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第85話世話係たちの休日!?〜週休七日の真相〜
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春のやさしい風が、屋敷の中庭を撫でていく。
ベンチに腰かけ、ハーブティーをすすっていた美月は、ふと――思い出した。
「……ねえ、リリアーナ、クラリーチェ。ふたりとも……全然、休んでなくない?」
すると、向かいのティーテーブルで、紅茶の角砂糖を2つも落としていたクラリーチェが、ハッと振り返った。
「えっ、休み? ええ、もちろん取っていませんわ!」
「清々しいほど即答!?」
「だって、美月様のそばにいるときが、いちばん癒やされるんですもの!」
「そうですわよね、クラリーチェ」
リリアーナも、さらりと微笑んだ。
「私たちにとっては――毎日が“癒しの日”。つまり、週休7日制」
「いやいやいやいやいや!?」
美月はお茶を吹きそうになった。
「私が休めって散々言われてたの、だれ!? あれだけ“働きすぎよ!”とか“週休2日守って!”って言ってたのに、君らは週休ゼロじゃん!」
「……それは、“美月様が働きすぎないための義務”であり、もはや“ライフワーク”ですので……」
リリアーナは涼しい顔で答える。
「むしろ、私たちが休んだ方が混乱しますわ!」
クラリーチェも胸を張った。
「うーん……まさか、ラーメンを支える二人が、そんなブラック思考とは……」
美月は天を仰ぐ。
「――じゃあさ」
唐突に、美月はぽんっと手を打った。
「今度の休日、私と一緒に“リリアーナ&クラリーチェの休日体験”しない?」
「はい?」
「つまり、私が2人の“美月と出会う前の休日”の過ごし方を一緒に体験したいなって。どんなふうにリラックスしてたのか知りたい!」
「そ、それは……!」
クラリーチェが目を丸くする。
「ちょ、ちょっと、思い出すのに時間がかかるかも……何してたっけ、私……」
リリアーナも珍しく困ったように唇を噛んだ。
「むむむ……馬術訓練はしてたし、あと礼法の復習と、報告書の整理と、兄上への書簡と……」
「それ全部、仕事だよね?」
「おかしいですわ! 私も、“香水の調香試験”と“次期外交計画案の作成”と“武器の解体組み立て訓練”くらいしか思い出せません……」
「なんで!? 令嬢なのに!? どうしてそんなスパルタみたいな休日なの!?」
「だって、貴族ですから!」
「王女ですから!」
美月は、手のひらで顔を覆った。
「……もう、わかったよ。じゃあ、私が提案するね」
________________________________________
◆そして、“女子会風・おだやか休日計画”発動!
「じゃじゃーん!」
当日、屋敷のテラスに現れた美月は、ピクニックバスケットを片手にこう言った。
「今日は、おしゃれカフェごっこ&午後は“ぼーっとする練習”会を開きます!」
「ぼーっとする……練習……!?」
「そんなものが世に存在していたなんて……!」
「まずはこの、“今日一日スマホ(的な何か)禁止の約束札”をどうぞ!」
「ひぇっ!? 報告書……書けない……」
「手帳がないと不安になりますわ……!」
「安心して、代わりに“おしゃべりノート”と“昼寝用ふわふわクッション(チグー)”を用意しました」
「もっふぅ(……今度こそ寝る役か)」
________________________________________
午後になり、リリアーナはふかふかの毛布に包まれながら、目を細めた。
「……意外と、こういうのも……いいかも」
「チーズケーキ、おいしいですわ……美月様、ありがとうございます……」
クラリーチェは、うっとりした表情で紅茶を注ぐ。
「うん、いい休日だったね」
「……でも」
「……やっぱり」
「次回の休日は、みんなで“新作つけ麺考案”にしましょう!」
「やっぱり仕事脳じゃん!!」
「いえ!これは、趣味ですから!」
「そうそう!私たちにとって、ラーメンは余暇活動なんです!」
「――はあ、もう。じゃあ次の休みは、趣味という名の“つけ麺フェス”ね」
「もっふぅ(また騒がしくなるな……)」
