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第39話 陥落
しおりを挟む「わたくしのような小娘で、本当によろしいの……?」
「君がいいんだ」
心から、愛しさが溢れてくるような声で断言された。
そして、少し自信なさげに瞬きしながら、こう続けた。
「君こそ、求婚の相手がこんな年上の男でもいいのか? 受け入れて、くれますか?」
その言い方は卑怯すぎる……。
見目麗しく実力もあるが、確かに年齢は一回りも上だ。
それを密かに気にしていたらしいが、好きの基準が自分よりも強い男であるルイーザにとっては些細なことだった。
それよりも、いつも堂々として何事にも動じない男の口から弱気なセリフが出てきたことの方が驚く。
ましてやそれが、ルイーザを好きだからこその言葉で、不安になっているのも彼女を真剣に想ってくれているからなのだから。
体の奥の方からムズムズとしたくすぐったい気持ちが込み上げてくる。
大人の男の魅力をたっぷり感じさせた後に、こんな可愛い面も見せてくるだなんて……堪らない。
「年など関係ありませんわ。わたくしは心身ともに強い男が好きなのですからっ」
思わず否定し、遠回しに好きだと告げてしまった。
ちゃんと手順を踏むつもりだったのに……。
(ずるい方……婚約破棄された直後に、別の殿方と新たな婚約を結ぶ約束まではしないつもりで……しばらく時間をおいてから、と考えておりましたのに……)
彼の手に乗って落ちてしまった。
ルイーザの言葉にキラリと光る瞳は勝利を確信したかのよう強く輝く。
もう逃げられない。
「嬉しいことを言ってくれる。では受けてくれますね?」
「……はい。わたくしでよろしければ、お受け致しますわ」
覚悟を決めて、求婚を受け入れたのだった。
恥ずかしげに頬を染め、愛しい人の目を眩しげに見つめながらもしっかりと……。
「ルイーザ嬢」
大勢の人の前での求婚に、羞恥から真っ赤になってしまった愛らしい顔や潤んだ目を、満足そうに見ると立ち上がる。
繋いだままの手を口元に引き寄せると、もう一度指先にキスを送った。
「愛しい人……やっと手に入れた。これで君は私のものです」
「剣聖様」
「そして私も君のものだ。だからどうか、これからは名前で呼んでくれませんか」
じっと瞳を覗きこまれ、懇願される。
「は、はい。あの、アデルヴァルト、様?」
「アデル、と。貴女にだけは愛称で呼んで欲しい」
「す、すぐには無理ですわっ」
だってそんなの、恥ずかし過ぎる。
うれしいけれど困るんですというような、焦った表情で見つめてくる年下の彼女に、剣聖はクスクスと笑いながら言った。
「では、呼んでいただける時を楽しみにしています」
「はぃぃ。が、頑張ります」
何とかそう、答えたものの……。
愛しくて仕方ないというように見つめてくる彼との距離は、近すぎる。
繋がれたままの手から伝わる彼の熱に、ドキドキしてしまって落ち着かないルイーザだった。
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