57 / 248
第3部 第27話 「魔物増加の兆しと、にぎわう“ミズノの街”」
しおりを挟む
「魔物の個体数、今月だけで三割増です。特に夜間の出没が多くなってきています」
報告を受けた陽介は、眉間にしわを寄せた。
視察から戻ったばかりの彼を迎えたのは、討伐隊長のカーラだった。
軍出身の魔物ハンターで、農場騎士団に途中加入したばかりだが、討伐作戦の統率力に定評がある。
「周囲の森が“新しい縄張り”として魔物たちに認識されてきたのかもしれません。
でも、好都合な面もあります」
「好都合?」
「ええ。魔物が集まる=素材が集まるってことです。皮も、角も、肉も。
それに、ここの街には“買い手”が山ほどいますから」
________________________________________
🍖 にぎわう「ミズノの街」
かつては荒野だった農場周辺。
今では、陽介の領地である“ミズノ農場”は、“ミズノの街”と呼ばれる小都市へと姿を変えていた。
• 魔物の素材を専門に扱うギルド店
• 油芋の搾油所と配送倉庫
• 紬が設計した農産物市場と加工施設
• 訪れた観光客向けの露店・宿・食堂
毎日どこかで魔物の肉を焼く匂いが漂い、
新婚夫婦や子ども連れの観光客が賑やかに街を歩いている。
「団長!この前の“雷猪の爪”、まだ残ってますかー!?」
「油芋せんべいくださいっ!ミズノブランドのやつー!」
子どもたちが叫び、露天の婆さんが笑って応える。
________________________________________
⚔ 剣を振る陽介、変わらぬ“最強”
そんな中、陽介はというと──
時間を見つけては、今でも団員たちの訓練に顔を出していた。
「団長、ひと太刀お願いします!」
「いいだろう。来い、手加減はしないぞ」
ガキンッ!!
団員の木剣が空を切り、陽介の一撃が的確に首元へ止まった。
「あぁぁ……今日も勝てなかった」
「でも、だいぶ動きがよくなってきたぞ。次は俺も避けきれないかもな」
「いや無理っす。団長、マジで化け物です……」
陽介の剣技は、いまだに団内トップ。
その“剣でも最強”という事実が、仲間たちの信頼を支えていた。
________________________________________
🌌 紬との夕暮れの語らい
「魔物が増えたのは気になるけど……“街”が育ってるのは嬉しいね」
市場の見回りから戻ってきた紬が、汗をぬぐいながら言った。
「うん。“街を耕す”ってのも、こういうことかもしれないな」
「耕して、育てて、守って……気づけば、みんなの暮らしが根を張ってる」
陽介は遠くを見ながら、静かに言った。
「でもその根が伸びれば、土も揺れる。魔物が増えてるのは、たぶん“土地の変化”のせいだ。
“豊かさ”の匂いに、あいつらも惹かれてる」
「それも、私たちが創った“実績”だよ。だから、守らなきゃね。私たちの街と、人たちを」
夕焼けがミズノの街を金色に染めていた。
報告を受けた陽介は、眉間にしわを寄せた。
視察から戻ったばかりの彼を迎えたのは、討伐隊長のカーラだった。
軍出身の魔物ハンターで、農場騎士団に途中加入したばかりだが、討伐作戦の統率力に定評がある。
「周囲の森が“新しい縄張り”として魔物たちに認識されてきたのかもしれません。
でも、好都合な面もあります」
「好都合?」
「ええ。魔物が集まる=素材が集まるってことです。皮も、角も、肉も。
それに、ここの街には“買い手”が山ほどいますから」
________________________________________
🍖 にぎわう「ミズノの街」
かつては荒野だった農場周辺。
今では、陽介の領地である“ミズノ農場”は、“ミズノの街”と呼ばれる小都市へと姿を変えていた。
• 魔物の素材を専門に扱うギルド店
• 油芋の搾油所と配送倉庫
• 紬が設計した農産物市場と加工施設
• 訪れた観光客向けの露店・宿・食堂
毎日どこかで魔物の肉を焼く匂いが漂い、
新婚夫婦や子ども連れの観光客が賑やかに街を歩いている。
「団長!この前の“雷猪の爪”、まだ残ってますかー!?」
「油芋せんべいくださいっ!ミズノブランドのやつー!」
子どもたちが叫び、露天の婆さんが笑って応える。
________________________________________
⚔ 剣を振る陽介、変わらぬ“最強”
そんな中、陽介はというと──
時間を見つけては、今でも団員たちの訓練に顔を出していた。
「団長、ひと太刀お願いします!」
「いいだろう。来い、手加減はしないぞ」
ガキンッ!!