こうして、美月と“週休七日貴族たち”の休日は、いつもどこかズレながらも、笑いと癒しに包まれていたのだった。
ベンチに腰かけ、ハーブティーをすすっていた美月は、ふと――思い出した。
「……ねえ、リリアーナ、クラリーチェ。ふたりとも……全然、休んでなくない?」
すると、向かいのティーテーブルで、紅茶の角砂糖を2つも落としていたクラリーチェが、ハッと振り返った。
「えっ、休み? ええ、もちろん取っていませんわ!」
「清々しいほど即答!?」
「だって、美月様のそばにいるときが、いちばん癒やされるんですもの!」
「そうですわよね、クラリーチェ」
リリアーナも、さらりと微笑んだ。
「私たちにとっては――毎日が“癒しの日”。つまり、週休7日制」
「いやいやいやいやいや!?」
美月はお茶を吹きそうになった。
「私が休めって散々言われてたの、だれ!? あれだけ“働きすぎよ!”とか“週休2日守って!”って言ってたのに、君らは週休ゼロじゃん!」
「……それは、“美月様が働きすぎないための義務”であり、もはや“ライフワーク”ですので……」
リリアーナは涼しい顔で答える。
「むしろ、私たちが休んだ方が混乱しますわ!」
クラリーチェも胸を張った。
「うーん……まさか、ラーメンを支える二人が、そんなブラック思考とは……」
美月は天を仰ぐ。
「――じゃあさ」
唐突に、美月はぽんっと手を打った。
「今度の休日、私と一緒に“リリアーナ&クラリーチェの休日体験”しない?」
「はい?」
「つまり、私が2人の“美月と出会う前の休日”の過ごし方を一緒に体験したいなって。どんなふうにリラックスしてたのか知りたい!」
「そ、それは……!」
クラリーチェが目を丸くする。
「ちょ、ちょっと、思い出すのに時間がかかるかも……何してたっけ、私……」
リリアーナも珍しく困ったように唇を噛んだ。
「むむむ……馬術訓練はしてたし、あと礼法の復習と、報告書の整理と、兄上への書簡と……」
「それ全部、仕事だよね?」
「おかしいですわ! 私も、“香水の調香試験”と“次期外交計画案の作成”と“武器の解体組み立て訓練”くらいしか思い出せません……」
「なんで!? 令嬢なのに!? どうしてそんなスパルタみたいな休日なの!?」
「だって、貴族ですから!」
「王女ですから!」
美月は、手のひらで顔を覆った。
「……もう、わかったよ。じゃあ、私が提案するね」
________________________________________
◆そして、“女子会風・おだやか休日計画”発動!
「じゃじゃーん!」
当日、屋敷のテラスに現れた美月は、ピクニックバスケットを片手にこう言った。
「今日は、おしゃれカフェごっこ&午後は“ぼーっとする練習”会を開きます!」
「ぼーっとする……練習……!?」
「そんなものが世に存在していたなんて……!」
「まずはこの、“今日一日スマホ(的な何か)禁止の約束札”をどうぞ!」
「ひぇっ!? 報告書……書けない……」
「手帳がないと不安になりますわ……!」
「安心して、代わりに“おしゃべりノート”と“昼寝用ふわふわクッション(チグー)”を用意しました」
「もっふぅ(……今度こそ寝る役か)」
________________________________________
午後になり、リリアーナはふかふかの毛布に包まれながら、目を細めた。
「……意外と、こういうのも……いいかも」
「チーズケーキ、おいしいですわ……美月様、ありがとうございます……」
クラリーチェは、うっとりした表情で紅茶を注ぐ。
「うん、いい休日だったね」
「……でも」
「……やっぱり」
「次回の休日は、みんなで“新作つけ麺考案”にしましょう!」
「やっぱり仕事脳じゃん!!」
「いえ!これは、趣味ですから!」
「そうそう!私たちにとって、ラーメンは余暇活動なんです!」
「――はあ、もう。じゃあ次の休みは、趣味という名の“つけ麺フェス”ね」
「もっふぅ(また騒がしくなるな……)」
こうして、美月と“週休七日貴族たち”の休日は、いつもどこかズレながらも、笑いと癒しに包まれていたのだった。
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