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第96話こそこそ会議、開催!?〜美月様を見守るふたり〜
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王都・美月邸の裏庭。
普段はハーブティーや日向ぼっこの場だが――今日はちょっと、違った。
「……来てしまいましたわね、私たち」
「うん。来ちゃったね。完全に、ダメって言われてたのに……」
毛糸の帽子を深くかぶったリリアーナと、フードを目深にかぶったクラリーチェが、物陰からそっと顔を出す。
「それにしても……見てくださいませ、あの美月様の笑顔……!」
屋敷のテラス。
湯気の立つカモミールティーを片手に、ブランケットに包まっている美月。
読書をしたり、パンをちぎったり、ぼーっと雲を眺めたり。
「かわいい……!」
「うん、国宝……!」
「それにあの、お皿の上の焼きにんじん……あれ、昨日わたくしがこっそり届けたものでしてよ」
「ちょっとずるい! わたしも何か入れたかったのに!」
「ふふん。これが、年上の余裕というものですわ。ぬかりなく献上済みですのよ。ミヅキにんじんをっ!」
「やるぅ……!」
ふたりはごく小声でハイタッチした。
________________________________________
◆こそこそ会議・本題
「それにしても、あの方……ひとりで、のんびりできているようで、安心ですわね……」
「ね。いつも頑張りすぎてるから、こういう時間がもっとあっていいんだよね」
「ですが、気づきました?」
「なにが?」
「美月様は、ひとりで休日を楽しんでいらっしゃいますが……わたくしたち、休日が……ありませんの」
「……え?」
「ええ。そもそも、美月様のスケジュールの調整、講義の準備、外交演出の交渉書類、そしてティーカップの選定まで……!」
「……たしかに、週休ゼロだわ……!」
「でも美月様といる時間が、楽しくて……つい、働き続けてしまいますのよね……」
「それにさ……美月様が“今日はひとり”って言うと、なんか……置いてかれた気がして、ちょっとさみしい……」
「ふふふ、わかりますわ。でも、それが“好き”という感情ですのよ、クラリーチェ?」
「う、うん、知ってた……(動揺)」
________________________________________
◆ひとつの決意。
「クラリーチェ。わたくしたちも、美月様と休日を過ごす計画、立てませんこと?」
「え、それって――」
「“美月様の休日を、一緒に過ごす休日”。このままでは、おひとりの時間が心地よすぎて、わたくしたち……永久にお邪魔虫ですの」
「なるほど、それはまずい!」
「ですので! 近日中に、**“三人で過ごす休日作戦”**を決行しますわよ!」
「よーしっ! お菓子担当、わたしがやる! 手作りのスコーンとか!」
「ではわたくしは、紅茶とパジャマの準備をいたしますわ! 美月様が選びそうな“もふもふ系”で!」
「それさあ、仕事してるじゃん?」
「休日ですわよ」
「うん、休日だよね!」
________________________________________
その日、美月がふとつぶやいた。
「なんか、あったかいなぁ……もしかして、今日も誰かが見守ってくれてる?」
そう。
あなたのことを、こっそり大切に思ってるふたりが、すぐ近くにいる。
普段はハーブティーや日向ぼっこの場だが――今日はちょっと、違った。
「……来てしまいましたわね、私たち」
「うん。来ちゃったね。完全に、ダメって言われてたのに……」
毛糸の帽子を深くかぶったリリアーナと、フードを目深にかぶったクラリーチェが、物陰からそっと顔を出す。
「それにしても……見てくださいませ、あの美月様の笑顔……!」
屋敷のテラス。
湯気の立つカモミールティーを片手に、ブランケットに包まっている美月。
読書をしたり、パンをちぎったり、ぼーっと雲を眺めたり。
「かわいい……!」
「うん、国宝……!」
「それにあの、お皿の上の焼きにんじん……あれ、昨日わたくしがこっそり届けたものでしてよ」
「ちょっとずるい! わたしも何か入れたかったのに!」
「ふふん。これが、年上の余裕というものですわ。ぬかりなく献上済みですのよ。ミヅキにんじんをっ!」
「やるぅ……!」
ふたりはごく小声でハイタッチした。
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◆こそこそ会議・本題
「それにしても、あの方……ひとりで、のんびりできているようで、安心ですわね……」
「ね。いつも頑張りすぎてるから、こういう時間がもっとあっていいんだよね」
「ですが、気づきました?」
「なにが?」
「美月様は、ひとりで休日を楽しんでいらっしゃいますが……わたくしたち、休日が……ありませんの」
「……え?」
「ええ。そもそも、美月様のスケジュールの調整、講義の準備、外交演出の交渉書類、そしてティーカップの選定まで……!」
「……たしかに、週休ゼロだわ……!」
「でも美月様といる時間が、楽しくて……つい、働き続けてしまいますのよね……」
「それにさ……美月様が“今日はひとり”って言うと、なんか……置いてかれた気がして、ちょっとさみしい……」
「ふふふ、わかりますわ。でも、それが“好き”という感情ですのよ、クラリーチェ?」
「う、うん、知ってた……(動揺)」
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◆ひとつの決意。
「クラリーチェ。わたくしたちも、美月様と休日を過ごす計画、立てませんこと?」
「え、それって――」
「“美月様の休日を、一緒に過ごす休日”。このままでは、おひとりの時間が心地よすぎて、わたくしたち……永久にお邪魔虫ですの」
「なるほど、それはまずい!」
「ですので! 近日中に、**“三人で過ごす休日作戦”**を決行しますわよ!」
「よーしっ! お菓子担当、わたしがやる! 手作りのスコーンとか!」
「ではわたくしは、紅茶とパジャマの準備をいたしますわ! 美月様が選びそうな“もふもふ系”で!」
「それさあ、仕事してるじゃん?」
「休日ですわよ」
「うん、休日だよね!」
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その日、美月がふとつぶやいた。
「なんか、あったかいなぁ……もしかして、今日も誰かが見守ってくれてる?」
そう。
あなたのことを、こっそり大切に思ってるふたりが、すぐ近くにいる。
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