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第109話 奪い取る
しおりを挟む「いや、しかし……」
国王は国のため、そして王妃の母国である帝国の刺客から命を守るため、手放さなければならなかった我が子を思う。
ハワード王国の法の下、本来なら自分の後を継ぐはずだった愛し子。
帝国の横槍で断念せざるを得なかったばかりか、今は国外にいて滅多に会うことすらできない。
初恋だと聞いていた。
そう言っていた時の、可愛らしく頬を染め、照れくさそうにしていた姿を思い出す。
彼の願いを、叶えてやりたかった。
ひとつくらい、父親らしいことをさせてくれてもいいだろう?
王妃が嫁いでくる前の王太子時代に愛する妃との間に生まれた最愛の息子。
元々、この国の正統な王位継承者で、第一王子だったはずのアランに……。
今はもういない、愛する女性によく似た優しげな面差しを思い浮かべ、束の間の幸せに耽っていたのだが……。
そんな至福の時を、苛立たしげな声が遮った。
「何を迷っていらっしゃるのです? わたくしはこの国のためを思って申し上げているのですよ」
せっかく復興した国をまた、荒らしたくはないだろうと、言外に含んだ言葉を寄越した。
暗に、強固な反対は帝国を不快にさせ関係を悪化させると脅しているのだ。
非情な現実に引き戻された王は、王妃に向き合う。
「しかし……アレは今までどんな令嬢でも満足しなかったではないか。シルヴィアーナ嬢とて、納得するとは思えんが?」
「まぁ。嫌ですわ、陛下ったら。今この国で、バーリエット公爵令嬢ほど王子妃に相応しい方はいらっしゃいません。全く、あんなに強力な能力が顕現した令嬢がまだこの国にいらしたとは……失礼ながらわたくし、存じ上げませんでした」
そう言うと、恨みがましい目つきでじっと見つめてきた。
「年頃も釣り合いますのに、婚約者候補のリストにも載っておりませんでしたし……まさかとは思いますが陛下、意図的に隠されていたのではありませんこと?」
王妃に追及された国王はと言うと……。
「いや、そんなつもりはない」
即座に否定してみせた。
本当は王妃の推察通り、愛息子の初恋を叶えてやりたくて有力な王子妃候補になりうる彼女の情報を規制していたのだが、そんな事はおくびにも出さない。
「本当かしら? わたくし、あの方はとても病弱で、負担のかかる王子妃のお務めは無理だとお聞きしておりましたのに……改めて確認させましたところ、随分とお元気そうだというではありませんか」
疑わしげに聞いてきた。
シルヴィアーナが治療行為をするため、慈善院に通っていることを言っているのだろう。
「能力の発表には慎重にもなる。君も知っての通り、聖国を敵に回すことは避けたいからな」
万が一、間違いがあってはいけないと思い、慎重に時期をみていただけだと説明した。
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