達による、涙ぐましい工作活動の成果であった。
それはともかく、初めてアレクシス王子の才能が開花したときには、それはもう大変な騒ぎになったものだ。
普段の王子を知っていればいるほど、あまりのギャップにパニックになる人が続出。王宮中が大騒ぎになった。
そして、息子のおバカ具合に頭を痛めていた両親はと言うと……。
音楽に出会ったことで天賦の才能を発揮した息子に、狂喜乱舞する。
「さすが我々の息子だ! なんて素晴らしい! あれが作曲したという歌曲を聞いたか!?」
「もちろんですわっ。わたくし、感動のあまり思わず泣いてしまいましたの」
「うむ。実によく分かるぞ、王妃よ。我も同じ気持ちだ」
「そうでしょうとも。実は陛下、わたくしね、あの子が生まれた時から只者ではないと思っておりましたのよ!」
……確かに今までも只者ではないバカだったので、王妃の勘は間違いではない。
「そうかそうかっ。そうだったのか! さすがは我が妃、先読みの才があるな!」
「オホホホッ、当然ですわぁ! なんといってもわたくし、天賦の才を持つあの子の母親ですもの!」
上機嫌な二人は、一度は断念したアレクシス専用の特別な王子教育を再開させることになった。
それは外交に特化した教育で、王子が成長し、徐々に稀有な容姿が明らかになってきた時に一度、決めた方針でもある。
第三王子という身分と自らの特性を生かし、外交で活躍してくれることを期待して専門の教師をつけたのだ。
他を圧する美というのは、そこにあるだけで場を制する。
諸外国との外交おいてきっと、彼の美貌と美声は大きな武器になる、と。
「才能を開花させた今のアレクシスならいけるんじゃないか? 我は無限の可能性を感じるぞ!」
「ええ、そうですわね。今度こそ、うまくいきそうな気がいたしますわ!」
しかし、そんな期待は早々に裏切られることになる。
残念なことに王子の才能は、音楽にしか発揮されなかったのだ。
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