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第33話 成り行きで女騎士の従者になる

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「何ともまぁ……異世界には凄い国があるものなんですねぇ」

「そ、そんな世界が存在するのか……というか出来るのか!? にわかには信じがたいが。だが素晴らしいっ。君の住んでいたところは、この世界の者にとっては理想郷だっ」

 キラキラとした憧れの視線を送られると、なんとも居心地が悪い。

 そこまで規制しても犯罪はなくならなかったわけだし、彼女達が想像するような理想の国でもないと思う。

「いや俺達の世界でも、さすがにそんな国は自国くらいでしたけどね」

「そうなのか。だかしかし、それなら余計に必要ないかもしれないな。冒険者の仕事は主に魔物討伐だ。武器を持った事も無いものには、受けられない依頼だろう?」

「そうですね」

 この世界の魔物がどんな姿をしているのか分からないけど、もし今すぐやれとか言われたら絶対、無理だと即答できる。

「ギルド証は定期的に依頼を受けないと、期限切れで無効になるんだ。これから行くエルフの国に冒険者ギルドはないし」

「おぉ……な、成る程」

 魔物との戦闘以外に、薬草採取とか町中のお手伝い系の依頼もあるそうだが、そちらは毎月決められたノルマをこなさないといけないらしい。

 継続してギルド証を保持したいなら、キリキリ働けっ、ということか……なんだよそれ、まるで社畜のようじゃないか。

 規定数をこなすには毎日活動するしかないそうなので、これから旅立つ予定の俺には出来そうにない。

 そんなのやってたら、いつまでたっても町から出れないもんなっ。

 と言うわけで、憧れの冒険者ギルド登録は無しになった。



「う~ん。それなら神殿騎士の従者ということにすればどうだろうか? さほど詮索されずに通ることができるはずだ」

 散々、悩んだ末にその神殿騎士であるエアルミアさんが自分の従者と言うことにしてしまえばどうかと提案してきた。

「あ、それはいいですねっ。エアルミアの従者なら私も安心です。ケイイチもいいですか?」

「ええ。身の安全が保証されるなら俺はなんでも」

「よかった! じゃあ、役柄に合わせて服も着替えた方がいいですね」

「そうだな。見慣れない服はそれだけで目立って人々の記憶に残りやすいし」

「ですね。すぐご用意できますし、ちょっと取ってきますっ」

 方針が決まったことにホッとしたようで、神官さんはいそいそと立ち上がると、ケイイチに渡す服を探しに部屋を出て行った。




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