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第80話ただいま、ただいまって言ったばかり!?〜王命と空からの助け舟〜
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王都の南門――
「ただいまぁ……!」
「帰ってきたぁあああ!」
「うちのベッド! うちの枕! 最高……っ!」
「もふぅ~(※訳:おれのふかふか布団も最強)」
戻ったばかりの美月一行は、屋敷の玄関でゴロンと倒れこんでいた。
クラリーチェはすでにお茶の準備をしており、リリアーナはというと――
「ちょっと待って、今から“着替えたら仕事するぞスケジュール”が来るに決まってるんだから、油断したら負けよ!私は浴衣を着る!」
「浴衣!? 風呂上がりの姿勢にしては本気すぎない!?」
そんなやりとりをしていた、まさにその時――
\ ドンドンッ! /
「女男爵殿! 至急、王城へ! 王より謁見のご命令です!」
「――っはやッ!? 早すぎん!? 帰宅1時間も経ってないよ!?」
「もふぅー(※訳:スピード王命)」
________________________________________
◆王城謁見室・即、無茶ぶり!
「よく戻ったな、美月殿。待っておったぞ」
国王はにこやかに言った。が、その後に続いた言葉で美月の背筋は凍りついた。
「他国での活躍の話は聞いておる。本国にも“薬膳拉麺診療所”を開設するのだ。さらに、薬膳拉麺医師を育てる専門機関“美月薬膳医学院”も創設したい。明日から動けるか?」
「む、む、む、無理ですぅぅぅぅぅぅ!!」
美月、即土下座。
「えぇぇぇっ!? 美月が即土下座!? は、初めて見た……!」
クラリーチェがショックでお茶をこぼす。
「まず土地! 建築! 教材! カリキュラム! スタッフ! 時間がッ!!」
「王様、お言葉ですが、仮に学院を創るとして、いったい誰が講義を?」
「もちろん美月殿が……」
「ですよねーーーッ!!」(美月&リリアーナ、声を揃える)
「もっふぅぅ~!(※訳:過労死するぞー!)」
________________________________________
◆救世主、空から舞い降りる!
そのときだった。
ドーム天井の窓が開き、音もなくひとつの影が降り立った。
「――遅れてすまない、美月嬢」
「ゼ、ゼファル王子ぃ!? なんで王都にいるの!?」
「ふっ……実は、風の便りで貴女が帰国されたと知り、天馬でひとっとびだったのだ。というより……」
王子はにっこり笑って、国王に向き直る。
「――この事業、天空国家にて合同運営してはいかがか?」
「ほう? 具体的に?」
「講師陣の一部は、我が国より派遣可能。施設も、天空大学のサテライトキャンパスとして一部貸与可能。教材データの編纂支援も用意できる」
「……王子、頼りになる……!」
「ふふ、これもすべて、美月嬢が貴女だからだよ?」
「うわっ!? なんかイケメンセリフきた!?」
クラリーチェ、思わずひざから崩れ落ちる。
「……ふっ、あいつ絶対ナチュラルに落としにかかってる……」
リリアーナは遠巻きに唸った。
________________________________________
◆王都 × 天空国家、薬膳プロジェクト始動!
「では決まりじゃな! 本国と天空国家の合同学院、名は“天翔美月医学院”とでもしようか」
「いや、翔らせないで!? わたし常に浮いてるみたいじゃん!」
「ネーミングセンスは王様だなぁ……」とリリアーナが苦笑。
とはいえ、ゼファル王子の助け舟により、
新たな国家級プロジェクトは形を成し始める。
「よし、やるからには最善を尽くす……でも……」
「でも?」
「週休二日制は守らせてもらうからねっ!」
「もちろんである」
「それだけは譲らないんだね……」
「もっふぅ(※訳:やれやれ)」
こうして――
またひとつ、美月の肩に国と空が乗っかるのであった。
「ただいまぁ……!」
「帰ってきたぁあああ!」
「うちのベッド! うちの枕! 最高……っ!」
「もふぅ~(※訳:おれのふかふか布団も最強)」
戻ったばかりの美月一行は、屋敷の玄関でゴロンと倒れこんでいた。
クラリーチェはすでにお茶の準備をしており、リリアーナはというと――
「ちょっと待って、今から“着替えたら仕事するぞスケジュール”が来るに決まってるんだから、油断したら負けよ!私は浴衣を着る!」
「浴衣!? 風呂上がりの姿勢にしては本気すぎない!?」
そんなやりとりをしていた、まさにその時――
\ ドンドンッ! /
「女男爵殿! 至急、王城へ! 王より謁見のご命令です!」
「――っはやッ!? 早すぎん!? 帰宅1時間も経ってないよ!?」
「もふぅー(※訳:スピード王命)」
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◆王城謁見室・即、無茶ぶり!
「よく戻ったな、美月殿。待っておったぞ」
国王はにこやかに言った。が、その後に続いた言葉で美月の背筋は凍りついた。
「他国での活躍の話は聞いておる。本国にも“薬膳拉麺診療所”を開設するのだ。さらに、薬膳拉麺医師を育てる専門機関“美月薬膳医学院”も創設したい。明日から動けるか?」
「む、む、む、無理ですぅぅぅぅぅぅ!!」
美月、即土下座。
「えぇぇぇっ!? 美月が即土下座!? は、初めて見た……!」
クラリーチェがショックでお茶をこぼす。
「まず土地! 建築! 教材! カリキュラム! スタッフ! 時間がッ!!」
「王様、お言葉ですが、仮に学院を創るとして、いったい誰が講義を?」
「もちろん美月殿が……」
「ですよねーーーッ!!」(美月&リリアーナ、声を揃える)
「もっふぅぅ~!(※訳:過労死するぞー!)」
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◆救世主、空から舞い降りる!
そのときだった。
ドーム天井の窓が開き、音もなくひとつの影が降り立った。
「――遅れてすまない、美月嬢」
「ゼ、ゼファル王子ぃ!? なんで王都にいるの!?」
「ふっ……実は、風の便りで貴女が帰国されたと知り、天馬でひとっとびだったのだ。というより……」
王子はにっこり笑って、国王に向き直る。
「――この事業、天空国家にて合同運営してはいかがか?」
「ほう? 具体的に?」
「講師陣の一部は、我が国より派遣可能。施設も、天空大学のサテライトキャンパスとして一部貸与可能。教材データの編纂支援も用意できる」
「……王子、頼りになる……!」
「ふふ、これもすべて、美月嬢が貴女だからだよ?」
「うわっ!? なんかイケメンセリフきた!?」
クラリーチェ、思わずひざから崩れ落ちる。
「……ふっ、あいつ絶対ナチュラルに落としにかかってる……」
リリアーナは遠巻きに唸った。
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◆王都 × 天空国家、薬膳プロジェクト始動!
「では決まりじゃな! 本国と天空国家の合同学院、名は“天翔美月医学院”とでもしようか」
「いや、翔らせないで!? わたし常に浮いてるみたいじゃん!」
「ネーミングセンスは王様だなぁ……」とリリアーナが苦笑。
とはいえ、ゼファル王子の助け舟により、
新たな国家級プロジェクトは形を成し始める。
「よし、やるからには最善を尽くす……でも……」
「でも?」
「週休二日制は守らせてもらうからねっ!」
「もちろんである」
「それだけは譲らないんだね……」
「もっふぅ(※訳:やれやれ)」
こうして――
またひとつ、美月の肩に国と空が乗っかるのであった。
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