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第56話 逆効果
しおりを挟む父の忠告に耳を傾けず、精神系の魔法を軽視し勉強を怠ってきたツケがここに来て回ってきたというのか……。
助けたくとも知識がなく、どうすればいいのか分からないジョナスは、すがるようにランドルフを見た。
「術の反動がどのようなものになるのか、君には予測がつきますか?」
「さあ? ただこういった場合、代償として奪われるものは術者の魔力、つまり生命力である可能性が高いというのが通説ではないでしょうか」
サラリと告げられた衝撃的な内容に、ジョナスたちの顔色が一気に悪くなる。
「なっ、生命力だと!?」
「……嘘だろ」
「そんなっ。それは、下手をすればサリーナが死ぬかもしれないということですかっ」
信じたくないと、口々にそう叫ぶ取り巻きを見ながらランドルフは言った。
「あくまでも可能性の一つです。ですが、あながち間違ってはいないと思いますよ」
それを聞いて、ジョナス達以上に驚愕した者がいた。
「……っ!!! あ゛、ぁ……」
「サリーナっ、声が!?」
「大丈夫ですかっ、サリーナ嬢!?」
動きが制限されているだけでこちらの言葉は問題なく聞こえている彼女にも、自分が死ぬかもしれないという内容は衝撃的だったらしい。
虚ろだった目に力が戻り、零れ落ちそうな程大きく見開いている。
何とか『威圧』スキルを解こうとする執念からか、一言だけ漏れ出た声は明確な言葉になっていなかったが、それでも年若い女性なのに大した胆力だとランドリフは驚いた。
やはり、禁呪の魅了魔法に手を出すだけあって、本質は相当図太く強かな女であるらしい。
可憐な見た目からは想像も出来ないが、毒花令嬢と揶揄されるだけはあるなと妙に納得してしまった。
そして、予想外に剣聖が施した『威圧』スキルの効果が短いのも気になる。
多分、サリーナが相当多く、解除のために自分の意思の力と魔力を使って抵抗しているからだろうが……こうなってくると、魅了返しの魔道具の効き目が現れるのも時間の問題だ。
ランドルフが見守る中、まず初めにピクリっと指先が動き、続けて手が、腕までが動く。
更に、フッと体が弛緩したのが見て取れた。剣聖の『威圧』スキルが全て、解除されたらしい。
――得意気にこちらを見る強気な瞳。
しかし、それも長くは続かなかった。次の瞬間には、サリーナの全身が痙攣し出したのだ……。
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