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第10話 平穏な日常が戻ってきました
しおりを挟む魔族を勝利へと導いてくれた魔神様に、神殿で朝夕二回の感謝の祈りを捧げる。
戦が終わってからも、それが彼女の変わらない日課となっていた。
魔大陸に平和が戻って憂いがなくなり、魔王城の住民達に見守られながら、今日も楽しくモフモフライフを送っている紫音。
広すぎる庭を持つ魔王城なので、少しくらい増えても大丈夫だろうと心の赴くままにモフモフをゲットしていたら、ちょっとどころではなく大量に増えてしまった。
いつの間にか魔王陛下から贈られたカーバンクル以外にも、フェンリルやユニコーン、ミニドラやロック鳥と言った幻獣達で溢れかえることに……。
モフフサ好きの紫音と魔王陛下にとっては、魔王城をモフ達で占拠されようと喜びしかないのだが、城の住民達にとっては違う。思いっきり仕事の邪魔になっていた。
どんどん増える幻獣達が自由気ままに城内を闊歩するので、今日もばったり出くわした不運な誰かの悲鳴が廊下に響くことになる。
そんな賑やかな城内の中庭では、今日もモフモフ成分高めの幻獣達に囲まれた紫音が、幸せそうに戯れている。
のびのびと生活を謳歌している様子を、廊下の窓から見つめる者が二人。
無論、魔王陛下と魔導師長のコンビである。
「あぁ、あんなにモフモフにまみれて……また増えてますよ。どこから拾ってこられるのか。少しは陛下からも注意してくださいね」
「やだ。モフモフは正義だからね!」
「やだって何ですかやだって。シオンならともかく貴方が言っても可愛いくないですよ」
「魔導師長ってば酷い!」
「ハイハイ、酷くてもいいですから、もっとしゃんとしてください。陛下がそんなだから、シオンがいつまでたっても貴婦人らしく成長なさらないんですよ。后になって頂けるのはいつになることやら……」
「焦る必要はないさ。はぁ、それにしても可愛い。まとめてモフりたい」
「変態くさいことを言わないでください」
「上司に向かって重ね重ね酷い!」
「事実ですが?」
「んんっ……まあいい。でもシオンはね、今の平和な世の象徴だ。彼女の自然な姿と笑顔が皆を癒しているのは知っているだろう? 俺は良いことだと思うけど?」
「まぁ、それは……おっしゃることも分かりますが……」
結局二人に甘いところのある魔導師長は、魔王陛下に言ってやりたいあれやこれやをいくつも飲み込み、渋々認める事になる。
確かに彼女が召喚されて来るまでは、魔王城には人間族との終わりのない戦に対する閉塞感が漂っていたのだから……。
「だろ? さて、と。じゃあ、未来の花嫁と一緒にちょっと休憩してくるよ」
「陛下、この間みたいに城内を毛玉だらけになさらないでくださいねっ」
「はいはい、分かってるって。じゃあ、宰相や女官長の邪魔が入らないよう、よろしく頼むよ」
ひらひらと手を振って、魔王陛下は手近な窓から身軽に飛び降りる。
「あっ、こら陛下。いい年してお行儀が悪いですよ!」
「いい歳は余計だっ」
彼女の楽しげな笑い声が階下の庭園に響く。
「はぁ、今日も魔王城は平和ですね」
残された廊下で、人知れず深いため息をつく魔導師長だった。
ー完ー
最後までお読み頂き感謝します。ありがとうございました m(_ _)m
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