団員の木剣が空を切り、陽介の一撃が的確に首元へ止まった。
「あぁぁ……今日も勝てなかった」
「でも、だいぶ動きがよくなってきたぞ。次は俺も避けきれないかもな」
「いや無理っす。団長、マジで化け物です……」
陽介の剣技は、いまだに団内トップ。
その“剣でも最強”という事実が、仲間たちの信頼を支えていた。
________________________________________
🌌 紬との夕暮れの語らい
「魔物が増えたのは気になるけど……“街”が育ってるのは嬉しいね」
市場の見回りから戻ってきた紬が、汗をぬぐいながら言った。
「うん。“街を耕す”ってのも、こういうことかもしれないな」
「耕して、育てて、守って……気づけば、みんなの暮らしが根を張ってる」
陽介は遠くを見ながら、静かに言った。
「でもその根が伸びれば、土も揺れる。魔物が増えてるのは、たぶん“土地の変化”のせいだ。
“豊かさ”の匂いに、あいつらも惹かれてる」
「それも、私たちが創った“実績”だよ。だから、守らなきゃね。私たちの街と、人たちを」
夕焼けがミズノの街を金色に染めていた。
83
あなたにおすすめの小説
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
村から追い出された変わり者の僕は、なぜかみんなの人気者になりました~異種族わちゃわちゃ冒険ものがたり~
楓乃めーぷる
児童書・童話
グラム村で変わり者扱いされていた少年フィロは村長の家で小間使いとして、生まれてから10年間馬小屋で暮らしてきた。フィロには生き物たちの言葉が分かるという不思議な力があった。そのせいで同年代の子どもたちにも仲良くしてもらえず、友達は森で助けた赤い鳥のポイと馬小屋の馬と村で飼われている鶏くらいだ。
いつもと変わらない日々を送っていたフィロだったが、ある日村に黒くて大きなドラゴンがやってくる。ドラゴンは怒り村人たちでは歯が立たない。石を投げつけて何とか追い返そうとするが、必死に何かを訴えている.
気になったフィロが村長に申し出てドラゴンの話を聞くと、ドラゴンの巣を荒らした者が村にいることが分かる。ドラゴンは知らぬふりをする村人たちの態度に怒り、炎を噴いて暴れまわる。フィロの必死の説得に漸く耳を傾けて大人しくなるドラゴンだったが、フィロとドラゴンを見た村人たちは、フィロこそドラゴンを招き入れた張本人であり実は魔物の生まれ変わりだったのだと決めつけてフィロを村を追い出してしまう。
途方に暮れるフィロを見たドラゴンは、フィロに謝ってくるのだがその姿がみるみる美しい黒髪の女性へと変化して……。
「ドラゴンがお姉さんになった?」
「フィロ、これから私と一緒に旅をしよう」
変わり者の少年フィロと異種族の仲間たちが繰り広げる、自分探しと人助けの冒険ものがたり。
・毎日7時投稿予定です。間に合わない場合は別の時間や次の日になる場合もあります。
レイルーク公爵令息は誰の手を取るのか
宮崎世絆
児童書・童話
うたた寝していただけなのに異世界転生してしまった。
公爵家の長男レイルーク・アームストロングとして。
あまりにも美しい容姿に高い魔力。テンプレな好条件に「僕って何かの主人公なのかな?」と困惑するレイルーク。
溺愛してくる両親や義姉に見守られ、心身ともに成長していくレイルーク。
アームストロング公爵の他に三つの公爵家があり、それぞれ才色兼備なご令嬢三人も素直で温厚篤実なレイルークに心奪われ、三人共々婚約を申し出る始末。
十五歳になり、高い魔力を持つ者のみが通える魔術学園に入学する事になったレイルーク。
しかし、その学園はかなり特殊な学園だった。
全員見た目を変えて通わなければならず、性格まで変わって入学する生徒もいるというのだ。
「みんな全然見た目が違うし、性格まで変えてるからもう誰が誰だか分からないな。……でも、学園生活にそんなの関係ないよね? せっかく転生してここまで頑張って来たんだし。正体がバレないように気をつけつつ、学園生活を思いっきり楽しむぞ!!」
果たしてレイルークは正体がバレる事なく無事卒業出来るのだろうか?
