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第8話 落ち人
しおりを挟む「……なるほど。分かりました。多分、あなたは世界と世界の狭間に落ちてしまったのでしょう」
「世界の狭間?」
「はい。こことは別の異なる世界、異界はたくさん存在していると言われています。原因は不明ですが、何らかの衝撃が加わると狭間ができ、人や物が落ちてくるのです。あなたのような人を、この世界では落ち人と呼んでいるのですよ」
「落ち人」
アルフレッドは知らなかったが、神官さんは日本の事も知っていた。 神殿の資料には、過去に日本人が来ていた記録が残っているらしい。
マジでか! じゃあその記録を調べれば、帰る方法とかも案外簡単に分かるんじゃないか!?
この質問で明暗が分かれるかと思うと緊張するけど、確かめないわけにはいかない。ドキドキするなぁ、もう。
「あのっ。その人は元の世界に帰れたんでしょうか?」
「……いいえ。それがですね。記録によると生涯この世界で暮らされたとあるんです」
「ん?」
えっと……どういうことかなっ!? それって帰れなかったのか、それとも帰れたのに自分の意思で態々残ったのか、どっちなんだろう? そこんところ、かなり重要なんですけど!?
「じ、じゃあ他に、元の世界に帰った人の話とかは残ってたりはしませんか?」
「それが……私の知る限りでは、帰れたという落ち人の話はありませんでした。この世界には、異界に渡るような高度な移転技術もありませんし、そういったことは難しいかと……」
「そう、なんですか……」
つまり、もう元の世界に帰れない……と?
「はい。何しろ世界の裂け目というのは、偶然起こる自然現象みたいなものと言われてまして、専門家でも対処のしようがないようなのです……お役に立てず、すみません」
「いえ、そんなことないです。教えてくださってありがとうございます、神官さん」
機械的にお礼の言葉が口から出たものの、頭の中は真っ白だ。これで帰れない可能性が濃厚になったんだから当然だろう……はぁ、参ったなぁ。
変に希望を持ったまま、中途半端に生きることになるよりはいいと思うしかないのか?
「でも、貴方の望む答えではなかったでしょう?」
「いえ、いいんです。正しい情報を早い段階で、こうして誠実に教えてもらえましたから。ここで生きていく覚悟が、できた気がします」
「ケイイチ……」
気がするだけだけどなっ。
実際はこんな短時間で覚悟なんか出来るかっての。ちょっと格好つけたいお年頃なんだよ。まぁこうして早めにはっきりと分かってしまった方が、諦めがつくはずだしさ……多分。
あとひとつ気になっていたのが、今回落ちてきたのが俺だけかどうかということ。それについても教えてくれた。
次元の狭間というのは本来あってはならないもの。一度開いてしまうと、今度は世界によってすぐに修正しようとする力が働くため、小さな切れ目がごく短時間、瞬間的に出来るのみだとか。
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