異世界転移が決まってる僕、あと十年で生き抜く力を全部そろえる

谷川 雅

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第3部 第27話 「魔物増加の兆しと、にぎわう“ミズノの街”」

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「魔物の個体数、今月だけで三割増です。特に夜間の出没が多くなってきています」
報告を受けた陽介は、眉間にしわを寄せた。
視察から戻ったばかりの彼を迎えたのは、討伐隊長のカーラだった。
軍出身の魔物ハンターで、農場騎士団に途中加入したばかりだが、討伐作戦の統率力に定評がある。
「周囲の森が“新しい縄張り”として魔物たちに認識されてきたのかもしれません。
でも、好都合な面もあります」
「好都合?」
「ええ。魔物が集まる=素材が集まるってことです。皮も、角も、肉も。
それに、ここの街には“買い手”が山ほどいますから」
________________________________________
🍖 にぎわう「ミズノの街」
かつては荒野だった農場周辺。
今では、陽介の領地である“ミズノ農場”は、“ミズノの街”と呼ばれる小都市へと姿を変えていた。
• 魔物の素材を専門に扱うギルド店
• 油芋の搾油所と配送倉庫
• 紬が設計した農産物市場と加工施設
• 訪れた観光客向けの露店・宿・食堂
毎日どこかで魔物の肉を焼く匂いが漂い、
新婚夫婦や子ども連れの観光客が賑やかに街を歩いている。
「団長!この前の“雷猪の爪”、まだ残ってますかー!?」
「油芋せんべいくださいっ!ミズノブランドのやつー!」
子どもたちが叫び、露天の婆さんが笑って応える。
________________________________________
⚔ 剣を振る陽介、変わらぬ“最強”
そんな中、陽介はというと──
時間を見つけては、今でも団員たちの訓練に顔を出していた。
「団長、ひと太刀お願いします!」
「いいだろう。来い、手加減はしないぞ」
ガキンッ!!
団員の木剣が空を切り、陽介の一撃が的確に首元へ止まった。
「あぁぁ……今日も勝てなかった」
「でも、だいぶ動きがよくなってきたぞ。次は俺も避けきれないかもな」
「いや無理っす。団長、マジで化け物です……」
陽介の剣技は、いまだに団内トップ。
その“剣でも最強”という事実が、仲間たちの信頼を支えていた。
________________________________________
🌌 紬との夕暮れの語らい
「魔物が増えたのは気になるけど……“街”が育ってるのは嬉しいね」
市場の見回りから戻ってきた紬が、汗をぬぐいながら言った。
「うん。“街を耕す”ってのも、こういうことかもしれないな」
「耕して、育てて、守って……気づけば、みんなの暮らしが根を張ってる」
陽介は遠くを見ながら、静かに言った。
「でもその根が伸びれば、土も揺れる。魔物が増えてるのは、たぶん“土地の変化”のせいだ。
“豊かさ”の匂いに、あいつらも惹かれてる」
「それも、私たちが創った“実績”だよ。だから、守らなきゃね。私たちの街と、人たちを」
夕焼けがミズノの街を金色に染めていた。
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