そしてレイルークは誰かと恋に落ちることが、果たしてあるのか?
レイルークは誰の手(恋)をとるのか。
これはレイルークの半生を描いた成長物語。兼、恋愛物語である(多分)
⚠︎ この物語は『レティシア公爵令嬢は誰の手を取るのか』の主人公の性別を逆転した作品です。
物語進行は同じなのに、主人公が違うとどれ程内容が変わるのか? を検証したくて執筆しました。
『アラサーと高校生』の年齢差や性別による『性格のギャップ』を楽しんで頂けたらと思っております。
ただし、この作品は中高生向けに執筆しており、高学年向け児童書扱いです。なのでレティシアと違いまともな主人公です。
一部の登場人物も性別が逆転していますので、全く同じに物語が進行するか正直分かりません。
もしかしたら学園編からは全く違う内容になる……のか、ならない?(そもそも学園編まで書ける?!)のか……。
かなり見切り発車ですが、宜しくお願いします。
【完結】アシュリンと魔法の絵本
秋月一花
児童書・童話
田舎でくらしていたアシュリンは、家の掃除の手伝いをしている最中、なにかに呼ばれた気がして、使い魔の黒猫ノワールと一緒に地下へ向かう。
地下にはいろいろなものが置いてあり、アシュリンのもとにビュンっとなにかが飛んできた。
ぶつかることはなく、おそるおそる目を開けるとそこには本がぷかぷかと浮いていた。
「ほ、本がかってにうごいてるー!」
『ああ、やっと私のご主人さまにあえた! さぁあぁ、私とともに旅立とうではありませんか!』
と、アシュリンを旅に誘う。
どういうこと? とノワールに聞くと「説明するから、家族のもとにいこうか」と彼女をリビングにつれていった。
魔法の絵本を手に入れたアシュリンは、フォーサイス家の掟で旅立つことに。
アシュリンの夢と希望の冒険が、いま始まる!
※ほのぼの~ほんわかしたファンタジーです。
※この小説は7万字完結予定の中編です。
※表紙はあさぎ かな先生にいただいたファンアートです。
下出部町内漫遊記
月芝
児童書・童話
小学校の卒業式の前日に交通事故にあった鈴山海夕。
ケガはなかったものの、念のために検査入院をすることになるも、まさかのマシントラブルにて延長が確定してしまう。
「せめて卒業式には行かせて」と懇願するも、ダメだった。
そのせいで卒業式とお別れの会に参加できなかった。
あんなに練習したのに……。
意気消沈にて三日遅れで、学校に卒業証書を貰いに行ったら、そこでトンデモナイ事態に見舞われてしまう。
迷宮と化した校内に閉じ込められちゃった!
あらわれた座敷童みたいな女の子から、いきなり勝負を挑まれ困惑する海夕。
じつは地元にある咲耶神社の神座を巡り、祭神と七葉と名乗る七体の妖たちとの争いが勃発。
それに海夕は巻き込まれてしまったのだ。
ただのとばっちりかとおもいきや、さにあらず。
ばっちり因果関係があったもので、海夕は七番勝負に臨むことになっちゃったもので、さぁたいへん!
七変化する町を駆け回っては、摩訶不思議な大冒険を繰り広げる。
奇妙奇天烈なご町内漫遊記、ここに開幕です。
少年騎士
克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる