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第86話天空式・優雅すぎる休日体験!? 〜お茶と風と空中ダンス〜
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ある日の朝、美月の屋敷に突然届いたのは――
「【天空国家よりお迎えにあがりました】?」
美月が読み上げたその書状に、すでに顔が真っ青である。
「これって……まさか……」
「ええ、まさかの“王子の休日を3人で体験”ですわ」
リリアーナが涼しい顔でうなずく。
「えっ、えっ? それ、誰が決めたの!?」
「私ですわよ、美月様♡ 週休二日守らせ隊、行動開始です!」
「私も大賛成ですっ!」
クラリーチェはスーツケースを抱えて、目が輝いていた。
「そもそも天空国家の休日ってどんなの……?」
「さぁ? 浮いてるとか、飛んでるとか、ふわふわしてるんじゃないですか?」
「ふんわりしすぎでしょ!!」
そんな会話をしているうちに、空からふわりと降り立った一機の空飛ぶ馬車。
そして馬車のドアが開いた瞬間――
「お待たせした、美しき風よ――!」
中からは、まるでミュージカルのように舞う王子が登場した。
ゼファル=エル=フェンリス王子。
天空国家の第二王子にして、美月に密かに心を寄せる青年である。
「ということで、今日の予定はすでに完璧に決まっている!」
「……私、心の準備してないんだけど……」
________________________________________
◆午前:空中庭園のふんわりモーニング
「さぁ、まずは我が国伝統の《浮遊ブランチ》!」
空中庭園にあるガラスのテラス席。浮遊石によってふわりと宙に浮かぶテーブルに、銀の蓋が並ぶ。
「うわー……見て、これ……パンケーキが空中で回転してる……」
「それ、王家特製《無重力バター・カスタード》ですのよ。わたくし、以前落として床がべとべとになりまして……」
「えっ!?」
「ご安心を。今回はリリアーナ様の膝の上に落ちますわ」
「やめてちょうだい!!!」
一方、美月は――
「……どうしてこのパン、スプーンで食べるんだろう……」
「王子曰く“物理にとらわれるな”とのことです」
「意味がわからない……!」
________________________________________
◆午後:天空舞踏とサボテン茶会
「続いてはこちら、天空国家伝統の《空中舞踏》!」
「えっ!?」
見上げた先には、気球とワイヤーを使って空中で舞う“軽量フロートスーツ”。
「これ着て……踊れと?」
「むろん、私がリードしますとも、美月嬢」
「地上でならいいのに……!」
クラリーチェはテンション爆上がりで、
「わたくし、人生でこんなにも浮いてる感覚初めてですわ!」とぐるぐる回り、
リリアーナは――
「ちょ、ちょっと待って!? 安全帯、もう一回確認して! 私の命が浮いてるのよー!?」
ひとしきり回ったあと、みんなで“サボテン・ジャスミン茶”で休憩。
「……空を見ながらのお茶って、案外落ち着くんだね」
「ええ。風の音が、心を洗う気がしますわ……」
「……実際に洗い流されたのは、私の胃袋だけどね……」
________________________________________
◆夕暮れ、そしてひとときの本音
高台の雲海テラスで、夕日を見ながら王子がぽつり。
「……実はね、僕には“本当の休日”ってのが、よく分からないんだ」
「え?」
「王子として、休んではいけないとずっと思ってた。でも……君たちと過ごす時間だけは、違う」
王子が美月に、微笑みかける。
「今日、少しだけわかった気がする。“誰かと一緒に笑うこと”が、休日なんだって」
「……」
美月は少し、照れたように笑った。
「それなら、私も“休日してた”かもね」
「えっ、美月様もようやく認めるのですね? では、明日も“休日”ということで――」
「それはまた別の話――!!」
3人の突っ込みが、夕焼け空に溶けていった。
「【天空国家よりお迎えにあがりました】?」
美月が読み上げたその書状に、すでに顔が真っ青である。
「これって……まさか……」
「ええ、まさかの“王子の休日を3人で体験”ですわ」
リリアーナが涼しい顔でうなずく。
「えっ、えっ? それ、誰が決めたの!?」
「私ですわよ、美月様♡ 週休二日守らせ隊、行動開始です!」
「私も大賛成ですっ!」
クラリーチェはスーツケースを抱えて、目が輝いていた。
「そもそも天空国家の休日ってどんなの……?」
「さぁ? 浮いてるとか、飛んでるとか、ふわふわしてるんじゃないですか?」
「ふんわりしすぎでしょ!!」
そんな会話をしているうちに、空からふわりと降り立った一機の空飛ぶ馬車。
そして馬車のドアが開いた瞬間――
「お待たせした、美しき風よ――!」
中からは、まるでミュージカルのように舞う王子が登場した。
ゼファル=エル=フェンリス王子。
天空国家の第二王子にして、美月に密かに心を寄せる青年である。
「ということで、今日の予定はすでに完璧に決まっている!」
「……私、心の準備してないんだけど……」
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◆午前:空中庭園のふんわりモーニング
「さぁ、まずは我が国伝統の《浮遊ブランチ》!」
空中庭園にあるガラスのテラス席。浮遊石によってふわりと宙に浮かぶテーブルに、銀の蓋が並ぶ。
「うわー……見て、これ……パンケーキが空中で回転してる……」
「それ、王家特製《無重力バター・カスタード》ですのよ。わたくし、以前落として床がべとべとになりまして……」
「えっ!?」
「ご安心を。今回はリリアーナ様の膝の上に落ちますわ」
「やめてちょうだい!!!」
一方、美月は――
「……どうしてこのパン、スプーンで食べるんだろう……」
「王子曰く“物理にとらわれるな”とのことです」
「意味がわからない……!」
________________________________________
◆午後:天空舞踏とサボテン茶会
「続いてはこちら、天空国家伝統の《空中舞踏》!」
「えっ!?」
見上げた先には、気球とワイヤーを使って空中で舞う“軽量フロートスーツ”。
「これ着て……踊れと?」
「むろん、私がリードしますとも、美月嬢」
「地上でならいいのに……!」
クラリーチェはテンション爆上がりで、
「わたくし、人生でこんなにも浮いてる感覚初めてですわ!」とぐるぐる回り、
リリアーナは――
「ちょ、ちょっと待って!? 安全帯、もう一回確認して! 私の命が浮いてるのよー!?」
ひとしきり回ったあと、みんなで“サボテン・ジャスミン茶”で休憩。
「……空を見ながらのお茶って、案外落ち着くんだね」
「ええ。風の音が、心を洗う気がしますわ……」
「……実際に洗い流されたのは、私の胃袋だけどね……」
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◆夕暮れ、そしてひとときの本音
高台の雲海テラスで、夕日を見ながら王子がぽつり。
「……実はね、僕には“本当の休日”ってのが、よく分からないんだ」
「え?」
「王子として、休んではいけないとずっと思ってた。でも……君たちと過ごす時間だけは、違う」
王子が美月に、微笑みかける。
「今日、少しだけわかった気がする。“誰かと一緒に笑うこと”が、休日なんだって」
「……」
美月は少し、照れたように笑った。
「それなら、私も“休日してた”かもね」
「えっ、美月様もようやく認めるのですね? では、明日も“休日”ということで――」
「それはまた別の話――!!」
3人の突っ込みが、夕焼け空に溶けていった。
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